突然ですが、新カテゴリです^^
「なんちゃって自動車工学」と題して、それっぽい話題について書いてみたいと思っています。なにぶん「なんちゃって」ですので、過度な期待はしないでください。
ということで最初は「曲がる」ことについて考えてみたいなと思っています。ではでは…
スリップ角と横力
何はなくともまずはこの言葉。スリップ角というのはタイヤの向きと車両進行方向のずれこのことで、クルマが「曲がる」ことを考えたとき、最も重要な言葉のひとつだと思います。日本語でも、そのままスリップアングルと表記される場合もあります。
スリップというとついついタイヤの空転のことをイメージしてしまいますが、そのスリップとはちがいますので注意です^^
タイヤは路面との摩擦とその弾性により、進行方向に対して角度(スリップ角)を与えると横方向に力を生じます。これをそのまま「横力」といいます。
このうちの車両の横方向の分力がコーナリングフォースとなり車両を旋回させます。一方車両前後(逆向き)の方向の分力はコーナリングの抵抗となります。
右図にスリップ角や横力などを描いてみました。傾いているのはタイヤで、上から見た図です。たとえばこれがコーナリング初期の前輪スリップ角の様子だと考えると…
・ドライバーが直進する車両に対してステアリングを切ってスリップ角を与える
・タイヤに横力が発生し、その大部分が車両を旋回させようとする力(コーナリングフォース)となる。
・これが旋回(ヨー)モーメントとなり、車両は自転(回頭)運動をはじめる…
ってな具合です。
※コーナリング中は車両の向きと進行方向は一致しないことが多々あります。
※図では横力はタイヤの中心に発生していますが、実際には接地点中心よりも少し後ろにずれます。これをニューマチックトレールといいます。
クルマはタイヤの向きには進んでいない
先述のように、車両は曲がるとき、タイヤの向きに進んでいるわけではありません(もう少し詳しくはコーナリングについての項で書く予定です)。
これを最初に聞いたとき、正直??と思いました。
幼い頃からペダルカーやラジコンなど、ステアリングの切れる四輪車にいろいろ親しんできましたが、
「ハンドルを切り、前輪に角度が付くから、クルマの向きが変わる」
そんな風に漠然と考えていました。
しかし実際にはごく低速の場合を除き、クルマはタイヤの向きに進んでいるわけではありません。
普通に曲がるとき(=遠心力が生じるような速度の場合)は車両の進行方向とタイヤの向きに「ずれ(=スリップ角)」を与え、先ほどの「横力」を発生させないと、旋回することが出来ないのです。
先述のようにタイヤはスリップ角を与えることで横力を発生するので、旋回中、常に進行方向とタイヤは「ずれて」いる必要があるのです。
高校生くらいの物理で、糸の先におもりをつけてぐるぐる回したとき、向心力は糸の張力に等しく…なんて円運動について習った覚えがあるという方も多いと思いますが、この例では明らかに糸が切れたらおもりはすっ飛んでいってしまいます。クルマの旋回もこれと同じことで、この向心力が無ければ旋回をすることが出来ないのです。
そして車の場合はの“糸”に相当するのはもちろん、唯一の接点であるタイヤと路面の摩擦力です。
後輪スリップ角?
前輪にスリップ角を与える方法…これは至極わかりやすいですよね。ハンドルをきるだけ。でも、前輪に横力が生じるだけではクルマは自転(回頭)は出来ても公転(旋回)することは出来ません。
ってこの話はコーナリングについて書いてからじゃないとうまく説明できないのですが、直感的にも車両の前方にある前輪だけに横力が生じていたのではバランスが悪そうですよね?でも後輪には普通は操舵機構はありませんから、積極的にスリップ角を与えることはできません。
ではどうやってスリップ角が生まれるのでしょうか。
先ほどクルマはタイヤの向きに進んではいないと書きましたが、これがポイントです。クルマは前輪の向きに進んではいませんが、後輪の向きに進んでいるわけでもありません。
進行方向は、刻一刻と変わっており、もちろん直進時は進行方向=クルマの向きです。ここから回頭~旋回とコーナリングが進んでいくと、後輪から見て「斜め」に進んでいる状態になります。これにより後輪にもスリップ角、そして横力が生じるというわけです。
…と、長くなってきましたのでとりあえず今回はこのへんで…
多分スリップ角の話だけを書いても??って感じだとは思うのですが、コーナリングやアンダー・オーバーステアなどの話などを書くためにやはりここから書き始めるべきなのかなと思ってこうしてみました。
これらの言葉は運動性能関係の本ではだいたい最初に書いてある内容ですが、「自動車雑誌にあんまり登場しないワード」の代表格な気がします。なんでだろ?
