八障連ブログ

八障連(八王子障害者団体連絡協議会)運営委員会より、情報提供を行っています。(「八障連について」カテゴリーを参照)

八障連通信351号をアップします。

2020年01月26日 | 八障連通信
八障連通信351号をアップします。


八障連通信【音声版】はこちらから

ここからは八障連通信本文です。


【事務局通信 Vol.63 『挑むことと、生きること』】
よく、「障害者は劣っている訳ではない。社会を変えるきっかけを模索する挑戦者だ」なーんて持ち上げてくださる方がいますよね。実際にそのような(挑戦と言えるような、建設的かつ意欲的な活動をされている障害当事者も沢山いますし、私も応援しています。また...障害者の能力を高く評価してくださる方も多くいて、感謝しています。
でも、しかし...「過度に持ち上げられすぎもなんか違うよな」という感覚もどっしり重く、私の心の中にあったりするのです。
私たち障害者は決して超人ではありません。《ハンディキャップと引き替えにして、奇跡のスーパーパワーを手に入れた 》というような、アメコミ(アメリカンコミック)のヒーロー(アベンジャーズ的な人たち)みたいな特典もありません。
私たちの多くは「自分のやりたい事を精一杯やっている」、または「やりたくないけど必要だからがんばる」というだけに過ぎません。それに大なり小なり「何かに挑戦し続ける」という人生のあり方は...障害者「だけ」に限らず全ての人がしていることです。好きな異性に(昨今は同性の場合も)思いを告げるというのも挑戦なら、お仕事で気難しい取り引き先と対面するのもまた挑戦。 近所のコンビニにちょっとコーヒー買いに行くのだって、人によっては大挑戦であり大冒険なんです。
障害者のみを他の人とを分けて隔てて語ることで、差別とは言わぬまでも、ある種の偏見を産んでしまいかねない気がするのです。
「辛いよね」「大変だよね」「頑張ってね」ねぎらいの言葉をかけてくださることはとてもありがたいし、確かにその通り。障害をもって生きることは、どんなに前向きであろうと思っていても、やはり辛くて苦しい場面が多いです。常に前向きでいられる訳ではないです。落ち込むこともたくさんあります。
けれど、それだって「どの人もみんな同じでしょ」と考えるようになりました。生きていて悩みのない人はいません。生きるのが苦しくない人はいません。
悩み苦しみの質と量は人それぞれだし、「俺の方がお前よりもっと辛くて苦しいぜ」なんて、不幸の大きさを他人と比べることはできません。
野生の象には象の辛さがあり、地を這う蟻には蟻なりの、そして人には人の身故の辛さがあるんだと思います。
脳や心が別々の存在である以上、どうしても理解し得ないブラックボックスな部分があることもしっかり理解した上で、共感できる部分についてはきちんと尊重し合えるような人間関係が理想ですよね。
本当に支援が必要なのは「挑戦しようにも、やり方が分からない」とか「挑戦してみたけどやっぱり挫折したよ」というような人だと思うんです。
「前向きに生きましょう」とはよく言われるけれど、「まず考え方を前向きにする」というのが人間の精神活動で一番難しいことですからね。
ただの根性論や精神論だけで努力を語るのも、障害者を美化しすぎるのも、正直やめて欲しいと思います。パラリンピックが近づくにつれて、そんなことを考えました。(文責/杉浦)

