引き続き本の紹介です。
この本は私が以前、理事を務めていたNPO女性自立の会の会報に紹介した本でもあります。
私はNPO女性自立の会の理事は辞めましたが、2ヶ月に一度出ている会報に本の紹介などをさせていただいています。
多重債務に陥った女性たちの支援をしているNPOです。そして今では当事者たちが支援する側に育っていったNPOです。
彼女たちといつも話すのは「当事という専門性」ということです。人間関係が上手にできず失敗したり、法律に無知だったりすることもあるけれど、その部分は法律のプロだとか、理事長の有田さんやカウンセラーなどに任せるけれど、「当事者」という部分では誰にも負けませんから・・・
これは12月に実施した乳がんの当事者で、現在は支援者になっている若尾さんの話でも同様だと思いました。
当事者を中心にすえて様々な支援事業が展開されていかなくてはならないのだろうなぁ、と思っています。
さて、「マザーズ」のこと。
金原ひとみはとても若くして芥川賞を受けた作家です。
ちょっとグロテスクな作風で、ずいぶんと年を重ねた私には理解の範囲を超えることが多かった、という印象があります。
でも、彼女は東京新聞に一時期コラムを書いていて、そのコラムは共感をすることが多かったのです。彼女は母になっていました。その子関わりと、夫であり子どもの父親とのやり取りや、社会への発言が見事で、好きでした。そのコラムは終了しています。ちょっと残念でした。
そしたら本が出ていました。
「マザーズ」
金原ひとみ著
新潮社
1900円+税
同じ保育園に通わせる3人の若い母親たちの物語。
夫とは週末婚でドラックに手を出しながらなんとかバランスを保っている作家ユカ。
子どもは大事に育てたいと思っているのだが、育児に疲れてついには虐待をする専業主婦の涼子。
夫を嫌いではないが、不倫を続けるモデルの五月。
457ページ。文字の小ささももろともせず、いっきに読んでしまった本です。
女・子どもの話と片付けられていたことが、子育ての苦労なんて母親になった女なら誰でもすること、ほんの少しの辛抱、小さなこと、と言われ続けられていた世の中で、若い作家の手によってばーんと書かかれたことに、やっぱりあちこちで世の中が変わる兆しを感じてしまいます。
夫である子どもの父親との関係、友人との距離感、保育園という家庭とは別な子育てする場所。そんなことが丁寧に表現されていきます。もちろん女性たちの気持ちも・・・。
私はモデルでもないし、ドラックはやらないけれし、すでに幼い子どもは大人にっているし、自分の子育てとはかけ離れたステージで展開されている部分もあるけれど、共感するところが多いのです。
ひりひりと胸が痛くなって、彼女たちの背中をさすってやりたい気持ちにもなります。
以前主婦たちが主役の小説を何冊か読んだことがありましたが、もちろんとても興味深く読んだのですが、その小説は男性が書いたものでした。
この本もヘルシーカフェのらに置きます。
新井 純子