愛読書『世界のモザイク』でパフォスのモザイクに巡り合い、その色鮮やかさ・大きさに魅かれたのが旅のきっかけだった。
仕事の都合上1週間を超える連休は取れそうになかったが、調べてみるとそんなに時間がかからない(ドバイ経由)と判明したのも背中を押してくれた。
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5日間の旅の前半を「その1」、後半を「その2」とする。
上の地図で示した➊~➍は、旅の前半に訪れた場所。また、以下に出てくる下線部の各都市に対応しています。
1・2 (ラルナカ経由)⇒コロッシ城 ⇒クリオン ⇒レメソス (2015年8月22日)
ドバイでの乗り継ぎ時間は1時間45分しかなかったが、遅れずヒヤヒヤすることなしにラルナカへ到着したのが11時少し前。
入国審査で、旅の目的とかどの都市を訪れるか等ありきたりの質問はともかくとして、ホテルのバウチャーを見せろとまで言われたのには少々驚いた。日本人は珍しいのだろうか。たしかに全体を通して、ニコシア発ラルナカ行きのバスで日本人と思しき女性にたった一度会ったきりだったけど・・・。
翌日からの行程を考慮し、ラルナカから70㎞西のレメソスに泊まることになっていた。
日本の旅行社を通じて空港からホテルまでの送迎を頼んでいたドライバーNさんには難なく会えた。今日の予定を聞かれ、結局クリオン遺跡とレメソスの往復をお願いした。週末なのでバス便が少なく難航を予想していたので、ラッキー
Nさんは私の怪しい英語につき合ってくれた。彼は数字オタクで、やたらと聞きたがる。月給から家賃から・・・慣れたドルじゃなくてユーロ換算だから、ちょっと焦った
今思えば、会話をつなげようと努力してくれたんだと思う。ありがとう
道中で1974年にキプロス北部をトルコが占領したという話が出て、「41年前ね」と言ったら、5才の時に突然家を捨てた・・・と告白され驚いた。以前はギルネに住んでいたそうだ。家族とともに今はニコシアの近くにいる、と。ギルネまでは20㎞だそうで、帰ることができる状況になったら戻りたいのかもしれないと思った。
私の家族のことも聞かれた。弟がいる、と言ったらすかさず「何才?」と。・・・というわけで、私の大体の年齢もバレてしまったのだ。もう、うまいんだから
ともあれ、久々に年上のドライバーさんだ。自分の年齢が上がるにつれ年下の確率が高まり、最近ほとんどそうだったけど。
Nさんはちょい悪サーファー風だから、年齢より若く見えるかも。
レメソスのホテルにチェックインして荷物を置き、すぐにお出かけ。まずは、14㎞西のコロッシ城【始まりは13世紀にさかのぼり、14世紀には十字軍の基地としても使用】を目指す。
下の写真はお城の遠景。現存するのは15世紀半ばに改築されたものらしい。
跳ね橋がついていて、2階から出入りする設計。典型的な軍事用の城という。
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なぜここだけ?な感じで場内に残っていた壁画、十字架上のイエス。上から透明な板で保護してあるので、反射しちゃっててゴメンナサイ
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3階建てのお城から見下ろしてみた。
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お城を後にしてさらに西へ5㎞、クリオン遺跡【B.C.14~13世紀頃、ギリシャから移ってきたアカイア人の植民地として栄えた】へ向かう。
クリオンは暑かった。事前に得ていた情報通り、日射しが強い
ドライバーNさんとは駐車場で待ち合わせて、遺跡を隈なくまわることにした。
まずは最大のお楽しみ、エウストリオスの家【4世紀の地震の後につくられた公衆浴場跡】。
保存のために屋根がかけられ、階段が設けられている。穴はサウナ跡。
そして、浴場休憩室の床にそれはそれは素晴らしいモザイクが残されている。キプロスで出合うモザイク第1弾に、テンションは上がり放題
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人物や動物、様々なモチーフも楽しい。鳩は平和、魚はキリスト教の象徴か
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隣接するローマ式野外劇場【B.C.2世紀に淵源を持ち、現存するのは2世紀の制作】、収容規模は2000人という。今も現役の劇場らしい。
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劇場の西には更に遺跡が広がっており、表示に従って進んでいく。途中の道はこんな感じ。下り坂の向こうは青い海
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途中で振り返ると、こんな光景が。
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左手はこんな景色。
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たどり着いた遺跡は繁栄した都市の中心部と思われる。空と海が溶け合って、ボーダーレスなブルー。
