daiozen (大王膳)

強くあらねばなりませぬ… 護るためにはどうしても!

オツベルと象(4)

2014年09月14日 | 宮沢賢治-鑑賞
価値観の転換を考えませんか?



人には誰でも大切にしているモノがあるらしい、

そしてその大切なモノの中身は、人それぞれに異なってる。



たいがいの人は何よりも命を大切に思うだろうし、

ある人たちは平和がいちばん大切と言うだろう、

ある人たちは気ままに暮せるのが一番良いと言うだろう、

晩酌のお酒を呑んでる時が幸せという方もいらっしゃる、

お金がいちばん大切と思ってる方もいらっしゃるだろう、

あるいは、そんなこと考えたことないと言うかも知れない。



オモシロイ事に、親友同士で好みが合うとも限らない、

いえいえ、友を大切に思う点で親友の好みはピッタンコ。

そんなの嘘だ…と根拠なく言うのは言葉を大切にしない人、

「人間を大切に思う」というタイプは宗教者に多いと思う、

もちろん人間を大切に思う根拠を言えない宗教者は怪しい。

ともあれ、どんな人にでも大切なモノはあるようです。



オツベルは誰よりもお金にこだわったのかも知れません、

お金を手に入れるために高価な最新式の器械を導入したし、

工場で16人もの百姓たちを使って働かせていたんだよ、

迷い込んできた白い象をオツベルは手に入れようとしたし、

手向かう者にはピストルをぶっ放してやっつける腹積もり、

象の群れと戦い、己の命を賭して、資産を増やそうとした。



それは野生の象と人間が生き残りを賭けた戦いみたいでも、

人間の言葉・心が通じる象…つまり人間に銃を向けたんだ、

お金のために人間に害悪をなすオツベルは、仲間だろうか?

人間を仲間としないオツベル…結局、オツベルは人間の敵、

お金を人間の命より重視するオツベルに人の心は通じない、

そんなオツベルの伴侶や家族や一味も、人間の心を見失う。



お金を稼ぐのは何のためでしょうか?

人間の命を見殺してまで稼ぐお金の意味ってなんでしょう?

稼ぎ・貯めたお金をオツベルは何につかう積りでしょうか?

その答えらしきものに…私は一つ思い当たります。

ピストルです…オツベルの身を護るピストルです。

人間を友としないオツベルが頼るモノ…信頼できそうな物★



お腹を空かせたジャンバルジャンはパンを盗んで捕まった、

明日の食事のためにと…生き残るための銀の食器を盗んだ、

ジャンバルジャンと同じで、オツベルも生き残りを図った、

今日は生き残れるかも知れないけど、明日はどうなるのか?

オツベルのお金は、もっと強い奴に奪われるかも分らない、

地震で、津波で、原発事故で、すべてを失うかも知れない。



困った時、困った人に政府や社会は何をしてくれるだろう?

誰も助けにならない、誰も信じられないなら、蓄えが安心?

それで、どれだけの蓄えでオツベルは安心できるのだろう?

一人で生き延びるために、どれだけ蓄えたら足りるだろう?

身を護る堅固な要塞に、銃に、食糧に、娯楽も欲しいだろ?

いつまでの? 少なくとも数年分、一生分、子孫の分まで?


だったら、千億円持ってても足りないに決まってるんだよ。

オツベルが一億人も居たら? そりゃ死んで貰うしかない。

弱肉強食の世界では、邪魔な人に死んでもらうことになる。

毎年三万人でもまだ不足。戦争で大掃除する必要も生じる。

焼け野原の復興…建設業界は又とないチャンスに違いない。

お金もうけは非情なようでも、人の死までがチャンスです。



これが福祉社会だと、貯金なんか無くても生きられるんだ。

収入をぜんぶ使い切っても、来月にはまた入ってくるんだ。

働けば収入になる、使ったお金はまた社会を循環して潤す。

みんなが働けば、社会に活気が出て、国全体が明るくなる。

助け合い、支え合い、相互扶助の社会なら皆が安心できる。

ある意味、宵越しのお金を持たなかった江戸っ子に似てる。



そうなると困ることがあるって言うか、困る人がいるんだ。

威張りたい人、見栄を張りたい人、権力を振るいたい人さ、

民衆が楽しく暮してたら、だれもペコペコしなくなるから、

ふんぞり返っている変な人たちは威張っていられなくなる、

見せびらかせたり、自慢したり、勿体ぶったりも出来ない、

不安な世の中にしなきゃ、邪悪は大きな顔で歩けないんだ。



ともあれ、

オツベルがお金に執着を持つ原因になったのは社会の歪み、

「お金がなければ首がないのと一緒」みたいな仕組の社会、

他人の懐の金を狙って、騙して、奪いとる算段をする社会、

この社会を明るく変えたくない悪い人たちがいるのは事実、

それでオツベルや、お金に執着する人たちが生れたのです、

お金に執着する人が幸せなら良い…だけど不幸な顔ばかり。



その不幸な人たちに憧れるなら、それは阿呆な人たちです。

輝く人に共通してること…社会や他者を目的に働いている。

幸せに輝きたくて、賢い人は他者の幸せを目的として働く。

人は輝いてこそ愉快で、楽しく・幸せに・充実して暮せる。

お金もうけに汲々するのでなく、誰かの幸せを願い生きる。

それは伴侶でも家族でも仲間でも…ボランティアでも良い。



結局、

お金や地位や体裁に囚われる限り、そこから脱出できない。

脱する一番の大道…働くことを大いに楽しむことでしょう。

自分の家族から決して、第二第三のオツベルを生まない事。

それが楽しい幸せな家庭を作り育む…平和な社会の第一歩。

「オツベルと象」を読んで、そんなことを思います。


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