【お知らせ掲示板】
八障連運営委員会 10 月 19 日(土) 10:00~12:00 クリエイトホール

【精神障がい者だって安心して住める場がほしい!特定非営利活動法人 ほっとスペース八王子 A子】
これは、私が精神障がい者だと、不動産会社と大家さんが知った時点から始まった差別的対応に対して、負けずにたたかう道を選び、ほっとスペース八王子の担当職員(当事者)の協力も得て、たたかい抜き、市役所と大家さんからは謝罪してもらい、不動産会社には圧倒的に貸主に有利な期限付き契約をきっぱり断わることができた一連のできごとをレポートにまとめたものです。主治医の診断書の審査の末、引っ越しに関わる費用、新たな契約にかかる費用はいっさいを市役所が負担するという形で、新しいマンションに引っ越しました。荷物が多いし、片付けが苦手なので、「引っ越しはとても無理」と思っていましたが、「あんな大家のマンションに住んでいたくない」という気持ちが強まっていきましたし、友人も協力してくれて、短期間に引っ越しをすることができました。とても感謝しています。
私に、3回にわたって不動産会社から電話があり、「なぜ生活保護なのか?」としつこく聞かれました。3回目に仕方なく「うつで朝起きられない」と言いました。そして、ここから、私への差別的な対応が始まりました。
まず、市役所の担当者から、大家さんが市役所に行き、話し合って、家賃を「代理納付」にすると決めたと知らされました。「代理納付」というのは、生活保護のお金を受給者に支給する前に、あらかじめ家賃を天引きして市役所から大家さんに支払う制度です。私は、この2年間、家賃の期限は毎月20日ですが、決まって15日に振り込んできました。それなのに、「何で勝手に?」と思い、不快に感じました。
しかも、私のサポートをしてくれていたほっとスペース八王子の職員である杉山成子さんが、不動産会社に電話をすると、「ああ、もうこちらには来なくていいですよ。大家さんが市役所に行って全部決めてきましたから。家賃は4500円値上げします。更新料は10万円以上になります」とのこと。さらに、「大家さんは杉山さんがかかわることを嫌がっているのでやめていただけませんか?」と言ってきました。杉山さんは「友人の契約更新のサポートをしてはいけないというのは、何という法律の何条何項に書いてあるのですか?」と聞くと、相手は答えられず、しぶしぶ杉山さんがかかわることを承知しました。「こちらは弁護士とも相談しています」とも言ったのがきいたのか、7月12日午後5時に、私と杉山さんとで不動産会社に行き、更新内容についての説明を受けることになりました。
不動産会社から「すべて大家さんと市役所とで決めた」と聞き、私と杉山さんは、「ひどい!」と心から怒りを感じ、話し合って、市役所に抗議に行こうと決めました。私が電話して担当者に話があるから時間をとってほしいと告げ、9日(火)に行きました。担当者では話にならないので、上司を呼ぶよう求めました。上司が来て、杉山さんはほっとの職員として私のサポートをしていると告げた上で、一部始終の事実経過を伝えました。私は、自分抜きにことが進められたことで深く傷つき、体調が悪くなったことを訴えました。
すると、上司の方が立ち上がり、それにならって担当者も起立し、深く頭を下げて「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪しました。そして、もし、引っ越す場合には、精神科の主治医の診断書をもとに審査して、そこを通れば、市役所の方で費用を負担すると約束しました。
市役所を出て昼食を済ませたあと、私たちは、引っ越し先の物件探しに歩きました。この時点では、引っ越すという結論は出ていませんでしたが、不動産会社との交渉を有利に進めるために、いざとなれば契約更新をせず、新たな住まいに引っ越すという道をつくっておこうと考えたためです。この中で、「ここなら引っ越してもいいなぁ」という物件がみつかりました。保証人は不要で、最初の一か月は家賃が無料という好条件でした。不動産会社を回ってよくわかったのですが、生活保護というと必ず理由を聞いてきて、「病気です」と答えても「精神ではないですよね?」と問いただしてきます。精神障がい者が住まいを借りることがとても難しい状況になっていることを実感しました。
また、精神科の診察には杉山さんが同行し、私のことが心配なので、ほっとの職員として同席する許可を得て、杉山さんから見た私の辛そうなようすを伝えました。私は、大家さんと市役所の差別的な対応でとても傷ついたこと、体調も思わしくないことを説明しました。
12日、約束通り、夕方、2人で前の住まいの不動産会社を訪ねました。すると、数日前に電話で言っていた内容とは大違いで、「4500円の値上げはなし」「更新料は家賃一か月分の53000円」「代理納付の話はなかったことにする」となっていました。私たちは、「市役所からかなり厳しい指導が入ったのだな」と思いました。ところが、新たに示された契約更新内容は、「定期型」という、圧倒的に大家さんに有利なものでした。
その後、市役所から連絡があり、主治医の診断書の審査の結果、引っ越しにかかわる費用はすべて市役所から出ることとなったとのことでした。
私は、この時点で、「引っ越しをしよう」という気持ちがかたまりつつありました。「せっかくお金が出る」という思いもありましたが、何より、「あんなことをする大家のマンションに住んでいたくない」という気持ちが強かったからです。引っ越しの大変さを考えるとひるむ気持ちもありましたが、自動車を持っている友人も協力してくれると言ってくれたので、「よし、がんばろう!」という気持ちになれました。
18日、前の不動産会社に行き、「更新しません」と告げました。私も杉山さんも、スカッとした気分でした。
こうして、なんとか、私は新しい住まいに引っ越すことができました。7月30日に引っ越しし、31日に前の住まいの掃除をして、夕方、大家さんに確認してもらい、鍵を返す約束をしていました。「あの大家だから、何を言い出すかわからないから...」ということで、杉山さんにも立ち会ってもらいました。
大家さんは部屋の隅々をチェックした上で、とくに問題なしということで無事にすみました。それで終えようとする大家さんに、杉山さんが「最後に A さんに一言ないんでしょうか? あなたが A さんを抜きに何の権限もないのに市役所と勝手に決めたことで、A さんはたいへんな精神的苦痛を受けたんですよ」と言うと、帽子を脱いで、「まあまあ、いろいろ、すいませんでした」と謝りました。
でも、私には、あの人が心から謝罪しているようには感じされませんでした。次もまた同じことを繰り返すような気もします。それくらい精神障がい者への差別感が強いように思います。あの大家さんだけでなく、社会全体に精神障がい者への理解がないと思います。誰も自分から望んで病気になったわけではないのに、差別されるのはおかしいと思います。

【編集部より】
八障連通信 351 号をお届けいたします。今号では、先号に続いてほっとスペース八王子で当事者(会員)の方が引っ越しを契機に遭遇した経験を特集記事とさせていただきました。差別禁止条例ができていても、差別と感じられる出来事に遭遇することはままあります。いかに対処するか、対応が問われます。(M)/すっかり秋めいてきた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。会員諸団体での活動、ぜひ通信誌上でご披露ください。よろしくお願いいたします。投稿まってま~す。(Y)

