カメラ大好きおばあちゃん

極々近場を一人気ままにウロウロし、目に留まった光景を投稿しています。

ああ 昔人間 (おんなのしんぶん)

2015年05月02日 | その他
2015年3月23日 毎日新聞 室井 滋(女優)

私の所属する事務所の女社長は、ちょっぴり昔人間だ。
私より年上のおばさんだからという意味ではなく、何かにつけ、私が子供の頃に祖母から聞かされたようなことを言うからだ。
「ねえ、 ちゃんと玄関を片付けてる? 余計なもの置いて散らかしてると、運気が下がるわよ。 特に玄関は大切だもの! ピカピカに磨いておかなくっちゃ、福の神だって入ってこないからね」
特に風水にこだわっているわけでもないのに、 このフレーズはしょっちゅう出てくるし、私が仕事の愚痴を少しでもこぼそうものなら、「最近、ステキな仕事に沢山恵まれたじゃない?たまに嫌なもの出合ったって気にするんじゃないの。人間何か厄落としさせてもらってると思って、ありがたくやらせてもらわなきゃよ」なんて、嬉しそうに注意してくる。
おまけに、 うちの飼い猫が風邪ぎみで……などとうっかり口を滑らせようものなら、「馬鹿ね、まだ分かんないの?チビはあんたの身代わりになって風邪をひいてくれてんじゃないの。あんたがピンピンしてられんのは、猫たちがしっかり見守ってくれているからよ」と、返ってくるのだ。
断捨離系の語録もメチャクチャ多いけれど、身代わり系語録はその上を行く。
さて、社長のそんな発言を、最初は内心、「また言ってらあ」ぐらいにしか受け止めていなかった私だが、実は長年の間に次第に影響を受け出した。
仕事が忙しくなってくれば家の中は散らかりがちだし、 玄関には宅配の段ボールがゴロゴロ置きっぱなしになったりもする。そしてそうなると、私自身不快感が生じてイライラし始め、おのずとバイオリズムのようなものが急降下しだす。するとさらにはマイナスのパワーが働くようになるのか、 やたらと家の中の電球が切れたり、電化製品が故障したりするわけなのだ。
これはまるで、猫を身代わり地蔵尊のように扱う社長そのものだ。 いや、もっとその上を行ってるかもしれない。
今朝方も、出勤時に愛車が壊れた。エンジンをかけても、 ウンともスンとも言わない。夕べまでちゃんと走っていたくせに。
「朝の忙しい時にこりゃあないぜ!この間修理に出したばっかなのに……」あからさまに怒りを声に出すが、 心境は時間とともに変化する。「いや、 あの車がきっと悪運をすいとってくれてんだわよ」……と。