日々の便り

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

河のほとりで (28)

2022年12月17日 04時00分59秒 | Weblog

 大助が、部活の野球の練習をしているとき、担任の先生が家庭訪問に訪れ、母親が勤務で留守のため珠子が代わって懇談した。 
 担任の教師は、彼はクラスでも男女や学年の区別なく、柔らかい人当たりから人気者で、生徒間のコミニュケーションも上手くとり、部活も熱心で特に指摘することはないが、来年は高校入試もあり、もう少し英語と数学の予習をする様にと言って帰られた。
 
 その日の夕方、大助は野球の練習に疲れて帰って来ると、シャワーで汗を流そうと風呂場に一目算に勢い良く飛び込んだところ、珠子が
 「コラッ! 良く見て入って来いッ!」
と湯船から立ち上がり、いきなり怒鳴り散らして桶で湯をかけたので、彼はビックリして浴室を飛び出たが、風呂から上がって来た珠子が
 「脱衣場を見れば判るでショッ!」「コノ アワテモノガ」
と言いながら、いきなり頭に拳骨を一発見舞った。 彼は殴られた頭に手をあてて
 「浴室に鍵をかけておけばいいんだよ。とんだ災難だ」
と、ぼやいて浴室を出るや、そのときチラット見た珠子の白い姿態と陰部の黒い毛が、彼にとっては成熟した女性の裸体を生で見た、人生で初めての経験であった。

 早帰りの母親の孝子を交えて、久し振りに皆が顔を合わせて夕食を済ませたあと西瓜を食べながら、母親の孝子が大助の夕べの話が気になり、大助に
  「大助、昨夜話しをした、青い目の人とは、何処の人だネ」 
  「母さん、今日一日中気になってしょうがなかっただョ。もっと詳しく教えてくれないかネ」
と聞くと、珠子が
 「理恵ちゃん。嘘か本当か判らないが、この子ったら、外人さんの彼女がいるらしいのョ」 
 「ミツワ靴店のタマコちゃんとばかり思っていたが、全く隅におけないヮ」
と、笑いながら話すと、理恵子も驚いて
 「アラッ ソウナノ」「大ちゃんも随分発展しているのネ」
と大助の顔を見ながら言うと、孝子が大助に
 「ふざけてないで、真面目にきちんと言ってみなさい」
と、少し語気を強めて言うと、彼は澄ました顔で例によって時々片目をパチパチさせて
  「長く垂らした金髪と薄いブルーの瞳の色、それにスタイルが抜群に良い、気さくに話せるいい子だな。と、僕が勝手に思っただけで、友達でもなんでもないよ」 
 「まぁ~蒼い恋の片思いと言ったところかな」
  「その子とは、1年に一度しか逢えず、それも旧暦の七夕である、今年は8月16日に僕が彦星・彼女が織姫で天の川を挟んで逢えるんだよ」 
  「ロマンチックで羨ましいだろう」  「僕も、思い出すと心がキュンと弾んで眠れないくらいだよ」
と、まるで現実離れしたことを話すので、孝子達三人が呆れてしまったが、珠子が興味半分に
  「お前、その子の手を握ったりしたことがあるの?」「二人で親しい会話でも・・。まさかキスはしなかったでしょうね?」
と聞くと、彼は当時のことを想いだしてか、ニヤニヤ しながら、さも得意げに
  「ナイ ナイッ! 一度、河の中で抱きつかれたことがあったが・・」 
  「その時、オンナノコの体って、凄く柔らかいんだなぁと思ったよ」
と答えると、珠子が「まぁ~ 呆れた」と溜め息混じりに言うと、それまで笑って聞いていた理恵子が
  「大ちゃん、その子誰だか当ててみましょうか」
と言って笑いながら、話すには
 
