因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『Death of a Samurai』

2005-09-26 | 舞台

*Alice Festival 2005より Afro13公演 佐々木智広作・演出
 久々のタイニイアリス。そしてAfro13初体験。


 昨年のイギリスはエジンバラ演劇祭で五つ星を取った作品の凱旋公演とのこと。物語はシンプル。近未来に木の股から生まれた木ノ子という少女がいる。彼女がキスをすると、その相手は不老不死になるが木ノ子自身は死んでしまう。木ノ子の不老不死の力を狙う刺客たちと彼女を守ろうとする育ての親田吾作などが繰り広げる活劇、というのだろうか。
 まず感じたのは、台詞がとても少ないということだ。激しい音楽に乗ってダンスやアクションが続く。登場人物の衣装はなかなか手が込んでいて素敵であるし、俳優のからだの切れは相当なものである。立ち回りに効果音(ぐさっ、ぐきっ)が入るところは新感線を彷彿とさせるが、小道具(ハートに刺さった矢や傘、仮面)の使い方も巧みで見飽きることがなかった。 
 一度は木ノ子を捕えて、その不老不死の力を我がものにしようとした刺客斬人が、木ノ子の優しさに触れて心が変化していく。登場人物がすべて死んでしまったあとに自分だけが生き残ってしまった悲しみの様子など、短い物語なのに語られていることは多い。単純な話と言ってしまえばその通りであるが、余計な枝葉をつけずに一気に描いてしまうところがよかったと思う。映像をまったく使わず、舞台装置もなく!クライマックスに「木綿のハンカチーフ」が流れるところもなぜかぴったり合っており、終演後もずっと耳を離れないほどであった。
  ただ気になったのは上演前の「前ふり」「前説」である。今回出演のない俳優さん?たちが登場し、携帯電話の電源を切る等の注意事項はじめいろいろとお話をしてくれるのに続いて俳優が登場、さあ本編が始まったかと思ったらこれも前ふりだと言う。好みの問題ではあるだろうが、上演前の注意事項にプラスアルファの何かをするのであれば、余程神経を使わないと観客の興をそぐのではないか。同じことがお芝居が終わったあとの長いカーテンコールでも言える。大千秋楽に満員の観客、俳優さんたちはほんとうに嬉しそうだった。しかしその挨拶もろもろをあまり長くされると、高揚した気分もだんだん萎えてしまうのである。肝心なのはあくまで舞台本編、その前後はすっきりと気持ちよく、が願いである。
 

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