丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

ある老婦人の回想

2005年11月13日 | お仕事
 あんた幾つ?三十六・・・そう若いねぇ。まだまだこれからやねぇ。私があんたと同じ歳の頃ゆうたら、もう主人が亡くなって、子供四人もおるのになぁ。死に物狂いで働いとったわ。
 再婚なんて、四人も子供おってなかなかでけへんで。・・・そやけどなぁ、好きな人はおったで。五歳年下でなぁ。・・・可愛い人やったでぇ。そら、もう、食べてしもたろかって思うくらい可愛い人やったわ。
 主人とは十五年しか一緒におらんかったけど、その人とは二十年つきおうたわ。バイクのな、後ろに乗せてもろうた事もあるんやで。楽しかったわぁ。変な話、主人が亡くなってから主人の夢なんて見た事ないのにな、その人の夢は今でも見るで。・・・ほんまに好きやったんやなぁ。
 今か?さぁ、どないしてはるんやろなぁ。私がもうじき九十やからなぁ、あの人も生きてはったら、えらいジジイになってはるわ。もう枯れてるわな。連絡なんてもうずっと取ってへんからな、知らんわ。
 もう一度若くなったらやりたい事?・・・そやなぁ。恋がしたいなぁ。それも死ぬほど激しい恋をしてみたいわ・・・。

 彼女はそう言って大笑いをした。笑いながら、その目は遠くを見ていた。そして少し涙が浮かんでいた・・・。
 

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2 コメント

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Unknown (takky)
2005-11-13 20:12:27
この仕事で会う方は、年もそれなりなので、楽しいことも大変なこともいろいろ経験してきたばかりですもんね。私は良く戦争時代に経験した辛いこと恐かった事を聞きます。ほんの一日、ほんのちょっとの違いで命を落としていたとか・・・。結構皆さん笑いながら話してくれますが、どこか寂しそうです。
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Unknown (ちえぞー)
2005-11-14 12:18:09
 そう、深いですよね。私達が経験した事のない苦労と困難を経験している方々ですからね。勉強になりますです。
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