小学5年生の時にHKT48のオーディションを受けました。2次は面接審査。机にずらりと審査員の方が並んでいました。親や学校の先生以外の大人と話す機会がほとんどなかったので、すごくおびえていましたが、私は思い切って言いました。「何年後かには前田敦子さんを超えるビッグなアイドルになりたいです」。その瞬間、全員がいっせいに笑ったんです。どうしても入りたいという真剣な意気込みを伝えたくて、なん日も前から考えてきたのに……。恥ずかしくて早く帰りたい気持ちになりました。
それでも合格できて、最終審査へ。その面接では、「背が高いけど、どうですか」と質問されて、「みんなを上から見下せてうれしいです」と答えると、また大笑いされました。子供の無邪気さで話したつもりでしたが、こんなに笑われるなんて、私は普通のアイドルのタイプとは違うのかな、と思いました。
HKT48を目指したのは、テレビのバラエティー番組に出たいという思いからでした。幼い頃からテレビっ子。お笑いが大好きで、いっぱいしゃべって、笑わせたり、楽しませたりできるタレントさんに憧れていました。そんな私に父が「アイドルから始めてみたら」と1期生の募集を教えてくれました。
HKT48に合格。だけど、プロとして話すのは想像以上に難しいことでした。
チームでテレビに出演しても、誰かと言葉がかぶってしまったらどうしよう、話を拾ってもらえなかったらどうしよう、シーンとなったらどうしよう。そう考えたら、一言も発せなくなりました。MCさんに話をふってもらえるまでは何も言えず、ふられてもうまく返せませんでした。実力がなかったんです。
公演でも、よくしゃべる村重(杏奈)にまかせっぱなし。テレビは収録後にカットできても、舞台ではごまかしはききません。すべったら終わり。すべりたくなくて、ほかのメンバーに相づちを打つように無難な話をして、自分を守っていました。
キャラもなかなか出せませんでした。菜津美のナツ(夏)をキャッチにしようとしたけど、松岡菜摘ちゃんとかぶり、2期生で田中優香ちゃんが入って姓もかぶりました。同じ小6の秋吉優花ちゃんが入ると最年少でもなくなった上、ミカン好きのキャラも重なっていました。
あせりはありましたが、キャラをつくるきっかけはファンの方がつくってくれました。私がいたずら好きという評判を知って、「悪みかん」と呼ばれたことがありました。無邪気な子と思ってもらえたことで、少し自分を出せるようになりました。
先輩たちも優しかったです。デビューから1年後、バラエティー番組「HaKaTa百貨店」に出演しました。毎回、ゲストのメンバーが登場し、「推しメン」に選ばれると、ゲストと一緒に博多の名物を食べられる「グルメデート」の特典がつきます。
自分の思いを作文でアピールする企画があり、テーマは、その日の特典である「水炊き」でした。ゲストはAKB48の北原里英さん。発表の時は、緊張で声が震え、泣きそうになりました。私は今まで番組で一度も推しメンに選ばれず、ひな壇の3段目で、いいコメントができない悔しさを話しました。そして、博多人なのに、まだ水炊きを一度も食べたことがないので、「北原さんと一緒に食べたいです」と伝えました。北原さんも3列目の経験があるそうで、「すごく伝わってきた。3列目に光を当てたい」と推しメンに選んで下さいました。
水炊きを食べながら、北原さんに「どうすれば前に出られますか。2列目に上りたいんです」とアドバイスを求めると、「どんどん言葉を発するしかない。言葉を発するたびに2列目に近づけるよ」と教えてくれて、私は前に出られるようになりました。
いつの間にか、「博多のボス」というニックネームになっていました。つけてくれたのは、さっしー(指原莉乃)です。「博多に来たら、まず、この人にあいさつしてください」とギャグにされて。公演でファンの方の声援は、アイドルらしい宮脇咲良ちゃんは「さくらたーん」ですが、私には「ボース!」になりました。
だけど、毒舌すぎて、何度もメンバーを泣かせてしまって、ブログが大炎上してしまったことも。ファンの方から意見が届き、私は反省しました。「相手をもう少し見たほうがいいよ」「まだ中学生だけど、周囲の流れや空気を読めるようにならないと」
相手のことをよく知らずに、欠点とかうわべだけでいじってしまうと、お客さんは盛り上がらない。笑いをとるにも、相手を知らなければならないとわかりました。相手を知るために、日ごろからメンバーとコミュニケーションをとるようにして、未知のキャラを発見するようにしています。
後輩のはるたん(上野遥)とは最近よく話します。「博多のロリータになりたい」とファッションも個性的なのですが、それを自虐的に話すことがあるので、「出してみたら」とアドバイスをしたら、「やってみます」。1度してみたら、けっこう受けたそうです。
最近は、メンバーからは自己紹介やMCについて相談を受けることが増えました。「ここで突っ込み入れてもらえますか」と言われることも。頼られるとうれしいです。公演では、その日のお客さんを見て、ネタを工夫するようにしています。自虐ネタは、いつものファンの方が多い日にはしやすいですが、HKT48を初めて見るお客さんが多い日は避けて、さっしーや知名度の高いAKB48のメンバーのネタを使うようにしています。会場の雰囲気は大切ですから。
バラエティー番組でご一緒したウーマンラッシュアワーさんやパンクブーブーさんら芸人さんのトークは勉強になります。初対面でもどんどん個性を見つけてくれるし、メンバーも平等に扱ってくれます。お客さんもいじって会場を盛り上げ、すごく楽しい雰囲気にします。私ももう少し大人になった時には、もっと人の個性を引き出し、その場を楽しい雰囲気に変えられるようになりたいです。
今後は、トークだけでなく、パフォーマンスにも力を入れて、ファンの方を楽しませたいです。初期からお世話になっているダンスの先生には、「死ぬくらいまでやってみろ。死なないから」と教わりました。できないのではなくて、やっていないだけ。もっともっとがんばれるはず。前田敦子さんは超えられないかもしれないけど、近づきたいと思っています。
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次回はAKB48の峯岸みなみさんです。