南イタリアはアマルフィの海を思い出した。やっぱり地中海はつながってるんだね
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先ほどの牧歌的な浴場跡のとは雰囲気の異なるモザイクもあった。グラディエイター(剣闘士)みたい。
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踵を返し、もと来た道を戻る。今度は右手に海。
あのベンチ・・・腰を下ろしたら最後、ず~っと座っていられそう
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右前方、カーブしていくエピスコピ湾が霞んでいる。
海辺で育った私、海岸線を見ているだけで癒される
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クリオンから30分弱でレメソスに帰着。時は15時半、まだ十分出歩ける時間帯だったが、暑さを避けて部屋で一旦休憩。少しだけのつもりが・・・気づけば3時間も昼寝。
深夜に羽田を発った機内でうつらうつらとしか眠れなかったツケがここへきて・・・抗っても寄る年波には勝てない、無念
夏のおかげで、18時半でもまだ明るい。地図を頼りに、海沿いの道を西へ向かう。翌日はバスでパフォスへ行く予定、バス停の場所と時刻を確認しなければならなかった。
歩いていると、途中のレストランで客引きされた。後で戻って来ると言って、先を急ぐ。
30分ほどで地図の示す場所付近にたどり着いたが、バス停が見当たらない。いくら明るいとはいえ、19時過ぎ・・・焦りつつも旧港ロータリーをうろつく。
意を決して、ロータリーに面したキオスクのおじいちゃんに聞いてみると、目の前だと教えてくれたうえに、出発時刻は8時・10時・12時との情報もくれた。ラッキー
喜びのあまり、おじいちゃんからKEO【この旅で何度もお世話になったビールなのに、写真撮ってなかった
】を買って飲みながら、2㎞の道のりを戻る。
先ほどのお店へ顔を出すと、お姉さんがニッコリ笑ってくれた。
白ワインを舐めつつ、トマト&オニオンサラダ。やっぱ夏にはいいね~
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魚のフライとポテトは予想を裏切らない定番の味。キプロス名物かと問われたら即答できないけど、まぁいいか。
経験上、ヨーロッパでは冷たくあしらわれることも少なくないのだが、東洋人に分け隔てなく声をかけてくれたその心持ちが嬉しいから
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シャワーを浴び、洗濯しなきゃと思いつつベッドに乗ったら、気づけば眠りに落ちていた
2・3・4 レメソス ⇒パフォス ⇒ペトラ・トゥ・ロミウ ⇒(パフォス経由) ⇒レメソス (2015年8月23日)
10時に旧港ロータリーを発車するバスに合わせて、ホテルを出る。早めに着いたので、バス停付近の土産物屋をひやかす。貝のネックレスなど、海辺らしいモノが並んでいる。
定刻より10分ほど遅れて出発したバスは、きっかり1時間でパノ・パフォスに到着。
本日の目玉は世界遺産「パフォスの考古遺跡」に含まれるカト・パフォス考古学公園。海辺の町へは2㎞南下しなければならない。10分おきに出ているという市内バスに乗ろうとしたが、意外に苦労するハメになった。レメソスから乗って来たバスを降りれば簡単にわかるだろうとタカをくくっていたのだが、市外から来るバスと市内バスは乗り場が異なるらしく、また見当たる範囲に路線図もなかった
自分と同じようにカト・パフォスを目指す観光客らしき人もいない。あれぇ~
バス停前のカフェのお姉さんに618番のバスだと教えてもらい、バスが発着するというマーケットを目指して歩き出したものの、全くの住宅街で見通しがきかず・・・すぐ暗礁に乗り上げた。人通りも少ないのだが、偶然通りすがったおじちゃんが「50m進んで待て」と教えてくれて、この指示が実に的確だった。まさに救いの神
結局乗ったのは610番のバスなのだが、たどり着ければ何でもよし
ちなみにバスのドライバーは、多くの絵画で描かれているようなイエス・キリストを思い起こさせる風貌の人。フロントガラスに磔刑のイエスが飾られてたから、やはりクリスチャンなんだろうなぁ。
モザイクのある遺跡ヘ入場したのが12時半。この遺跡、ディオニュソスの館とエオンの館は屋内になるとはいえ、広大な敷地のほとんどが野ざらし。
1日で最も暑い時間帯に歩きまわることになった
まずは入口に近いエオンの館へ。この遺跡の中で、もっとも近年に発見されたモザイク。
3段をさらに左右に分けた6つのモザイクが出迎えてくれた。色がキレイ
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最下段の右側は、アポロンとマルシュアス。音楽で勝ったアポロン(右端)がマルシュアス(髪をつかまれている人物)の処刑を命じる場面。
さすが美少年、お美しくていらっしゃるアポロン様
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最上段の右側は、ニュサのニンフに預けられるディオニュソス(右から4人目の子ども)。ヘルメスの膝に抱かれているディオニュソスは、ゼウスとその愛人の間に生まれたが、ゼウスの妻ヘラの嫉妬から逃れるため身を隠さねばならなかった・・・
