「昨日松島に行ってきた」
「ほう、いいですね。一体何をしに?」
「写真撮りに。近々カメラを新しくするから、今持ってるカメラを使い倒したくて。ところで素朴な疑問がひとつ。『松島海岸』って書いてあったけれど、あそこ海なの?水面に波が立ってなかったけど」
「ひどく根本的な質問ですね・・・。あそこは『湾』ですよ。『松島湾』。海の一部です」
「そもそも『松島』って島があるわけじゃなくて、松の生えてるあそこら一帯の島々をまとめて松島って呼んでたんだね。知らんかった」
「いつも思うんですけど、旅行に行くなら最低限の下調べをしましょうよ」
「写真撮影が本来の目的だったんだけどさ、食い物も期待してたんだよね!特にカキ!生、焼きと食い倒れしてきました!」
「うらやましい限りです」
「カレーパンを売りにした店もあったんだ。看板には『食べたお父さんお母さんの9割が”うまい!”と叫んだ』みたいな事が書いてあったのさ。1個300円」
「それは…随分挑戦的な宣伝文句ですね」
「どんな味なのか気になって食べてみたんだけど」
「どうでした?叫びました?」
「パンの中にぷりっぷりのカキが入っててさ、確かに旨かったんだけど・・・」
「だけど?」
「・・・なんか違くない?あれはカキが旨かったのであってカレーパンどうこう言う話じゃない。カレーそのものの味で『旨い』と言わせて欲しかった・・・」
「そこはほら、各々の感性の問題ですから」
「で、生ガキをお土産に買ってきた。昨日ホワイトデーだったじゃん。家族にチョコのお返し」
「ホワイトデーに、カキをプレゼント・・・」
「ちょっと待って、一度全ての偏見を捨てて考えてみ?カキは『海のミルク』と呼ばれてるんだよ?名前だけ聞くと案外ホワイトデーにぴったりだと思わない?」
「チョコのお返しに生ものはちょっと」
「しかも殻付の生食用。高かったんだから」
「値段の問題ですかね?」
「それはそれとして、はい、お前の分」ガランッ
「おぉ・・・、ありがとうございます。ちっとも期待していなかっただけに感激です」
「一言多い」
「なるほど殻付ですか、新鮮ですねぇ。・・・あの、無知ですみません。このフタになってる殻って、どうやって外すんです?」
「そこが問題だ」
「金をかけてまで私に嫌がらせしたいんですか?」
「いや違うんだ。お店の人は専用のヘラを使っててさ、それも一緒に売ってたんだけど、あれ200円すんだよね。カキそのものに金かかったのに、更なる出費てのはちょっと」
「それじゃ貴方はどうやって食べたんです?」
「マイナスドライバーを貝殻の間に刺し入れてギコギコッと強引に」
「変なとこでせこいですよね」
「 お土産貰っといてせこいとか言うな!年に1回使うか使わないかみたいなニッチな専用器具にお金使いたくない!」
「失敬でした。これは後でいただきます。それはそうと写真撮ってきたんですよね、見せてくださいよ」
「しょうがないなぁ、ほれ」
「あら、ウミネコ。随分近くまで寄れたんですね」
「警戒心ゼロだあいつら。むしろ餌もらえると思って自分から近づいてきた節がある」
ペラッ「またウミネコ。今度は飛んでるとこですか。いい写真ですね」
「ふふん、自画自賛。今これをデスクトップの待ち受けにしてる」
「翼がぶれてますけど。シャッタースピードをもっと上げるべきでしたね」
「細かいとこは気にしない」
「ふーん・・・」ペラッ
「・・・」ペラッ
「・・・」ペラッ
「以上だ」
「なんでウミネコしか無いんですか!島撮ってきなさいよ!」
「だってこんなに近くで鳥撮る機会なんてそうないんだもん!」
「4枚目と5枚目なんて角度違うだけじゃないですか!何がしたいんです貴方!」
「島の写真は今準備してない。後で持ってくる」
「後でって・・・。こういうのは鮮度が大事ですよ?時間が経った後で見せてもらっても『ふ~ん』としか言えません」
「みやげ話も生ものか」
「なるべく早く見せてくださいね。煮ても焼いても食えなくなる前に」
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