2015年5月6日 毎日新聞 中村 秀明(論説委員)
「大型家具店のイケアに行くと、恋人や夫婦が言い争いを始める」
最近の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事である。イケアは、客が組み立てることで価格を抑え、北欧生まれのデザインと品そろえの多さで人気がある。日本では8店が営業中だ。
イケアの家具は、 サイズや色のほか、 縦長か横長かといった微妙な違いの選択ができる。そのため好みの小さなズレが問題になる。毎日過ごす生活空間だけに服や音楽などと違い妥協もしにくい。 店側も問題に気ずき、 「まずカタログを見て話し合い、絞り込んで来店を」とアドバイスしているという。豊富すぎる選択肢が災いするのだ。
選択といえば、 米コロンビア大学の シーナ・アイエンガー教授が高級スーパーの 依頼を受けて行った「ジャムの実験」が有名だ。
24種類のジャムを試食できる売り場と、 6種類しか試食できない売り場、 客の行動はどう異なり、 どちらが売れるかを調べた。「豊富な品ぞろえが売り上げを伸ばす」という経営方針を確かめる狙いだった。だが実験の結果、 24種類は試食した客の3%しか買わなかったのに、6種類だけだと30%近くが買った。
選択肢が多いほど選ぶのに悩み、選んだ結果が本当にいいのかも気になり、 結局選ぶのをやめてしまうという。
心理学者であり、 「なぜ選ぶたびに後悔するのか」を書いたバリー・シュワルツ氏は、物質文明がもたらした現状を批判的にとらえる。
米国内の講演で、 お金もかかる複雑な選択肢について、「役に立たないだけでな く危害を加え、私たちをより悪い方へと導くことになる」と語っている。「選択肢の多さがわれわれに繁栄をもたらすという地点は、とっくに通過してしまった」とも。
こんな状況から解放されたいため、選択の幅を自ら狭める作業が「断捨離」と言える。 それは単なる整理術や片付け方法ではない意味がある。最近 「フランス人は10着しか服を持たない」 という本が売れているのも、相通じる部分があるのだろう。
「選択は人生を切りひらく力」というアイエンガー教授。NHK・Eテレの「コロンビア白熱教室」でのアドバイスに耳を傾けよう。
「重要でないもの、他人に任せられる選択は除き、自らの価値を高めてくれる選択に集中する」
「人生とは選択した結果の積み重ねだ。その選択が自分の幸せに貢献するかどうか、毎回考えなければならない」
まさに人生は良きにつけ悪しきにつけ、 自らの選択の結果が積み重なったものだと痛感しています。この後何年?かの残りの人生を、慎重に選択しながら全うしたいものです。
「大型家具店のイケアに行くと、恋人や夫婦が言い争いを始める」
最近の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事である。イケアは、客が組み立てることで価格を抑え、北欧生まれのデザインと品そろえの多さで人気がある。日本では8店が営業中だ。
イケアの家具は、 サイズや色のほか、 縦長か横長かといった微妙な違いの選択ができる。そのため好みの小さなズレが問題になる。毎日過ごす生活空間だけに服や音楽などと違い妥協もしにくい。 店側も問題に気ずき、 「まずカタログを見て話し合い、絞り込んで来店を」とアドバイスしているという。豊富すぎる選択肢が災いするのだ。
選択といえば、 米コロンビア大学の シーナ・アイエンガー教授が高級スーパーの 依頼を受けて行った「ジャムの実験」が有名だ。
24種類のジャムを試食できる売り場と、 6種類しか試食できない売り場、 客の行動はどう異なり、 どちらが売れるかを調べた。「豊富な品ぞろえが売り上げを伸ばす」という経営方針を確かめる狙いだった。だが実験の結果、 24種類は試食した客の3%しか買わなかったのに、6種類だけだと30%近くが買った。
選択肢が多いほど選ぶのに悩み、選んだ結果が本当にいいのかも気になり、 結局選ぶのをやめてしまうという。
心理学者であり、 「なぜ選ぶたびに後悔するのか」を書いたバリー・シュワルツ氏は、物質文明がもたらした現状を批判的にとらえる。
米国内の講演で、 お金もかかる複雑な選択肢について、「役に立たないだけでな く危害を加え、私たちをより悪い方へと導くことになる」と語っている。「選択肢の多さがわれわれに繁栄をもたらすという地点は、とっくに通過してしまった」とも。
こんな状況から解放されたいため、選択の幅を自ら狭める作業が「断捨離」と言える。 それは単なる整理術や片付け方法ではない意味がある。最近 「フランス人は10着しか服を持たない」 という本が売れているのも、相通じる部分があるのだろう。
「選択は人生を切りひらく力」というアイエンガー教授。NHK・Eテレの「コロンビア白熱教室」でのアドバイスに耳を傾けよう。
「重要でないもの、他人に任せられる選択は除き、自らの価値を高めてくれる選択に集中する」
「人生とは選択した結果の積み重ねだ。その選択が自分の幸せに貢献するかどうか、毎回考えなければならない」
まさに人生は良きにつけ悪しきにつけ、 自らの選択の結果が積み重なったものだと痛感しています。この後何年?かの残りの人生を、慎重に選択しながら全うしたいものです。