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遺跡の向こうに海が見える。
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次はテセウスの館へ。高官の大豪邸だったというが、建物はほとんど崩れている。
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しかし、モザイクは豪華
下は、テセウスがミノタウロスを退治する場面。左手でミノタウロスをつかみ、右手は棍棒を振り上げている。
なんと美しい青なんだろう・・・数mの大作に目を見張る。このモザイクに魅せられて、私はキプロスにやって来た
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同じくテセウスの館に残る、産湯を使うアキレウス(左から3人目)のモザイク。
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崩れ落ちた柱頭。
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野ざらしのオルフェウスの館、看板にモザイクの写真はあれど、砂がかぶっていて何も見えない。昔は見学できたのだろうか
海の近くゆえ、潮風に乗って砂が飛んでくるのだろう。同様に覆いのないテセウスの館が見られるように遺跡が維持されているだけでもありがたい。感謝
最後にディオニュソスの館へ入る前、自動販売機コーナーで休憩。いつも水は持ち歩いているが、炎天下に冷たい飲み物が欲しくなった。350mlのスプライトがソッコー吸収されていく。遺跡の見学にまだまだ時間かかりそう・・・飲み物の横で売られているスナックが渡りに船、かじって昼食の代わりとした。自販機そばのベンチでひと休み。日射しはキツイけど、物陰はやや涼しい。ふうぅ
事前情報によると、遺跡の中でイチオシがディオニュソスの館らしい。
確かに、ハンパない数のモザイクが集結していた。
下はナルキッソス。彼の目線をたどって右下を見ると、水面に映る顔がモザイクでしっかり表現されている
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こちらは趣の異なる作風。制作年代が違うようだ。スキュラ(6つの頭と12本の足を持つ海の怪獣)とイルカ。
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これも大きな作品だった。下段はインドから帰還するディオニュソス、豹にひかせた戦車に乗っている。上段は彼の象徴である葡萄の木。
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四季を表現したモザイク。四隅が春・夏・秋・冬を象徴しているらしいが、そう思って目を凝らしても自分的には
感性のモンダイかしら
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神話シリーズはまだまだ続く。
ヒッポリュトス(左)とパイドラ(右)。心なしかヒッポリュトスは眉をしかめている風に見える【処女神アルテミスを崇拝するヒッポリュトスは恋愛を毛嫌いし、愛と美の女神アフロディテを怒らせてしまう。アフロディテのいたずらで、義理の母パイドラはヒッポリュトスに恋心を抱く】。
偶然射し込んだ一筋の光が美しい。
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中央は、ガニュメデスを強奪するゼウス【美少年に恋したゼウスが鷲に姿を変えてさらう場面】。
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狩りの場面を描いたモザイク。迫力ある~
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孔雀はゼウスの妻ヘラを象徴しているのだろうか? 周囲の模様がアサガオに見えるのは気のせいか・・・
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ディオニュソス(左)とアクメ。この館の中で最も有名なモザイクらしい。
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左はポセイドン。右はアミュモーネー【サテュロスに襲われたところをポセイドンに救われる。また、ポセイドンにレルネーの泉の場所を教えてもらい、干ばつから救われた】とアムピトリテ【イルカの仲立ちでポセイドンの妻となり、トリトンをはじめとする3人の子を設けた】の2説がある。中央の水瓶が泉を連想させるので、アミュモーネーかなと個人的には思うけど、どちらが正しいのか不明
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アポロン(右)とダプネ(真ん中)。アポロンに捕まりそうになったダプネが父(川の神ペネイオス、画面左端)に助けを求め、月桂樹に姿を変えようとする場面【愛の神エロスをからかった仕返しに、アポロンは恋心をかきたてる矢を放たれ、逆に恋心を去らせる矢を打たれたダプネを追いかける】。
