先週の記事の問い、「今の仕事、10年後、20年後にありますか?」について調べてみた。
週刊現代に「消える職業」「なくなる仕事」の記事があり、冒頭で、バーテンダーの仕事を取り上げている。この仕事がコンピューターに代わられる確率は77%—。そんな大胆予測を披露したオックスフォード大学・オズボーン氏の論文が全世界で話題に。先週取り上げた「リスキリング」関連のセミナーや記事でも頻繁に参照されている。
でも、何故、週刊現代はバーテンダーの例を冒頭で述べたのか。そもそも希少な職業である。バーテンダーがいる店に行く人は、店の雰囲気とバーテンダーとのちょっとした会話を楽しみにしているのである。バーテンダーがロボットに置き換わって喜ぶ人は一人もいない。また、ロボットに置き換えてコスト低減を考える経営者がいるであろうか。もしかして、カクテルの混合比の誤差を1000分の1パーセントに抑えようとしているのだろうか。あるいは、論文が書かれた英国では別の事情があるのかもしれない。
という訳で、論文や記事をうのみにせず、しかし、参考にしながら、どのような職業がなくなるのか、吟味していく。
表は、オズボーン氏の論文『雇用の未来』の中で、コンピューターに代わられる確率の高い仕事として挙げられたもの。
今一つ、ピンとこない。一番、インパクトを受ける(人口の多い)仕事はどれだろう。
オズボーン氏は、以下のように予測している。
「コンピューターの技術革新がすさまじい勢いで進む中で、これまで人間にしかできないと思われていた仕事がロボットなどの機械に代わられようとしています。
たとえば、『Google Car』に代表されるような無人で走る自動運転車は、これから世界中に行き渡ります。そうなれば、タクシーやトラックの運転手は仕事を失うのです。
これはほんの一例で、機械によって代わられる人間の仕事は非常に多岐にわたります。私は、米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析しました。
その結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至ったのです」
ここにでてきた自動運転車について考えてみよう。環境への配慮(必要な電気をどう得るか、という問題はのこる)という観点から電気自動車は、今後、導入され、かつ、ネットに繋がり、無人タクシーや無人配送トラックが活躍する場面は容易に想像できる。電気自動車の究極の目的は、自動運転。
実際、テスラは自宅のガレージから玄関先まで無人で移動してくるなどの機能は備わっており、高速道路での運転など無人運転も条件付きで可能だ。
しかし、一般道ではどうであろう。次のような場合、自動運転車はどう判断するのか。
「走行中に自転車に乗った人が左から飛び出してきた。急ブレーキをかけても間に合わないタイミングだ。右にハンドルを切るとがけ下に落ちてしまい、最悪の場合、乗客が死亡する。乗客の命を考えて、自転車と衝突することも辞さないのか。」
これに似たような倫理的な問題は様々考えられる。
このようなことを考えると、道路が自動運転用に整備されない限り、自動運転車の用途は限定的。例えば、高速道路のみ。物流センターを高速道路の出入口付近につくり高速道路を使った輸送、特に長距離輸送に自動運転車を採用。同じようなことは、高速バスでも考えられる。
国土交通省の統計によると、運輸業界で働く約330万人のうち物流業界で働く人は約254万人で、全産業就業者数(約6566万人)の約4%に相当。
物流業界の7割以上を占めるのがトラック運送業に従事する労働者(事務職を含む)は約191万人。この191万人のうち、トラックドライバーが該当する『輸送・機械運転従事者』は約83万人程度(日本トラック協会データより)。
影響を受けるのは、さらにこの中の高速道路を使った輸送に従事する者ということになる。過酷な労働環境であることから人手不足が慢性化しており、自動運転化が企業に受け入れられる可能性は高い。特に、少子化が進み、若者が行きたがらない職種なので自動運転化のメリットは大きいと言える。
タクシーはどうか。ネットの予約システムとつながれば便利である。しかし、日本の道路事情を考慮すると無理である。
完全な自動運転化には、街づくりから考え、デザインし直す必要がある。
