
映画「男はつらいよ」シリーズでフーテンの寅さんが、いつものごとく恋をした相手役のマドンナ、浅丘ルリ子さんが演じた「りりー」をあなたは覚えていますか。「りりー」は、酒場を転々としながらも、お互い親身になって接し気持ちが通い合っていたのに、寅さんはどうしても結婚に踏み切れなく、映画を見ている私がやるせない気持ちになったことを思い出した。
私の知っている接客業のリリちゃんも、店や携帯電話を転々と変えていた。彼女は、日本人に恋をし、悲しい思いもしていた。私の頭の中では、「りりー」と重なり合っていた。そんな彼女には、本国で小学校に通っている少女がひとりいる。学力優秀な自慢の子で、両親が面倒を見ているという。その話になると顔が生き生きとしてくる。当然、携帯電話の待ち受け画面は、その子の笑顔である。でも、お母さんの誕生日に楽しそうに電話をかける親思いの彼女は、今は消息がわからない。
餓死した赤ん坊を抱きながら、大粒の涙を流して悲しんでいるお母さんの映像をテレビで見たことがある。どこの国に住んでいようが、人の心は変わらない。