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結局、遺跡を出たのは2時間後。港の突端にあるパフォス城は修復中で入れなかった。
港内はマリーナになっていて、たくさんの船が係留されている。
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さて、ペトラ・トゥ・ロミウへ向かおう。港前のロータリーに停まっていたタクシーと値段交渉して乗り込む。
パフォスから東へ25㎞、愛と美の女神アフロディテが生まれたとされる場所がある。海の泡から生まれたアフロディテは、下の写真で3つある岩のうち真ん中の一番小さな岩に辿り着いたという。
季節柄、海水浴客であふれかえっている。
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泳ぐつもりは毛頭ないが、浜辺に近づいてみる。単純にも、ボッティチェリの『ヴィ―ナスの誕生』を思い浮かべながら。
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再びカト・パフォスへ戻り、覗いた土産物屋でポストカードを入手。
レメソスへ向かうバスが出るパノ・パフォスを目指して北上しつつ、テキトーな停留所から市内バスに乗る予定だった。
立ち寄った聖パウロの柱【使徒パウロが縛られ、鞭うたれたという伝説が残る】、中央の白いのがそれ。長い年月の間に人々によって少しずつ削り取られ、小さくなったらしい。
後方に見えるは聖キリヤキ教会。
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かつてはこの島イチの規模を誇ったという教会跡らしく、モザイクが広がっていた。
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さらに数百m北上して、聖ソロモニのカタコンベ。扉が閉まっていて入れなかったので、上から見下ろすだけとなった。日曜だからclosed?
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かつては穴蔵の中に水が流れ、眼病に効くといわれたらしい。水に浸した布を木に結び付け、快復を願ったという。
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本日の観光はこれでおしまい。カト・パフォスとパノ・パフォスを結ぶ大通り沿いのバス停で、ビールを飲みながら待つ。LEONという銘柄の、ギリシャ語表記(反対側は英語で書かれている)。
夏の17時半だから、まだ明るい。かなり待たされてやって来たバスのドライバーはなんと、往きにもお世話になったキリスト似の方だった
こんなことってあるのね~
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バス停に着いたところ、週末につきバス便が少ないようだった。発車は1時間後。腹ごしらえできそうな食堂も見当たらず、夕食はレメソスまでお預け
レメソスに到着したのが19時40分。海岸沿いの大通りをホテル近くまで戻って来て、昨日から気になっていたレストランに入った。
今夜も海鮮
タコのグリル、トマト・きゅうりのサラダ付き。赤ワインも注文。
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目と鼻の先のホテルに戻り、シャワーを浴びたあとに晩酌
前夜、ホテルの斜め向かいにあるミニマーケットでgetしたボトルワイン。赤・白・ロゼがずらりと揃い、値段もピンキリだったけど、モザイク風のエチケットに魅かれて購入(KEO社のワイン。ビール会社と思っていたが、この記事を書くにあたり調べたところ、まずワインの会社として創業、ビール製造は後からと判明)。容易にワインが手に入る旅先、うれしいなぁ
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★ 中締め ★
旅の前半はここまでです。いつもながら、晩酌アルコールの画像で終わるという
後半は、内陸部にある世界遺産「トロードス地方の壁画教会群」や首都ニコシアなどを訪れます。お楽しみに~
仕事の都合上1週間を超える連休は取れそうになかったが、調べてみるとそんなに時間がかからない(ドバイ経由)と判明したのも背中を押してくれた。
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5日間の旅の前半を「その1」、後半を「その2」とする。
上の地図で示した➊~➍は、旅の前半に訪れた場所。また、以下に出てくる下線部の各都市に対応しています。
1・2 (ラルナカ経由)⇒コロッシ城 ⇒クリオン ⇒レメソス (2015年8月22日)
ドバイでの乗り継ぎ時間は1時間45分しかなかったが、遅れずヒヤヒヤすることなしにラルナカへ到着したのが11時少し前。
入国審査で、旅の目的とかどの都市を訪れるか等ありきたりの質問はともかくとして、ホテルのバウチャーを見せろとまで言われたのには少々驚いた。日本人は珍しいのだろうか。たしかに全体を通して、ニコシア発ラルナカ行きのバスで日本人と思しき女性にたった一度会ったきりだったけど・・・。