【連載コラム vol.21 『キッチンの緊急事態~ライフラインのエマージェンシー体験!』
ハーネス八王子 鈴木 由紀子】
30 年前に家族 3 人でここ八王子に引っ越してきたのに、やがて 2 人になり、いまは私だけになってしまった。一人暮らしは、時に気楽な面もあるけれど、目が見えない私はハプニングへの対応力が弱い。どうして、そうなったのか、その状況を打開するために、どんな手順で、何から手をつければいいのかと戸惑って立ち尽くすことしばしである。だから、「独身貴族」などという言葉では決して片づけられない世界である。
ある朝、いつものようにお湯を沸かそうと思ってガス台にやかんを載せ、「着火オン」ボタンを押したが、「ピーーッ」という悲鳴に近い警報音とともに、数秒間でガスは止まってしまった。近年のガス焜炉には安全装置を付けることが法律で義務づけられており、この朝も、その安全装置が作動したのだ。夏の暑い季節でも暖かいお茶を好む私にとって、これは非常事態。朝起きたら、まず熱々のご飯を、おなかいっぱい食べ、暖かく、それも少し濃めのお茶を何杯も飲まないと、私の一日の生活は始まらないのだ。これは私にとって大問題である。
そのとき私がまず考えたことは、着火装置の電池を好換すること。そのために買い置きしておいた単 1 電池 2 本を入れ換えて、再び着火装置を「オン」に。しかし、それでもガス焜炉はお仕事をしてくれない。さて、私はどうしよう・・・。
家事援助者としてケアしてくださる方はその前の日に来たばかりで、「緊急要請」でもかけない限り、1 週間後の決まった日まで来ない。知り合いに緊急 SOS をして出動要請をするか。しかし、いきなり、そんなことをする前に、私ができることが何かないだろうか等々と考えてみる。
その朝は出かける予定があったので、とりあえず電気ポットでお湯を沸かしてお茶を入れ、電子レンジで非常用のパックご飯を温めて簡単に朝食を済ませた。そして帰宅後に念入りにガス焜炉を掃除した。経験的に、焜炉の周辺に汚れが付くと安全装置が作動し、ガス焜炉の機能が自動的に止まることを知っていた。そう言えば、その 1、2 カ月間、まじめにお掃除をしていなかったことに気付いた。キッチンタオルをお湯で浸し、洗剤も付けて、煮物や炒め物をしたときにフライパンから外に飛び散った野菜くずや油を、何回かに分けて拭き取る作業をした。また、グリル内の焼き網と、その下のトレイも、きれいにした。そして「着火」の手順を試みた。電池を入れ
替えたばかりなので、パチパチパチというより、チッチッチッと、メトロノームで測ったら 1 分間に 300 ぐらいの軽快な速さでガスが送られ、ガス焜炉の機能が復活した。そして、ガステーブルにやかんを載せたら、元気にお仕事を再開してくれた。
一件落着である!!と、ほっと と安心しかかったのもつかの間、翌朝着火を試みたら、やはりガス焜炉は使えなかった。
私は「これでは駄目」と意を決して、キッチンの柱に点字で書いておいた連絡先に電話をかけ、ガス焜炉の点検と修理を依頼した。 その日のうちにやってきた修理マンは、蓋を開けてその機具の中を見るなり、「この状況では修理は不可能です」と私に告げた。その方の解説によれば、調理中に吹きこぼれた水などが機具内にたくさん入り込み、それが機具に付着して、機具を劣化させてしまったとのこと。そして、それは 9年前に購入したものだと私が話すと、10 年ぐらい使えば、皆さん、こうなりますと、慰めのような言葉をかけてくれた。
結局私は翌日、案内役の H さんとガスのショウルームを訪れ、いくつかのタイプのガス焜炉を実際に触って使い勝手を調べ、そのうちの 1 台を購入することに決めた。家電量販店で買うほうがお得かもしれないという考えも頭をよぎったが、値段が私の想定範囲であり、取付け工事もしてくれると言うので、そのまま依頼した。そして、生協で注文しておいたパックご飯を食べて過ごし、首尾よく、さらにその 2 日後に新しいガス焜炉をキッチンに取りつけてもらって、それこそ一段落である。
私が便利だと思っている機能の一つとして、その焜炉には「揚げ物モード」というのがある。決まったボタンを押すごとに160、180、200°Cに温度が固定され、てんぷらなどの材料を入れて揚げ始めると、あらかじめ設定した温度でガスの供給がオフになり、その温度以上には上昇しない仕組みがある。
また、ご飯炊きモードというのがあり、こちらも、決まったボタンを使うと、白米やお粥がおいしく出来上がることになっている。つまり、それまで私が使っていたものと同じタイプのガス焜炉を今回もゲットして、再び炊きたてのアツアツご飯とお茶もいただいて「いつもの朝」が迎えられるようになった。やっと緊急事態から抜け出すことができ、ほっと深呼吸している昨今である。


通信本文ここまで。

最新の画像もっと見る