丘を越えて~高遠響と申します~

ようおこし!まあ、あがんなはれ。仕事、趣味、子供、短編小説、なんでもありまっせ。好きなモン読んどくなはれ。

コンビニ

2010年09月29日 | 四方山話
 出勤途中によく立ち寄る近所のコンビニがある。今日もお昼を買うために寄ったのだが、ん?? 何かしら、いつもと様子が違う。
 よくよく見ると店の中の陳列台が妙に空いている。そして入口に張り紙が……。

「当店は九月三十日で閉店いたします。
 長らくのご愛顧、誠にありがとうございました」

 とりあえず中に入ると、お弁当、パン、飲み物以外はほとんど撤去されていた。がらんとした空間ばかりが目立つ、さびしい光景。
 なんだかな~……と思いながら、とりあえずお昼のパンを買ってレジに持っていく。

 レジには若い男のが一人。この子はここにきて半年くらいだ。長く頑張っていた前のオーナーさんが辞めてから、この店舗が本社預かりになっているというのを教えてくれたのがこの男の子。当然、後処理のために本社から送られてきたに違いない。次のオーナーが決まらなければ、閉店になるというのも当然知っていたのだろう。遣り甲斐のない仕事だっただろうなぁ……。いつ見ても疲れたような、しんどそうな顔をしていた。

 レジを打つ男の子の指を見ながら、いろんなことを考える。

 前のオーナーの奥さんはとっても気さくで、よく世間話をしたものだ。「今日も仕事? 頑張るね~」なんて声をかけてくれて。
「次の契約更新の時、また更新するかどうかはわからない。うちももうしんどいわ~」
 なんて愚痴を聞いたのは、去年の夏だったか……。
 旦那さんと息子さんは無口だったな。息子さんはいつもあんまりやる気がなさそうで、それでも三人で頑張ってお店を回していた。十年くらいは頑張ってたんじゃないかな……。

 子供たちはここでおでんを買うのが楽しみだった。

 コンビニというのは、案外昔ながらの雑貨屋に通じるものがある。特に住宅街にあるコンビニは近所の人とのつながりが太いものだ。いつもの店で、いつものおばちゃんと交わす会話がなんとも楽しかったりしてね。
 近くには別のコンビニもあるけど、なんやかんやいいながら、このコンビニに一番よく来たような気がする。

 レジのお兄ちゃんにお金を渡し、お釣りをもらう。
「……閉店するんやねぇ」
「はい……」
 いつものように疲れたような表情。
「……長いことお世話になりまして」
 そう言うと、レジの男の子はにっこり笑った。心が解けたような、そんなやわらかい笑顔。
 ああ、この子、こんな顔で笑うんだなぁ。閉店する直前だけど、なんだかほっとする。この子はこの子なりに、一生懸命働いてきたんだろうなぁ。この店を綺麗に閉めるために……。近所のお客さんの気持ちを一身に担いながら……。

 店を出ながら、心の中で小さくつぶやく。

 お疲れさまでした。
 そして、どうもありがとう。

 

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