翌日からの行程を考慮し、ラルナカから70㎞西のレメソスに泊まることになっていた。
日本の旅行社を通じて空港からホテルまでの送迎を頼んでいたドライバーNさんには難なく会えた。今日の予定を聞かれ、結局クリオン遺跡とレメソスの往復をお願いした。週末なのでバス便が少なく難航を予想していたので、ラッキー
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Nさんは私の怪しい英語につき合ってくれた。彼は数字オタクで、やたらと聞きたがる。月給から家賃から・・・慣れたドルじゃなくてユーロ換算だから、ちょっと焦った
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道中で1974年にキプロス北部をトルコが占領したという話が出て、「41年前ね」と言ったら、5才の時に突然家を捨てた・・・と告白され驚いた。以前はギルネに住んでいたそうだ。家族とともに今はニコシアの近くにいる、と。ギルネまでは20㎞だそうで、帰ることができる状況になったら戻りたいのかもしれないと思った。
私の家族のことも聞かれた。弟がいる、と言ったらすかさず「何才?」と。・・・というわけで、私の大体の年齢もバレてしまったのだ。もう、うまいんだから
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ともあれ、久々に年上のドライバーさんだ。自分の年齢が上がるにつれ年下の確率が高まり、最近ほとんどそうだったけど。
Nさんはちょい悪サーファー風だから、年齢より若く見えるかも。
レメソスのホテルにチェックインして荷物を置き、すぐにお出かけ。まずは、14㎞西のコロッシ城【始まりは13世紀にさかのぼり、14世紀には十字軍の基地としても使用】を目指す。
下の写真はお城の遠景。現存するのは15世紀半ばに改築されたものらしい。
跳ね橋がついていて、2階から出入りする設計。典型的な軍事用の城という。
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なぜここだけ?な感じで場内に残っていた壁画、十字架上のイエス。上から透明な板で保護してあるので、反射しちゃっててゴメンナサイ
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3階建てのお城から見下ろしてみた。
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お城を後にしてさらに西へ5㎞、クリオン遺跡【B.C.14~13世紀頃、ギリシャから移ってきたアカイア人の植民地として栄えた】へ向かう。
クリオンは暑かった。事前に得ていた情報通り、日射しが強い
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ドライバーNさんとは駐車場で待ち合わせて、遺跡を隈なくまわることにした。
まずは最大のお楽しみ、エウストリオスの家【4世紀の地震の後につくられた公衆浴場跡】。
保存のために屋根がかけられ、階段が設けられている。穴はサウナ跡。
そして、浴場休憩室の床にそれはそれは素晴らしいモザイクが残されている。キプロスで出合うモザイク第1弾に、テンションは上がり放題
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人物や動物、様々なモチーフも楽しい。鳩は平和、魚はキリスト教の象徴か
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隣接するローマ式野外劇場【B.C.2世紀に淵源を持ち、現存するのは2世紀の制作】、収容規模は2000人という。今も現役の劇場らしい。
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劇場の西には更に遺跡が広がっており、表示に従って進んでいく。途中の道はこんな感じ。下り坂の向こうは青い海
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途中で振り返ると、こんな光景が。
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左手はこんな景色。
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たどり着いた遺跡は繁栄した都市の中心部と思われる。空と海が溶け合って、ボーダーレスなブルー。
南イタリアはアマルフィの海を思い出した。やっぱり地中海はつながってるんだね
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先ほどの牧歌的な浴場跡のとは雰囲気の異なるモザイクもあった。グラディエイター(剣闘士)みたい。
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踵を返し、もと来た道を戻る。今度は右手に海。
あのベンチ・・・腰を下ろしたら最後、ず~っと座っていられそう
