白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

今月の情報会員解説

2018年05月25日 23時48分17秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は毎月恒例、日本棋院情報会員のPRを行います。
ニュースが多かったり、私が仕事に追われていると遅れがちです。

なお、過去の記事はこちらです。↓
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回
第21回 第22回 第23回 第24回

今月は、
2018年2月7日 賀歳杯決勝 柯潔九段-朴廷桓九段
2018年3月24日 囲碁電王戦FINAL ミ昱廷九段-DeepZenGo
の2局を解説しました。
ここではミ九段-DeepZenGo戦の解説の一部をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
Kiin Editor」キャプチャー画面です。
この場面から・・・。





2図(実戦進行)
このように進みました。
短い手数ですが、解説をご覧頂けば、一手一手にちゃんと意味があることをご理解頂けるでしょう。





3図(実戦)
黒1「ここでツケとは!
AlphaGoの影響で、この類の手が打たれることが随分増えました。
従来の感覚からすれば、黒AやBなどが自然で、わざわざ狭い左辺に入ろうとは思いません。」


AIの打つ手が、人間の対局にもどんどん取り入れられる時代になりました。
しかし、ただ手順だけを真似しても役には立ちません。
意味や目的を理解して、はじめて使いこなせます。





4図(参考図)
「簡単に言えば、黒1と入るのでは黒5までしか開けずに窮屈なので、実戦のツケはスペースを作りにいったということです。」

図は一例ですが、左辺に入るならばこちらの方が人間的ですね。
このような図は黒が良くないということで、左辺に入らないという考え方も自然に思えます。
しかし、ミ九段はAIの打ち方を利用すれば、入っても大丈夫と判断しました。





5図(実戦)
白1「広い方を目指すため、引いて受けました。」

形として自然な手は他にもあります。
その中でこの手を鰓んだことには、もちろん意味があります。





6図(参考図)
「白1には黒2と下辺に向かう予定でしょう。
黒8までとなると、黒の構えも立派です。」


実戦とは全く違った構図になりますね。
石の方向選択は大切です。





7図(実戦)
「こう下がる手は一見鈍重な感じで、普通の棋士には気が付き難いです。」

できれば黒Aと押さえて隅で根拠を作りたいのですが、それは無理です。
ちなみに、解説棋譜にAの記号は不要ですが、間違いで入れてしまいました。
本の執筆と同じで、後から思わぬミスに気が付くことがあります。





8図(参考図)
「黒1と押さえるのは、白2と切られて後が続きません。」

直前に白が伸びた手は、黒1が成立しないことも見越しているのです。





9図(実戦)
白1「根拠の要点を打たれ、黒2子が弱くなってつらいように感じます。」
黒2「ただ、実はこの黒はさほど弱くない、ということでしょう。
AIの碁を見ていると、棋士の感覚とはかけ離れた打ち方が沢山出てきます。」
白3「黒Aの打ち込みが厳しいので、守りました。
黒はこの守りを打たせるために左辺に入ったようなものです。」
黒4「ここに回れば、確かに黒はそう攻められる姿ではありません。」


こうなってみると、テーマ図からの手順に無理のないことが分りますし、出来上がり図も4図に比べると黒が楽ですね。
また、白3と守らせたのは気分が良いですが、もし白が守らないとどうなるでしょうか?
それは次の参考図で解説しています。





10図(参考図)
「白1も形の急所ですが、黒2の打ち込みが厳しいです。
黒8までと渡られると、白は根拠が無くなってしまいます。」


こうなってはたまらないので、白が守った手は必要でした。


いかがでしたか?
このような形で、序盤から終盤まで丁寧に解説しています。
ご興味をお持ちになった方は、ぜひ日本棋院情報会員にご入会ください!

