建設通信新聞2018.02.06より
群馬県は、35歳以下の県技術職員の現場管理能力を向上させるため、「視える化工程表」の取り組みを始める。技術職員1人当たり年1工事で試行する。1日付でガイドラインなどを県内各土木事務所などに通知した。実際の工事で若手職員を育成する取り組みで、全国的にも珍しいケースとみられる。
「視える化工程表」では、まず受発注者で工事の目的や成果物、成功基準、リスクなどを共有するための「目標すりあわせシート」を作成する。次に受発注者で適正な作業日数と予備日数を確保した「視える化(CCPM)工程表」を作成。ガイドラインでは、作業内容の洗い出しからリスクを想定した作業日数の決定方法、作業内容を検討した結果の工程見直し方法などを記載し、「むやみに作業日数や予備日数を削らない」「発注者の作業日数を必ず入れる」といった注意事項も盛り込んだ。
群馬県県土整備部といえば、2008年5月、まだどこの馬の骨ともわからぬわたしを(イヤ高知の馬の骨ということはわかってました)「ぐんまワンデーレスポンスフォーラム」の事例発表者&パネリストとして招いてくれたところだ。地方自治体としては静岡県に次いで2番目だった。(先見の明があったということですナ。イヤ、もちろん冗談です。ちなみにこれ以降も自治体が開く催しに招かれたことは片手に余るほどしかないんですケドね。)
『建設マネジメント技術』2008年9月号にその取組みの概要が掲載されているので興味がある方はのぞいてみてほしい。
http://kenmane.kensetsu-plaza.com/bookpdf/52/sgb_01.pdf
フォーラムに参加し何人かと意見交換をして、発注者サイドの熱意に感心感激したと同時に、受注者側の戸惑いのようなものを感じたのもたしかだった。どれどれ・・と当時のメモを探して見ると、「工程という、施工業者にとっていわば懐中の刀ともいうべきものに発注者側がコミットしすぎてしまうと、コチラとしては少々辛い」というような旨の記述があった。関係者に対してそれを口に出したのか出さなかったのか、今となっては定かでない。
10年前のことだ。今という時代、10年という歳月は、すっかり様変わりしてしまうのに充分な時間である。
このあいだ、ワンデーレスポンスにしても、そのツールとして登場した(建設業の)CCPMにしても、そしてその最終目標である「三方良しの公共事業」にしても、全国各地で様々な取り組みがあったはずだ。その過程で、成果をあげた人たち、失敗した人たち、はたまた、挫折した人たち、継続している人たち、わたしが見聞きしたものはその一部にすぎないのだろうと思うが、負の結果に終わった方が多いだろうことは想像に難くない。そんななか、わたし(たち)はしつこくつづけている。おかげさまで、いくばくかの成果もついてきた。
惰性に注意しながら継続する。これもまたCCPMの親玉たるTOCに教えてもらったことだ(「継続的改善の5ステップその5、惰性に注意しながら繰り返す。結局1~5のうち、「その5」しかアタマに入らなかったダメな生徒です)が、今となってはその有用性と重要性とが身にしみてわかる。つづけていれば「何とかなる」ものではないが、つづけなければ「何ともならない」ことだけはハッキリしている。そしてその「つづける」は、のんべんだらりと続けるだけでは「何にもならず」、少しずつ変化しながらつづけなければ「つづかない」。その文脈のなかでは、たとえ行き詰ったとしても立ち止まったとしても、いつかどこかでリスタートをしながら「つづけはじめる」こともまた「つづける」という形態のうちだ。いやむしろ、そっちのほうが渡る世間の現実的には的を射た表現なのだろうと思う。
群馬県の話に戻す。『建設マネジメント技術』2008年9月号では、その取り組みについてこう書いている。
「ぐんまワンデーレスポンスプロジェクト」 の4ステップ
「ぐんまワンデーレスポンスプロジェクト」は 一般的な“ワンデーレスポンス”とは若干違います。24時間以内に回答することだけではありませ ん。
具体的には,次の4ステップから構成されま す。
・ステップ1 「目標のすりあわせシート」を作成する―工事の目的・成果物・リスクを共有し ます。
・ステップ2 「視える化工程表」を作成するー別名、「段取り八分工程表」「サバ抜き工程表」「視える化工程表」を引きます。
・ステップ3 「24時間回答」を行うー工事進捗 中は24時間以内に回答するか、回答期限を伝えます。
・ステップ4 「マネジメント(「視える化工程 表」での進捗管理)」をするー「あと、何日ですか?」の工程管理により、工期の安全余裕(バッファー)の消費を管理し、安全余裕の消費量により対策を講じます。また、各ステップの共通することは、発注者と受注者、上司と部下が共同・共有しながら進めていく点です。
「視える化工程表」も「目標すりあわせシート」もこのなかにすでにある。「では10年経った今なぜ”技術職員1人当たり年1工事で試行”?」と、冒頭の記事を読めば疑問がわく人もいるだろう。だが、11年に渡り七転八倒を繰り返してきたわたしは、この記事をそうは読まない。「つづけはじめる」サイクルの一環だととる。そして、
「むやみに作業日数や予備日数を削らない」「発注者の作業日数を必ず入れる」といった注意事項も盛り込んだ。
ここにもリスタートもしくはリニューアルの意思が読み取れるような気がわたしはする。
倦むことなく飽きることなくつづけると言えば体裁はいいが、現実には倦むことも飽きることもある。「あきらめたらそこでゲームセットですよ」とはたしかに名言だ。局所的あるいは限られた時間内のゲームであれば、たしかにそのとおりだろう。だが、一度や二度あきらめたぐらいで渡る世間の試合は終了しない。させてはならない、という意思さえあれば終了しないのだ。
つづける。
つづけはじめる。
つづけはじめつづける。
その繰り返しのなかから群馬県の取り組みが大きな実を結ぶよう、南国土佐の高知より祈っている。
以上、一片の新聞記事から上州路に想いを馳せ、考えてみたことである。
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