回文
~累進
小生意気 大きい眼
(こなまいき おおきいまなこ)
見知る国 詩と死に苦しみ
(みしるくに しとしにくるしみ)
餓死など 宿無しが
(がしなど やどなしが)
累進税か 改善強いる
(るいしんぜいか かいぜんしいる)
(終)
回文
~累進
小生意気 大きい眼
(こなまいき おおきいまなこ)
見知る国 詩と死に苦しみ
(みしるくに しとしにくるしみ)
餓死など 宿無しが
(がしなど やどなしが)
累進税か 改善強いる
(るいしんぜいか かいぜんしいる)
(終)
腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE14 忘れられた炎の物語)
水曜日の午下がり、あるいは木曜日の遅い朝、あなたは手紙を受け取った。「彼が旅に出た」と、あの子は書いていた。
あなたは彼を知っていた。彼もあなたを知っていた。あの子と三人で、一度だけ、食事をした。何年前か、一度だけ。
テーブルの上から皿が消え、コーヒーが出てくる前、あの子は化粧直しのために消えた。あなたは向かいの席の彼の目を見ずに、「さようなら」と言った。
彼は、あの子の背中が遠ざかるのを確かめてから、テーブル・クロスに向って頷いた。
「うん」
周囲のざわめきが消えた。
「さようなら」
指を組み換えながら、彼は顔を上げた。
ざわめきが戻ってきた。
あの子が戻っていた。コーヒーが三つ出ていた。その縁に紅の跡が残るのを想像し、あの子は笑いを堪えた。
あなたの席に、あなたはいなかった。
あなたは、あの街路樹の下にいた。マッチ棒が折れた。次の棒の先では、小さな火花が弾けて消えた。
道路の反対側に戦車が一台停まっていた。雲間から月光が漏れた。戦車は生き物のように眠っていた。
三本目の炎は、あなたの息が消した。
肌の透けて見える手袋の指の間から、細い紙巻がするりと落ちた。
あなたは笑いましたか。
泣きましたか。
……踊りましたか。
(続)
腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE13 忘れられた炎)
歌に合わせてあなたは踊る。そして、音を導く。
空き缶にたくさんのGが投げ入れられる。
歌は終わる。いつの間にか、終る。
余韻。
御辞儀。そして、一回転半。
向き合うと、偽廃兵は、お礼に物語を聞かせてくれる。伴奏付き。
「忘れられた炎? それは君だろう。いや、答えなくていい。兄貴が家を飛び出したのも、地下迷路をさまよったのも、異星人から指鉄砲を借りたのも、君のためだろう。大海原に乗り出したのも、きっと、そうさ。草木は眠るのに、兄貴は眠らなかった。君がいつ通りかかるか、わからないから」
円盤が音もなく接近する。
「あるいは」白濁していない方の目を細める。「君が探しているのか、兄貴を」
あなたは、この物語を最後まで聞きますか。あるいは、この物語に潜り込みますか。
(終)
モロシになりそう
~メモのメモ
ついさっき、メモをした。
そのメモの置き場所を忘れた。
そのメモの置き場所を、別の紙にメモして置けばよかったか。
メモの内容は覚えている。
だから、メモした紙は要らない。
内容を忘れた頃、
紙が出てくるのかもしれない。
どっちも出てこないで、
メモしたということだけ、覚えていたら、
苦しかろう。
その場合、何もかも忘れたらいいのさ。
でも、どうやったら忘れられる?
(終)