次回につづく!…予定です^^;
参考文献
三田村楽三:車はなぜ曲がるか?,山海堂
宇野高明:車両運動性能とシャシーメカニズム,グランプリ出版 ほか
「なんちゃって自動車工学」と題して、それっぽい話題について書いてみたいと思っています。なにぶん「なんちゃって」ですので、過度な期待はしないでください。
ということで最初は「曲がる」ことについて考えてみたいなと思っています。ではでは…
スリップ角 |
何はなくともまずはこの言葉。スリップ角というのはタイヤの向きと車両進行方向のずれこのことで、クルマが「曲がる」ことを考えたとき、最も重要な言葉のひとつだと思います。日本語でも、そのままスリップアングルと表記される場合もあります。
スリップというとついついタイヤの空転のことをイメージしてしまいますが、そのスリップとはちがいますので注意です^^
タイヤは路面との摩擦とその弾性により、進行方向に対して角度(スリップ角)を与えると横方向に力を生じます。これをそのまま「横力」といいます。
このうちの車両の横方向の分力がコーナリングフォースとなり車両を旋回させます。一方車両前後(逆向き)の方向の分力はコーナリングの抵抗となります。
右図にスリップ角や横力などを描いてみました。傾いているのはタイヤで、上から見た図です。たとえばこれがコーナリング初期の前輪スリップ角の様子だと考えると…
・ドライバーが直進する車両に対してステアリングを切ってスリップ角を与える
・タイヤに横力が発生し、その大部分が車両を旋回させようとする力(コーナリングフォース)となる。
・これが旋回(ヨー)モーメントとなり、車両は自転(回頭)運動をはじめる…
ってな具合です。
※コーナリング中は車両の向きと進行方向は一致しないことが多々あります。
※図では横力はタイヤの中心に発生していますが、実際には接地点中心よりも少し後ろにずれます。これをニューマチックトレールといいます。
円運動には向心力が必要 |
先述のように、車両は曲がるとき、タイヤの向きに進んでいるわけではありません(もう少し詳しくはコーナリングについての項で書く予定です)。
これを最初に聞いたとき、正直??と思いました。
幼い頃からペダルカーやラジコンなど、ステアリングの切れる四輪車にいろいろ親しんできましたが、
「ハンドルを切り、前輪に角度が付くから、クルマの向きが変わる」
そんな風に漠然と考えていました。
しかし実際にはごく低速の場合を除き、クルマはタイヤの向きに進んでいるわけではありません。
普通に曲がるとき(=遠心力が生じるような速度の場合)は車両の進行方向とタイヤの向きに「ずれ(=スリップ角)」を与え、先ほどの「横力」を発生させないと、旋回することが出来ないのです。
先述のようにタイヤはスリップ角を与えることで横力を発生するので、旋回中、常に進行方向とタイヤは「ずれて」いる必要があるのです。
高校生くらいの物理で、糸の先におもりをつけてぐるぐる回したとき、向心力は糸の張力に等しく…なんて円運動について習った覚えがあるという方も多いと思いますが、この例では明らかに糸が切れたらおもりはすっ飛んでいってしまいます。クルマの旋回もこれと同じことで、この向心力が無ければ旋回をすることが出来ないのです。
そして車の場合はの“糸”に相当するのはもちろん、唯一の接点であるタイヤと路面の摩擦力です。
前後輪のスリップ角 |
前輪にスリップ角を与える方法…これは至極わかりやすいですよね。ハンドルをきるだけ。でも、前輪に横力が生じるだけではクルマは自転(回頭)は出来ても公転(旋回)することは出来ません。
ってこの話はコーナリングについて書いてからじゃないとうまく説明できないのですが、直感的にも車両の前方にある前輪だけに横力が生じていたのではバランスが悪そうですよね?でも後輪には普通は操舵機構はありませんから、積極的にスリップ角を与えることはできません。
ではどうやってスリップ角が生まれるのでしょうか。
先ほどクルマはタイヤの向きに進んではいないと書きましたが、これがポイントです。クルマは前輪の向きに進んではいませんが、後輪の向きに進んでいるわけでもありません。
進行方向は、刻一刻と変わっており、もちろん直進時は進行方向=クルマの向きです。ここから回頭~旋回とコーナリングが進んでいくと、後輪から見て「斜め」に進んでいる状態になります。これにより後輪にもスリップ角、そして横力が生じるというわけです。
…と、長くなってきましたのでとりあえず今回はこのへんで…
多分スリップ角の話だけを書いても??って感じだとは思うのですが、コーナリングやアンダー・オーバーステアなどの話などを書くためにやはりここから書き始めるべきなのかなと思ってこうしてみました。
これらの言葉は運動性能関係の本ではだいたい最初に書いてある内容ですが、「自動車雑誌にあんまり登場しないワード」の代表格な気がします。なんでだろ?
次回につづく!…予定です^^;
参考文献
三田村楽三:車はなぜ曲がるか?,山海堂
宇野高明:車両運動性能とシャシーメカニズム,グランプリ出版 ほか
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