呉清源杯

2018年04月30日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は10名のお客様にお越し頂きました。
ありがとうございました。
明日は宇宙棋院の級位者教室で講座と指導碁を行い、その後は五反田で2周年イベントの2日目を行います。
今週は対局もあってハードスケジュールですが、体に気を付けて乗り切りたいと思います。

さて、現在呉清源杯という棋戦が行われています。
女流棋士の国際棋戦ですね。
国内外ともに棋戦が多く、女流棋士が勉強に専念できる環境は整っています。
実力アップの大きな要因でしょう。

結果は、残念ながら日本棋士はベスト4に残れませんでした。
今回は上野愛咲美二段とゼイ廼偉九段の対局をご紹介しましょう。
ゼイ九段は中国出身ですが、政治的な理由で長期間に渡って韓国の棋戦に出場していました。
その間に、国主戦という一般棋戦で曺薫鉉九段を破って優勝!
真の意味で「男性棋士と対等に戦える女流棋士」の先駆けですね。



1図(テーマ図)
上野二段の黒番です。
白×の集団をどう評価しますか?
これを強い石、厚みと思っては上野愛咲美にはなれません。
あれ、この流れはどこかで・・・。





2図(実戦)
上野二段、黒1から左右を分断!
どちらかの白をとっちめてやるぞという、強い意思を感じますね。
周囲の黒石にもかなりの負担がかかりますが、臆せずやっていきました。





3図(実戦)
案の定、中央の黒×がピンチになりました。
しかし、これは囮です。
上野二段の狙いは・・・。





4図(実戦)
白×の殲滅!
上野二段は筋が良いタイプで、あまりゴリゴリやっていくイメージはありません。
しかし、石を取りにいくことはかなり多い気がします。
淡々と相手の急所を衝いていく姿は、死神のよう・・・などと言ったら怒られるでしょうか。
本局も見事に仕留めて勝ちを決めました。
準々決勝も力強く戦っていましたが、残念でしたね。

なお、呉清源杯の対局は幽玄の間で中継されています。
ぜひご覧ください。

2周年詳細&幽玄の間中継対局

2018年04月26日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
五反田の白石囲碁教室、2周年イベントの詳細が決まりました。

①内容
普段通り、最大3面打ちの指導碁+局後のアドバイスを行います。
対局後は棋譜や参考図をお渡しします。

②指導碁時間割
4/30(月)
第1回 10:00~11:30
第2回 12:30~14:00
第3回 14:10~15:40
第4回 15:50~17:20
第5回 17:30~19:00
第6回 19:10~20:40

5/1(火)
第1回 14:10~15:40
第2回 15:50~17:20
第3回 17:30~19:00
第4回 19:10~20:40

5/2(水)
第1回 10:00~11:30
第2回 12:30~14:00
第3回 17:40~19:10

5/5(土)
第1回 10:00~11:30
第2回 12:00~13:30

5/6(日)
第1回 10:00~11:30
第2回 12:30~14:00
第3回 14:10~15:40
第4回 15:50~17:20
第5回 17:30~19:00
第6回 19:10~20:40

なるべくメール、電話でのご予約をお願いいたします(当日でも大丈夫です)。

③皆様へのお願い
料金(2000円)は当日、現金での先払いとなります。
また、以下の項目のご記入をお願いいたします。
〇お名前
〇お住まいの地域(例・東京都品川区)
〇棋力(任意)
〇囲碁歴(任意)

初めてお越し頂く方も、そうでない方も大歓迎です。
皆様のお越しをお待ちしております!



さて、宣伝はこのぐらいにしておきましょう。
木曜日は日本棋院棋士の対局日です。
幽玄の間でも多くの対局が中継されました。
その中でも私の目を引いた場面は、棋聖戦Cリーグ、鈴木伸二七段(黒)と伊田篤史八段の対局に現れました。



1図(テーマ図)
黒1の打ち込みから、黒7までと進みました。
基本的な進行です。





2図(変化図)
前図の後は白1と伸びれば自然で、黒2となります。
ここまでは定石と言って良いでしょう。

ただ、黒に価値の高い上辺であっさり治まられた上、白にはAの切りという弱点が残ります。
この局面では白が不満の分かれでしょう。
伊田八段、今日はずいぶんおとなしいなと思っていたら・・・。