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右前方、カーブしていくエピスコピ湾が霞んでいる。
海辺で育った私、海岸線を見ているだけで癒される
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クリオンから30分弱でレメソスに帰着。時は15時半、まだ十分出歩ける時間帯だったが、暑さを避けて部屋で一旦休憩。少しだけのつもりが・・・気づけば3時間も昼寝。
深夜に羽田を発った機内でうつらうつらとしか眠れなかったツケがここへきて・・・抗っても寄る年波には勝てない、無念
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夏のおかげで、18時半でもまだ明るい。地図を頼りに、海沿いの道を西へ向かう。翌日はバスでパフォスへ行く予定、バス停の場所と時刻を確認しなければならなかった。
歩いていると、途中のレストランで客引きされた。後で戻って来ると言って、先を急ぐ。
30分ほどで地図の示す場所付近にたどり着いたが、バス停が見当たらない。いくら明るいとはいえ、19時過ぎ・・・焦りつつも旧港ロータリーをうろつく。
意を決して、ロータリーに面したキオスクのおじいちゃんに聞いてみると、目の前だと教えてくれたうえに、出発時刻は8時・10時・12時との情報もくれた。ラッキー
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喜びのあまり、おじいちゃんからKEO【この旅で何度もお世話になったビールなのに、写真撮ってなかった
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先ほどのお店へ顔を出すと、お姉さんがニッコリ笑ってくれた。
白ワインを舐めつつ、トマト&オニオンサラダ。やっぱ夏にはいいね~
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魚のフライとポテトは予想を裏切らない定番の味。キプロス名物かと問われたら即答できないけど、まぁいいか。
経験上、ヨーロッパでは冷たくあしらわれることも少なくないのだが、東洋人に分け隔てなく声をかけてくれたその心持ちが嬉しいから
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シャワーを浴び、洗濯しなきゃと思いつつベッドに乗ったら、気づけば眠りに落ちていた
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2・3・4 レメソス ⇒パフォス ⇒ペトラ・トゥ・ロミウ ⇒(パフォス経由) ⇒レメソス (2015年8月23日)
10時に旧港ロータリーを発車するバスに合わせて、ホテルを出る。早めに着いたので、バス停付近の土産物屋をひやかす。貝のネックレスなど、海辺らしいモノが並んでいる。
定刻より10分ほど遅れて出発したバスは、きっかり1時間でパノ・パフォスに到着。
本日の目玉は世界遺産「パフォスの考古遺跡」に含まれるカト・パフォス考古学公園。海辺の町へは2㎞南下しなければならない。10分おきに出ているという市内バスに乗ろうとしたが、意外に苦労するハメになった。レメソスから乗って来たバスを降りれば簡単にわかるだろうとタカをくくっていたのだが、市外から来るバスと市内バスは乗り場が異なるらしく、また見当たる範囲に路線図もなかった
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バス停前のカフェのお姉さんに618番のバスだと教えてもらい、バスが発着するというマーケットを目指して歩き出したものの、全くの住宅街で見通しがきかず・・・すぐ暗礁に乗り上げた。人通りも少ないのだが、偶然通りすがったおじちゃんが「50m進んで待て」と教えてくれて、この指示が実に的確だった。まさに救いの神
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結局乗ったのは610番のバスなのだが、たどり着ければ何でもよし
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ちなみにバスのドライバーは、多くの絵画で描かれているようなイエス・キリストを思い起こさせる風貌の人。フロントガラスに磔刑のイエスが飾られてたから、やはりクリスチャンなんだろうなぁ。
モザイクのある遺跡ヘ入場したのが12時半。この遺跡、ディオニュソスの館とエオンの館は屋内になるとはいえ、広大な敷地のほとんどが野ざらし。
1日で最も暑い時間帯に歩きまわることになった
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まずは入口に近いエオンの館へ。この遺跡の中で、もっとも近年に発見されたモザイク。
3段をさらに左右に分けた6つのモザイクが出迎えてくれた。色がキレイ
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最下段の右側は、アポロンとマルシュアス。音楽で勝ったアポロン(右端)がマルシュアス(髪をつかまれている人物)の処刑を命じる場面。
さすが美少年、お美しくていらっしゃるアポロン様
