平方録

追悼・復興祈願祭の異観と感動

仏教の僧侶の一群に引き続き、神道の神官、キリスト教の神父・牧師の一群が山門をくぐり、静かに行列して仏殿に入って行く様は、何か不思議なものを見せられているような、見たこともない光景であった。

3月11日の2時半から、円覚寺仏殿で鎌倉宗教者会議主催の「東日本大震災 追悼・復興祈願祭」が執り行われた。
宗教、宗旨、宗派を超えて震災の年から始まったこの祈りの場は今年で5回目。今年は初めて足を運んでみた。
境内を埋めた参列者は円覚寺によると約1500人。焼香が終わるのに1時間もかかるほど大勢の人々が詰めかけたのも驚きだった。

地震発生時刻の2時46分。国宝の洪鐘が重々しく響き渡るのを合図に、犠牲者の霊を慰めて黙とうをささげる。
この日はよく晴れ上がっていたが、風がとても強く、黙とうで人工的な音のまったく途絶えた仏殿の外で頭を垂れる参列者の頭上に、まだ裸木のままの梢を揺さぶる風の音だけが鐘と鐘との合間に聞こえてきて、思えばそれは犠牲者たちのざわめきが空から届いてきているかのようでもあった。

祈願祭の祈りは神道の「大祓詞」から始まり、キリスト教各派の祈りと讃美歌、仏教各派のお経「妙法蓮華経観世音菩薩普門品第廿五偈」「延命十句観音経」と「ご回向」で締めくくられるまで、1時間余りも続いた。
参列者には大祓詞や讃美歌の歌詞、延命十句観音経が配られ、それらを唱和していく。
大祓詞と妙法蓮華経は字面を追うので精一杯で声にはならなかった。讃美歌と座禅会で唱和している延命十句観音経だけ声に出して唱和したが、「異な体験」であった。「異」ではあるが「否」ではない。

宗教の目的は人を救うことにあるのだろうから、その手段方法が異なっているだけで、目指すところはすべて同じはずである。
普段はそれぞれのやり方で信仰を深めていけばいいのであって、いざという時に大同団結する。
それが鎌倉に実現できたのは、狭い地域に多くの宗教が寄り固まり、それぞれがお互いを尊重し合って立派に活動している故なのかもしれない。
鎌倉のそれぞれの宗教指導者たちの資質もあるのだろうが、こういう形で実現しているのを目の当たりにするのは、初めての経験でもあり、感動的ですらあった。

しかし、世の中はままならない。宗教戦争と云うのは中世ヨーロッパだけの話ではなく、今も続いている。
どうして宗教の名のもとに殺し合いをするのか。
鎌倉のような試みが日本の各地にも広がり、世界中にも広がっていく。それができない理由はどこにもないだろう。決して短時間に成し遂げられるものでもないだろうが、意思と熱意の問題だろう。あるいは、普段からの地道な交流がそれを後押しするのかもしれない。それにしたって意思と熱意さえあれば、実現は可能と信じたい。
そうなればこそ、宗教は本来の宗教になっていくはず、と思うのだが。

夜、山形の友人から電話があって「偶然にもユーチューブで実況中継されていたこの祈願祭を見た。すごいな、あれは。とても感動した」と伝えてきた。
現場にいた人間は本堂の中に入れないから、中の様子は流れてくる声だけで様子を窺い知るのだが、ネット中継のカメラは本堂内部に据えられているから、すべて眼前で繰り広げられたのである。
仏殿の大きな宝冠釈迦如来像の前で大祓詞を奏する神官の姿、十字を切って聖書の一節を朗読する神父・牧師の姿を見れば、やっぱりびっくりしてしまうだろう。
臨場感の違いと言っては変だが、目の当たりにできる場面の違いは如何ともしがたい。
来年は多分、キリスト教会である。一緒に行ってみようと誘った。


祈願祭の仏殿に掲げられていた、今回の大導師を務めた円覚寺の横田南嶺老師の「香語」を掲げておく。

 四歳春回悲更増
 看花聞鳥涕垂膺
 諸宗教者此相集
 共禱被災地復興

以下は意訳

お釈迦様は、人が父母の死、我が子の死、友の死に流した涙は、海の水よりも多いと仰せになりました。震災から早くも四たび春が回ってきましたが、悲しみは増すばかりです。花を見ても鳥の声を聞いても涙が胸をつたいます。ここに鎌倉の神官、神父牧師、僧侶、諸宗教者が相集い、共に被災地の復興が成し遂げられますよう、こころより祈ります。



最初に仏殿に入ってゆく仏教僧侶の列


僧侶に導かれ神官の行列が続く


神官の後に続くキリスト教の神父・牧師たち


神官、神父・牧師の行列の前で仏教僧侶が「散華」を撒いていて、たまたま1枚拾えた
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