人生は、刺しゅうを裏から眺めているようなものだと思う。
糸が交差し、もつれ合い、結び玉があり、混沌としている。
しかし、表に一幅の絵が織りなされるために、その絵の色彩がよく、精巧なものであるためには、それだけ、裏側は複雑でなければならないのだ。
美しい人生というのも、そんなものではないだろうか。
送っている間は、少しも美しいとは思えず、むしろ、まどい、疑い、苦しむことが多いものでしかない。
しかし、実は、それらがあってはじめて、その人しか織りなせない人生というユニークで美しい織ものは織られるのである。
:渡辺 和子 「愛をつかむ」
それでは、どうしたら刺しゅうを表から眺めることができるのか?
刺しゅうとはビジョンに他ならない。
ビジョンを共有できる者のみが、刺しゅうの表を眺めることができる。
刺しゅうの表を見なければ、いい刺しゅうはできない。