来週は、AIの影響についてまじめに、しかし、気楽に考えてみる。
週刊現代に「消える職業」「なくなる仕事」の記事があり、冒頭で、バーテンダーの仕事を取り上げている。この仕事がコンピューターに代わられる確率は77%—。そんな大胆予測を披露したオックスフォード大学・オズボーン氏の論文が全世界で話題に。先週取り上げた「リスキリング」関連のセミナーや記事でも頻繁に参照されている。
でも、何故、週刊現代はバーテンダーの例を冒頭で述べたのか。そもそも希少な職業である。バーテンダーがいる店に行く人は、店の雰囲気とバーテンダーとのちょっとした会話を楽しみにしているのである。バーテンダーがロボットに置き換わって喜ぶ人は一人もいない。また、ロボットに置き換えてコスト低減を考える経営者がいるであろうか。もしかして、カクテルの混合比の誤差を1000分の1パーセントに抑えようとしているのだろうか。あるいは、論文が書かれた英国では別の事情があるのかもしれない。
という訳で、論文や記事をうのみにせず、しかし、参考にしながら、どのような職業がなくなるのか、吟味していく。
表は、オズボーン氏の論文『雇用の未来』の中で、コンピューターに代わられる確率の高い仕事として挙げられたもの。
今一つ、ピンとこない。一番、インパクトを受ける(人口の多い)仕事はどれだろう。
オズボーン氏は、以下のように予測している。
「コンピューターの技術革新がすさまじい勢いで進む中で、これまで人間にしかできないと思われていた仕事がロボットなどの機械に代わられようとしています。
たとえば、『Google Car』に代表されるような無人で走る自動運転車は、これから世界中に行き渡ります。そうなれば、タクシーやトラックの運転手は仕事を失うのです。
これはほんの一例で、機械によって代わられる人間の仕事は非常に多岐にわたります。私は、米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析しました。
その結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至ったのです」
ここにでてきた自動運転車について考えてみよう。環境への配慮(必要な電気をどう得るか、という問題はのこる)という観点から電気自動車は、今後、導入され、かつ、ネットに繋がり、無人タクシーや無人配送トラックが活躍する場面は容易に想像できる。電気自動車の究極の目的は、自動運転。
実際、テスラは自宅のガレージから玄関先まで無人で移動してくるなどの機能は備わっており、高速道路での運転など無人運転も条件付きで可能だ。
しかし、一般道ではどうであろう。次のような場合、自動運転車はどう判断するのか。
「走行中に自転車に乗った人が左から飛び出してきた。急ブレーキをかけても間に合わないタイミングだ。右にハンドルを切るとがけ下に落ちてしまい、最悪の場合、乗客が死亡する。乗客の命を考えて、自転車と衝突することも辞さないのか。」
これに似たような倫理的な問題は様々考えられる。
このようなことを考えると、道路が自動運転用に整備されない限り、自動運転車の用途は限定的。例えば、高速道路のみ。物流センターを高速道路の出入口付近につくり高速道路を使った輸送、特に長距離輸送に自動運転車を採用。同じようなことは、高速バスでも考えられる。
国土交通省の統計によると、運輸業界で働く約330万人のうち物流業界で働く人は約254万人で、全産業就業者数(約6566万人)の約4%に相当。
物流業界の7割以上を占めるのがトラック運送業に従事する労働者(事務職を含む)は約191万人。この191万人のうち、トラックドライバーが該当する『輸送・機械運転従事者』は約83万人程度(日本トラック協会データより)。
影響を受けるのは、さらにこの中の高速道路を使った輸送に従事する者ということになる。過酷な労働環境であることから人手不足が慢性化しており、自動運転化が企業に受け入れられる可能性は高い。特に、少子化が進み、若者が行きたがらない職種なので自動運転化のメリットは大きいと言える。
タクシーはどうか。ネットの予約システムとつながれば便利である。しかし、日本の道路事情を考慮すると無理である。
完全な自動運転化には、街づくりから考え、デザインし直す必要がある。
来週は、AIの影響についてまじめに、しかし、気楽に考えてみる。