あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。
すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成の三つである。
これら三つの領域すべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐り、やがて死ぬ。
したがって、この三つの領域における貢献を、あらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。
(中略)
第二の領域として価値への取り組みが必要である。
組織は常に、明確な目的をもたなければならない。
さもなければ、混乱し、麻痺し、破壊される。
価値に対する取り組みは、技術面でリーダーシップを獲得することである場合もあるし、シアーズ・ローバックのように、アメリカの一般家庭のために、もっとも安く、もっとも品質のよい財やサービスを見つけ出すことである場合もある。
もちろん価値への取り組みもまた、成果と同じように、明白とは限らない。
長年の間、アメリカ農務省は、根本的に相容れない二つの価値観に身を裂かれてきた。
その一つが農業の生産性の向上であり、もう一つが国のバックボーンとしての家族的農場の維持だった。
前者の価値観の目指すものは、高度に機械化された大規模事業としての産業的農業だった。
後者の目指すものは、保護された非生産的な農民による郷愁的な農村だった。
少なくともごく最近まで、アメリカの農政はこれら二つの価値への取り組みの間で揺れ動いてきた。
その結果残ったものは膨大な支出だけだった。
:「経営者の条件 第3章 どのような貢献ができるか」
直接の成果でさえ明白ではない、価値への取り組みも明白とは限らない。
加えて、企業においては人材育成についても人材選別になりがちである。
直接の成果、人材育成と比較すると価値への取り組みは重きを置かれない傾向がある。
価値への取り組みを意識することで、直接の成果、人材育成がうまくいっているかを考える機会としたい。
ドラッカーは価値への取組みを目的と位置づけている。