 昨年のお盆に、城家の家族が揃って自分の故郷である田舎に遊びに行ったときに知り合った、わたしの父母が懇意にしている村の診療所の美代子とゆう娘さんで、大助と同じ年令の中学生で、彼女の父が大学の医師をしている英国系のハーフで、母は英国人で薬剤師をしている。
と、大助の気持ちを慮って当りさわりなく簡単に説明したら、大助は
  「当たりダッ! その子水泳がとっても上手で、クロールなんて僕と同じ速さで泳ぐんだぜ」
と、そのときの様子を記憶を辿りながら懐かしそうに話した。
 母親達に、その時の様子をなおも執拗に問い正された大助は仕方なそうに

 去年の夏休み。理恵子の実家である山形の飯豊に遊びに行った時、河で遊んでた際、偶然、美代子と二人で並んで泳ぎ、そのあと泳ぐのをやめて川辺に上がる際、彼女が河底の石に躓き倒れそうになり、近くにいた僕に<タスケテ~>と叫んだので、僕が慌てて片手で抱いて助けてやったが、その弾みで、今度は僕が前のめりに倒れたところ、彼女も面白がってわざと僕の横に臥して河の浅瀬で二人並んでしまったが、その際、彼女はニコニコしながら人なっこく
  「わたし、こんなに楽しく遊んだこと、今迄に一度もなかったゎ」
  「君って、水泳も上手で女性に対する思いやりもあり、わたし誰にも見えない水の中で君とお魚の様にキスしても構わないゎ。と、思ったゎ」
と、笑いながら楽しそうに言っていたが、僕は水中での”魚のキス”とは、上手いことを言うもんだなぁ。と、感心して笑ってしまったよ。
 僕達の後ろで見ていた織田君なんて
  「大助っ!もっと深く潜れ」
と、大声で冷やし半分に怒鳴って叫んでいたが
  「岸辺に上がると、麦藁帽子をかぶって浴衣姿の、彼女のお爺さんらしい人が、ニコニコしながら、アリガトウ アリガトウと何べんも言って、僕の頭を撫でて、来年の盆踊りの衣装はワシが用意しておうくからな」
と言って凄く喜んでいたよ。
  「その子は、夜神社の境内でもようされた盆踊りで若い人達と楽しそうにフォークダンス風の踊りをしていたが、うまかったなぁ~」 
  「今度、逢ったら僕にステップを教えてくれると約束してくれたんだ」 
と悪びれずに話した。

 彼の、何処にでもありそうな自然な話を聞いていた三人は、何時もながらの大助のユーモアのあふれた思わせぶりな話しに振りまわされて、気が抜けたように、安心やら呆れるやらで、話の腰が折れてしまった。
 こんな話のやり取りで、珠子が昼間に担任の教師が家庭訪問に訪れた話をすっかり忘れてしまったので、彼にとっては幸運にも文句を言われることもなく難を免れた。
 
 話が一段落しあと大助は、なんとかその場を逃れたい思っていたところに、タマコちゃんが浴衣姿で庭先に遊びに来て
  「大ちゃん、花火をして遊ぼうョ」 「お爺ちゃんが、危ないから大助にやり方を教えてもらへ。と、言ったので・・」 「やけどをしない様にネ」
と言うので、大助は家族の話に飽きていたので、渡りに船とばかり立ち上がり廊下に出ると
  「お前、来るのが遅いヨ」 「俺が待っているときは、いつも遅いんだから・・」 「俺、お前が来るのを待っていたんだぜ」
とタマコに文句を言いながらも庭に飛び出して、線香花火をして二人してキャアキャアと声を上げて遊んでいたが、大助が夏休みに田舎に遊びに行く嬉しさの余りつい口を滑らせて
  「僕、夏休みに、また理恵姉ちゃの田舎に遊びに行くんだ」「タマちゃんは、休みに何処に行くんだい?」
と話をしたところ、タマコちゃんは 
  「アラ~ッ わたしを置いて行くの。随分冷たいのネ」「ワタシモ ツレテイッテ~」 
  「宿題の作文になにを書いたらいいのか コマッテイルノョ」
とせがまれ、彼にしては、一難去って、また、一難でシマッタと思い、その場は皆に聞いてみるさと、思わせ振りに言って誤魔化しておいた。

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