ICT総研

The Research & Investment Company. ICT市場の調査分析・投資 by ICT総研

クラウドコンピューティングの戦略的活用法

2008年08月12日 | Weblog
クラウドコンピューティングを利用することで、ユーザーはどのようなメリットを受けることができるのだろうか。

従来のオンプレミス型(自社運用型)では、システムを構築する場合、サーバー、ストレージ、ソフトウェアなどを購入し、インテグレーションするのが一般的であった。サイジングでは、ピークを考慮し、余裕をみるためオーバースペックで構成することが多い。スペックも細かく決定していかなければならない。システムが使えるようになるまで、数週間程度かかった。

一方、クラウドコンピューティングでは、オンプレミス型の購買プロセスは必要ない。ベンダーのクラウドコンピューティングサービスのインタフェースから、使いたい条件を指定する。ベンダーが推奨するコンピューティングリソースがデフォルトで入っていて、例えば、ユーザーはメモリをもっと大容量にしたいなどと指定すればよい。まる1日はかからない勘定である。オーバーサイジングになることは少ないし、すぐ調整できる。クラウドコンピューティングでは、低コストでスピーディにコンピューティングリソースにアクセスできる。また、コンピューティングリソースの廃棄も容易だ。契約を中止するだけでよい。

クラウドコンピューティングでは、IT資産で差別化することは難しくなる。いかにITを活用できるかに重点がシフトする。なお、似たような概念にSaaSがあるが、クラウドコンピューティングは、SaaSを包含する概念だ。

一方で、IT資産が競争の源泉であると考える企業は、クラウドコンピューティングに資産を移さないだろう。ただし、コアIT資産は自社でやり、ノンコアIT資産はクラウドコンピューティングを活用することは1つの有力な方法だ。

結局、オンプレミス型とクラウドコンピューティングをうまくバランスさせた企業が、より高いITROI(IT投資対効果)を得る。

多額の投資をして、より速いコンピューターを購入し、自社の業務に合致するようガチガチにカスタマイズされたシステムを保有すればよいという従来のような考えでは、競争優位は維持できない。

そういう時代は終わりをつげようとしている。

Open Source Divide: オープンソースデバイド

2008年08月05日 | Weblog
オープンソース(OSS)の利用が拡大している。ほとんどのシステムに何らかの形でOSSが使用されているとの主張もある。一方で、1つのシステムをモデルケースとして考えると、OSSの使用率はまだまだ低く、商用(クローズドソース)がメインであろう。

そういう意味で、OSSはまだまだだともいえる。ベンダーやSIerは、OSSよりもクローズドソースで提案することを好む。クローズドソースに精通していて、構築実績も豊富だからである。

OSSを利用するとはどういうことなのだろうか。OSSを利用するということは、想定以上に大変なことであることは確かだ。OSSの入手先、ライセンス体系、どういうコミュニティが運営しているかなどのリサーチをしっかりと行なわなければならない。Googleは、著作権問題の対応のため、社内弁護士が200人いる。膨大な量のOSSを管理するとなれば、相当な負荷を覚悟しなければならない。

また、OSSに対する修正などは、コミュニティにフィードバックしていく必要がある。裏返していえば、これらをハンドルできるベンダーにとっては、OSSほどいいものはないということになる。テクノロジースキル次第で、最高のものをつくれる。

OSSの塊といえるGoogleのある担当者は、「オープンソースはできすぎであり、魔法に違いない」といっている。テクノロジーカンパニーならではの言だろう。このようにいうことができるベンダー、SIer、ユーザー企業がどれほどいるのだろうか。