平方録

一汁旬菜

一汁一菜というけれど、なかなかそうはいかないものである。
例えば昨晩の献立。
ブリの切り身の照り焼き、アジの刺し身、カリフラワーのカレー和え、菜の花のからし和え、カブの酢漬け、アボガド、 カブの茎・葉と油揚げの炒め物。それに白いご飯少々。
単価の安いものばかりだが、食卓に並べてみれば庶民にとっては、なかなかのごちそうなんである。
汁はない。代わりに毎日アルコールを添える。94%は赤ワイン。妻と2人で1本をほぼ空にする。第一線を退いてから1本356円だか365円の超安ワインである。
一応カベルネソーヴィニョン種である。大概チリ産である。馬鹿にしてはいけない。もちろん、すごく美味しいというわけではないが、それなりの気分は味わえるのである。

わが家の献立は魚介と野菜が中心である。
ワインはそれでも「赤」である。“フレンチパラドクス”といって、フランスでは他のヨーロッパ諸国と比べて心臓疾患で亡くなる人の割合が極端に少ない。よく赤ワインを飲むので、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの予防効果だろうと言われている。
どうせ飲むなら、そういう効能を持ったものが良いに決まっている。単純な話なんである。

海沿いの町に暮らしているから、魚介類は新鮮なものを手に入れやすい。
相模湾は太平洋に向かって開いていることも手伝って魚種が豊富なんである。
わけても旬のものは何でも脂が乗っていて美味しい。しかもイワシやアジ、サバ、イカ、トビウオ、イサキは旬を迎えると一度にたくさん獲れるから、必然的に安い。
これにワカメや茎ワカメ、アラメ、アカモクなどの海藻が加わる。
さらに東日本大震災のあった3月11日は相模湾のシラス漁の解禁日でもある。
生シラスが食卓に上るまであと数日である。生シラスの場合は日本酒が美味いんだなぁ。

こんな感じだから外食なんてほとんどしない。出先で昼飯程度である。
肉もほとんど食べない。しかし、赤ワインだからチーズはよく合う。従って、チーズを口にすることは少なくない。
フレンチパラドクスの話に戻ると、“不飽和脂肪酸”というのも重要なキーワードである。
これは血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、血液の循環をよくする効果があって、動脈硬化や心臓病、がんなどの予防につながるとされている。
この不飽和脂肪酸を多く含んでいるのが、いわゆる青魚でイワシやアジ、サバ、サンマである。
手に入りやすくて、しかも安い。重要なのは何と言っても美味しいことである。であれば、これを食べない理由は見つからない。

課題もある。
妻は娘から指摘されたようだが、残り物の使い方、あるいは2次利用と云ったことに、まだまだ工夫の余地があるようである。
例えばわが家では「黒豆茶」と云うものを飲む。原料は大豆だが、茶になった後の豆は捨てていたのを“もったいない”と指摘されたようである。
指摘を受けてヒジキの煮物の中に同居するようになったのは進歩と云えば進歩である。

アジを刺し身にした後の頭と背骨は油でさっと揚げると「骨せんべい」になってオツである。イワシは焼いたものならそのまま骨も食べてしまうから面倒いらずである。ただ、これは自分の歯と相談である。ダイコンやニンジンの皮も使える。まだまだありそうだ。
これからどんなものが卓上に登場するか楽しみである。
そういう生活も大切である。










雨が降り始めた朝の円覚寺境内=2015.3.1
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