今日の一貫

日経 中外時評 何よりも急げ農業改革

9月2日
日経新聞朝刊。
日経新聞にもこんな事を考える人がいたんだーと感心。平田育夫さん。
論説委員長だという。
中外時評 「何よりも急げ農業改革 製造業の世界展開に道を」がそれ。
ただこれ31日の社説「FTAと農業改革の連動を(社説)」の継続かも。
内容は、
①成長戦略として当面大事にすべきは、製造業。
②その海外展開のために、FTA・EPAが欠かせない。
③鍵を握るのは農産物の市場開放。
④民主党・政府、両方とも農業政策に難点がある。
⑤ある程度の金を使って農産物の関税を早く下げられるような措置を考えた方がいい。
⑥大規模農家の支払い地代を政府が補助するのも良い。足かせの制度ははずす。コメの生産調整はやめる。1770億円。農業土木も減らす。農協も見直す。
⑦EPAは兼業農家の為にもなっている。

この論旨、まさにそのとおりと思う。
2-3%の成長があり、世界では5%の成長があり、金融界や中央では成長を実感できるのに地方では感じられないと言う。
たしかに有効求人倍率は、東北は1を下回っている。
0.5という県もある。
やはり産業がないのだ。
農家はもう農業所得にほとんど依存していない。農業所得は14%。6割は兼業所得。のこりが年金被贈。

農村を豊にするには、地域雇用がどうしても必要。
それを農業振興でと考えても良いのだが、裾野の広がりにおいて現実的でではない。

しかし産業や基盤技術の集積が地方に見られない。そのことが景気回復を実感できない理由か?
特に、自動車や家電等裾野の広い製造業の国内展開はこれからの地方経済活性化には必須になる。
(これを農工両全として60年代後半から70年代にかけて農地をつぶしてアルプス電気を誘致したのが、宮城県三本木町(現大崎市)町長だった今野元次郎さん。農業者からの反対もあったが、そのおかげでいまでは車載電装の世界企業に成長、周辺にも小さいながら製造業集積が見られ、市民の購買力も高く、大型店の出店が活発となっている)


そこで、次の課題が生じることになる。

もし、これらに国際競争力がなくなったらどうなるか?という点である。
国内工場の海外へ移転が活発化する可能性もある。
そうならないようには製造業の競争力強化が必要。
これまで「円安誘導」などの「為替政策」やゼロ・低金利などの「金融政策」でどうにかやってきたが、ここで「貿易上の課題」が浮上している。
特に韓国や中国の厚生にどう対応するかで、日本は遅れを取り始めた。
特にチリでの日本家電の置いてけぼりは激しい。ブラジルでもそうだ。

競争力を強化するには早期FTA・EPA締結がどうしても必要になってきている。また余談だが、エネルギー政策にとっても重要になる。

こうした状況が地域経済や貿易製造業を取り巻く状況だろう。

つまり、EPAは地域格差是正、地域雇用力の向上、有効求人倍率の向上には是非とも必要な政策となって来ている、と私は認識している。

そのためには、農業の改革が必要、、ということになるが、、、。
農業改革、特に、貿易政策でのわが国の対応は、正直、問題が多い。
WTO交渉では既にわが国は蚊帳の外になっている、、、様な気がする。

平田さん、政府の政策の問題点として、農地の集約・生産性の向上には膨大な年数がかかることを課題としてあげている。
将にその通り、、農水省系の学者もこの点のんびりしすぎている。
農水省なかなか、平田流のこのような意見をきこうとはしない。
今日明日の問題なのに。
生産調整はこれまで手順を積んで作ってきた政策なので、今更それははずせない、という。自民党の成長で問題になる、、とも。

政府の政策の課題は、もう一点ある。
コメが対象になってないことだ。これでは画龍点睛を欠くどころではない。魂のない品目横断政策なのだ。
転作作物での集団化ばかり考えてもしょうがないのだ。
やはりコメ、778%という変な数字にごまかされない対応が必要。

まーこうした、「全ての人が良くなる政策を考えよ」といったスタンスの記事は今後もっともっと出てくるべきだろう。
政策を考える人はどこかの業界に引っかかったり、突破口を間違えたリしがちだからだ。