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最上段の右側は、ニュサのニンフに預けられるディオニュソス(右から4人目の子ども)。ヘルメスの膝に抱かれているディオニュソスは、ゼウスとその愛人の間に生まれたが、ゼウスの妻ヘラの嫉妬から逃れるため身を隠さねばならなかった・・・
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遺跡の向こうに海が見える。
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次はテセウスの館へ。高官の大豪邸だったというが、建物はほとんど崩れている。
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しかし、モザイクは豪華
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なんと美しい青なんだろう・・・数mの大作に目を見張る。このモザイクに魅せられて、私はキプロスにやって来た
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同じくテセウスの館に残る、産湯を使うアキレウス(左から3人目)のモザイク。
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崩れ落ちた柱頭。
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野ざらしのオルフェウスの館、看板にモザイクの写真はあれど、砂がかぶっていて何も見えない。昔は見学できたのだろうか
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海の近くゆえ、潮風に乗って砂が飛んでくるのだろう。同様に覆いのないテセウスの館が見られるように遺跡が維持されているだけでもありがたい。感謝
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最後にディオニュソスの館へ入る前、自動販売機コーナーで休憩。いつも水は持ち歩いているが、炎天下に冷たい飲み物が欲しくなった。350mlのスプライトがソッコー吸収されていく。遺跡の見学にまだまだ時間かかりそう・・・飲み物の横で売られているスナックが渡りに船、かじって昼食の代わりとした。自販機そばのベンチでひと休み。日射しはキツイけど、物陰はやや涼しい。ふうぅ
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事前情報によると、遺跡の中でイチオシがディオニュソスの館らしい。
確かに、ハンパない数のモザイクが集結していた。
下はナルキッソス。彼の目線をたどって右下を見ると、水面に映る顔がモザイクでしっかり表現されている
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こちらは趣の異なる作風。制作年代が違うようだ。スキュラ(6つの頭と12本の足を持つ海の怪獣)とイルカ。
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これも大きな作品だった。下段はインドから帰還するディオニュソス、豹にひかせた戦車に乗っている。上段は彼の象徴である葡萄の木。
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四季を表現したモザイク。四隅が春・夏・秋・冬を象徴しているらしいが、そう思って目を凝らしても自分的には
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神話シリーズはまだまだ続く。
ヒッポリュトス(左)とパイドラ(右)。心なしかヒッポリュトスは眉をしかめている風に見える【処女神アルテミスを崇拝するヒッポリュトスは恋愛を毛嫌いし、愛と美の女神アフロディテを怒らせてしまう。アフロディテのいたずらで、義理の母パイドラはヒッポリュトスに恋心を抱く】。
偶然射し込んだ一筋の光が美しい。
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中央は、ガニュメデスを強奪するゼウス【美少年に恋したゼウスが鷲に姿を変えてさらう場面】。
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狩りの場面を描いたモザイク。迫力ある~
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孔雀はゼウスの妻ヘラを象徴しているのだろうか? 周囲の模様がアサガオに見えるのは気のせいか・・・
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ディオニュソス(左)とアクメ。この館の中で最も有名なモザイクらしい。
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左はポセイドン。右はアミュモーネー【サテュロスに襲われたところをポセイドンに救われる。また、ポセイドンにレルネーの泉の場所を教えてもらい、干ばつから救われた】とアムピトリテ【イルカの仲立ちでポセイドンの妻となり、トリトンをはじめとする3人の子を設けた】の2説がある。中央の水瓶が泉を連想させるので、アミュモーネーかなと個人的には思うけど、どちらが正しいのか不明
