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小さき花-第2章~10

2021-09-03 17:12:27 | 小さき花
 ああ、天主さまはいかに愛深い御方でありましょうか。いかに憐れみ深い御方でありましょうか。主は苦難、試練を与えるとき私たちの能力に釣り合うように計らってくださいます。本当にその時、私はいつか父が死ぬだろうという事さえも恐れずに考える勇気がなかったのです。
 
 ある日、父が梯子の上部に昇り、私はその下に立っていました。すると父は「私のちいさき女王よ、もし私が上から落ちたなら、お前を押し潰してしまうから、早くそこを逃げなさい」と言いました。早速、私は心に反発を感じて、そして梯子の下に近寄って、こう思いました。「もし、父が落ちたなら、私と父は一緒に死ねるのだから、私は父の死ぬのを見る苦しみも悲しみもない」 ですから、なおさらそこを動きませんでした。実際、私はどれほど深く父を愛していたか、とても、これを言い表すことが出来ません。

 私は父のすることが、どのような事であっても非常に感服しました。父も私に向かっては、大きな娘に話すように、高尚な事や難しい問題でも、至って真面目に話をしておられました時、私は無邪気に父に向かって「「きっと、お父さん!あなたはいま私にお話しするように、政府の一番位の高い人に話をされたなら、彼らはみんな、お父さんを王様に選ぶに違いありません。また、そうなったら、このフランスは、どんな時代よりも幸福で平和な時代になります。でも、しかし、全ての王の運命の通り、いろいろの仇敵が出来て、お父さんは不幸な者になります。また、私一人だけの王となることが出来ませんから、やはり、みんながお父さんを知らない方がいい……」などと言ったことがあります。

読んでくださってありがとうございます。yui


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