以下本日の日経より
何よりも急げ農業改革―製造業の世界展開に道を(中外時評)2007/09/02, 日本経済新聞 朝刊, 28ページ,  , 1692文字


 安倍改造内閣は民主党の攻勢に備えた「防衛型」の印象が強い。年金、テロ特措法の延長など争点が多いなかで手堅い人事に徹したのは分かる。だが、攻撃は最大の防御ともいう。経済面での「攻撃」は成長の促進とそれを通じた貧困解消だろう。それをどの程度重視しているのか、閣僚人事からは見えない。 安倍政権は成長戦略としてサービス業の生産性向上、金融・資本市場の育成などを総花的に掲げる。しかし、重要な分野に政策資源を集中投入しないと、大きなことはできない。
 その観点から、大事にすべきは製造業だ。英国のように金融業で大勢が食べられるようになるのは何十年も先の話。当分は製造業が大黒柱だ。それでも国内市場は人口減で伸びない。海外で製品の販売を増やすのが新たな成長への突破口になる。
 その製造業の海外展開のためには通商自由化、特に世界的な競争になっている自由貿易協定(FTA)とそれを軸にした経済連携協定(EPA)が欠かせない。EPA成功のカギを握るのは農産物の市場開放。
 このように考えてくれば「農業改革なくして大きな成長なし」と言っても過言ではない。成長の次の扉を開くため、最も急ぐべきは農業改革ではないか。
 とりわけ、韓国が米国とのFTAで合意し、欧州連合(EU)ともやがて合意しそうなのは脅威だ。EUの関税は乗用車が一〇%、薄型テレビは一四%。これが韓国製にはゼロとなれば日本のメーカーは極めて不利になる。工場を欧州に移せば、地域経済をさらに疲弊させる。
 いま交渉中のオーストラリアや、米国、EUは農業地帯だから、そことEPAを結ぶには農産物市場を開く必要がある。改革は待ったなしなのである。
 農業改革に関しては、民主党が小さな農家も対象に市場価格と生産費との差額を補てんする戸別所得補償の構想を打ち上げ参院選で大勝した。農業の生産性向上にはつながらない、ばらまき的な案だが、政府・与党の政策にも難がある。
 今春から政府が始めた新補助金制度は、四ヘクタール以上(北海道は十ヘクタール以上)の農家に補助金を直接支払う。そうした農家は、耕地が狭くて補助金をもらえない農家から土地を借りて地代を払う。そうして耕地が集約され、生産性が高まるから、いずれ関税も下げやすくなるはず――という計算である。
 問題なのは、耕地が集約されて関税を下げられるまで膨大な年数がかかり、一年、二年を争うEPAに間に合わないこと。日本の平均耕地面積は一・八ヘクタールで、独仏の四十ヘクタール台まで達するには恐らく何十年もかかる。
 しかも小規模農家には「土地を貸しても納得できるほどの地代を得られまい」という不安があるから、土地の集約は順調には進まないようだ。
 ここは発想を転換して、EPA早期締結のために、ある程度のカネを使って農産物の関税を早く下げられるような措置を考えたほうがよい。もちろん四〇%を切った食料自給率の維持・向上は大切なので、土地を集約し農業の生産性を高めるという原則は崩せない。その原則の下で例えば、大規模農家に農地を貸す農家に対しても、政府が地代に上乗せして補助金を支払い、土地所有者が納得できる収入を保証するのも一案だろう。
 そして、高い関税率をコメ(いまは七七八%)を含めて段階的に撤廃できるようにする。
 そのためにも足かせになっている制度は外していく。例えばコメの生産調整はやめる。それに伴う費用千七百七十億円を削れる。予算上の制約を弱めるには、農業土木を国と地方双方で大きく減らすことも必要だ。
 また、本格的に農業を営みたい株式会社などが優良な農地を確保できるようにする。農産物の販売や農機具の調達などで何かと農家に絡み利益を得ている農協の見直しも必要だろう。
 EPAについて「製造業のために農業を犠牲にするな」と反発する農業関係者が多い。それは必ずしも正しくない。農家の七六%を占める兼業農家の人は工場などに勤務している。EPA交渉が不調に終わり、日本のメーカーが工場を海外に移せば困るのは兼業農家ではないか。 「兼業農家のためのEPA」という側面もあることを農家も政府も忘れないでほしい。
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