3図(実戦)
白1と、凄い手を繰り出しました!
何故凄いかと言いますと・・・。





4図(実戦)
黒1、3と、左右の白のど真ん中を突き抜かれてしまうからです。
典型的な裂かれ形ですね。
しかし、形はどうあれ黒に楽な治まり形を許さず、隙あらば取りにいくぞと脅しているのです。
この迫力はいかにも伊田八段ですね。

白はこの後も凄い手を連発して、強引に自分のペースに引きずり込んでいきました。
伊田八段は最近結婚しましたが、碁は落ち着く気が無さそうですね(笑)。

神ギ問放映&グロービス杯2日目

2018年04月21日 21時59分36秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日、「さまぁ〜ずの神ギ問」の放映がありました。
私は見られませんでしたが・・・調べてみたところ、ここの見逃し無料というところで見られるようになるのでしょうか?
今は前回分の放送が配信されているようですね。

今回は最初に藤沢里菜女流三冠が登場したようです。
ちゃんと華のある棋士を出してくれて一安心です。
そこを一番心配していましたからね(笑)。

私の方は・・・どうだったのでしょうね?
皆様に楽しんで頂けたなら幸いです。


さて、本日はグロービス杯の2日目が行われました。
グロービス杯は第1回で日本代表がワンツーフィニッシュを決めた棋戦ですが、今回は誰も準決勝に残れず、残念な結果に終わりました。
一般の世界戦で優勝が狙えるレベルの棋士も参加しているとは言え、もうちょっと結果が欲しかったですね。

それでは、今回は日本勢で唯一決勝トーナメントに進出した、藤沢女流三冠の対局をご紹介しましょう。
相手は中国の天才棋士、謝科五段です。



1図(実戦)
藤沢女流三冠の黒番です。
白1、3のシチョウ当たりから、白5と逃げ出しました!
先に損をするのでリスクの高い打ち方ですが、構わずやっていくところは謝五段らしいですね。





2図(実戦)
左下は白△と白×が真っ二つに切られていて、典型的な裂かれ形です。
プロが初心者並の手を打ったと言えば、どれだけ酷いかご理解頂けるでしょうか?

一方、右上も黒△の命が危なくなり、これももちろん酷いことです。
白の謝五段は「自分も酷いけど、相手はもっと酷いでしょ?」と言っているわけです。
碁では「あなたにも良いものをあげるけど、自分も良いものを貰いますよ」という平和主義の打ち方も多く見られますが、謝五段の打ち方は非常に攻撃的ですね。





3図(実戦)
結果的には、黒は逆に白×を取って凌ぎました。
その代償として右下方面で損をしましたが、黒×も救出の余地が残っていますし、黒が上手くやったように見えます。

問題は黒△の処遇の判断です。
かなり弱く見えるので、私ならまず捨てることから考えてしまいそうですが・・・。





4図(実戦)
黒1から、堂々と担ぎ出しました!
危険もあるように見えますが、藤沢女流三冠はこういう空中戦での凌ぎが上手い印象があります。
私も酷い目に遭わされた経験が・・・。

結果、見事に凌ぎ切って勝ちを決めました。
決勝トーナメントでは韓国囲碁界ナンバー2の申真ソ八段に敗れましたが、今回は非常に良い経験ができましたね。

AI流?

2018年04月17日 23時57分17秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継されていた、楊鼎新六段(黒)と謝爾豪九段の対局で印象に残った場面をご紹介します。



1図(実戦)
白1と肩を衝きました。
AIの多用する手ですが、黒2と反撃されるとどうでしょうか?
次に白Aと押さえ込んでいく戦いは、白が苦しそうですが・・・。





2図(実戦)
と思っていたら、白1、3と転戦しました。
これ自体もAIの好む打ち方ですし、右上を続けて打たなかったことにもAIの影響を感じます。
根底にどんな理屈があるのか、プロである私にもにわかには分からない打ち回しです・・・。
しかし、実際には深く研究されているのでしょうね。
トッププロは碁をこんなにも難しく打たなければならないのかと、驚いてしまいます。