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アポロン(右)とダプネ(真ん中)。アポロンに捕まりそうになったダプネが父(川の神ペネイオス、画面左端)に助けを求め、月桂樹に姿を変えようとする場面【愛の神エロスをからかった仕返しに、アポロンは恋心をかきたてる矢を放たれ、逆に恋心を去らせる矢を打たれたダプネを追いかける】。
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結局、遺跡を出たのは2時間後。港の突端にあるパフォス城は修復中で入れなかった。
港内はマリーナになっていて、たくさんの船が係留されている。
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さて、ペトラ・トゥ・ロミウへ向かおう。港前のロータリーに停まっていたタクシーと値段交渉して乗り込む。
パフォスから東へ25㎞、愛と美の女神アフロディテが生まれたとされる場所がある。海の泡から生まれたアフロディテは、下の写真で3つある岩のうち真ん中の一番小さな岩に辿り着いたという。
季節柄、海水浴客であふれかえっている。
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泳ぐつもりは毛頭ないが、浜辺に近づいてみる。単純にも、ボッティチェリの『ヴィ―ナスの誕生』を思い浮かべながら。
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再びカト・パフォスへ戻り、覗いた土産物屋でポストカードを入手。
レメソスへ向かうバスが出るパノ・パフォスを目指して北上しつつ、テキトーな停留所から市内バスに乗る予定だった。
立ち寄った聖パウロの柱【使徒パウロが縛られ、鞭うたれたという伝説が残る】、中央の白いのがそれ。長い年月の間に人々によって少しずつ削り取られ、小さくなったらしい。
後方に見えるは聖キリヤキ教会。
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かつてはこの島イチの規模を誇ったという教会跡らしく、モザイクが広がっていた。
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さらに数百m北上して、聖ソロモニのカタコンベ。扉が閉まっていて入れなかったので、上から見下ろすだけとなった。日曜だからclosed?
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かつては穴蔵の中に水が流れ、眼病に効くといわれたらしい。水に浸した布を木に結び付け、快復を願ったという。
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本日の観光はこれでおしまい。カト・パフォスとパノ・パフォスを結ぶ大通り沿いのバス停で、ビールを飲みながら待つ。LEONという銘柄の、ギリシャ語表記(反対側は英語で書かれている)。
夏の17時半だから、まだ明るい。かなり待たされてやって来たバスのドライバーはなんと、往きにもお世話になったキリスト似の方だった
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バス停に着いたところ、週末につきバス便が少ないようだった。発車は1時間後。腹ごしらえできそうな食堂も見当たらず、夕食はレメソスまでお預け
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レメソスに到着したのが19時40分。海岸沿いの大通りをホテル近くまで戻って来て、昨日から気になっていたレストランに入った。
今夜も海鮮
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目と鼻の先のホテルに戻り、シャワーを浴びたあとに晩酌
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前夜、ホテルの斜め向かいにあるミニマーケットでgetしたボトルワイン。赤・白・ロゼがずらりと揃い、値段もピンキリだったけど、モザイク風のエチケットに魅かれて購入(KEO社のワイン。ビール会社と思っていたが、この記事を書くにあたり調べたところ、まずワインの会社として創業、ビール製造は後からと判明)。容易にワインが手に入る旅先、うれしいなぁ
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★ 中締め ★
旅の前半はここまでです。いつもながら、晩酌アルコールの画像で終わるという
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後半は、内陸部にある世界遺産「トロードス地方の壁画教会群」や首都ニコシアなどを訪れます。お楽しみに~
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