「技術者室の模様替えで発掘されたもの」シリーズその3は「継続的改善の5ステップ」。これもまた、かつてわたしのデスクの背後にある壁に貼られていたものだ。
A3一枚大のその紙には、
継続的改善の5ステップ
1.制約条件をみつける
2.制約条件を徹底活用する
3.制約条件以外を制約条件に従わせる
4.制約条件を強化する
5.惰性に注意して”1”から繰り返す
制約条件に焦点を合わせ、集中して改善する
制約条件は制約条件を生かすために活用する
と書かれている。
今さらながらにながめてみると、これぞまさに「翻訳することなしに土着化なし」の典型のようなもので、原語のまんまでリリースしてしまっているため、何のことだかわからない。
とはいえ、当時これを提唱した当の本人たるわたし自身がほとんど理解できていなかったのだ。翻訳することはおろか、原語を直訳したもので説明することすらでき得なかったのは当然至極のこと。今となっては恥ずかしいかぎりだが、こうやって再び陽の目を見せることに自虐以外の価値がないわけではない。ただ今現在は、もいちど勉強し直してみるのもいいじゃないか、という程度の心持ちではあるが、それもまた「ぐるぐる循環する」試みの一環としては価値があることだと思う。
そういえば・・・
と、バックアップデータを格納しているHDDのなかにある「TOC-CCPM」というフォルダを覗いてみる。「Uさん宮内往復書簡」と名前をつけたフォルダがあった。このブログにも再々登場してきたUさんとのメールのやり取りを保存しているものだ。そのフォルダのなかを「探す」、というほどの手間もかからず、お目当てのファイルは見つかった。「制約条件」についてメールを交わしたのは、”2008.12.06”という名のWordファイルだった。
いかな晒しの世界に身を置くわたしとて、さすがに他人さまのメールをWebで晒すわけにはいかないので、わたしが書いた部分だけを抜粋のうえ記してみる。
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2008.12.06 Uさんとの往復書簡より
「制約条件」
U様
宮内です。ご教授ください。
夕張のセミナーの前に砂子組さんの現場事務所で、ゴールドラットの話を聞いたのですが、その中で彼が言った、
ボトルネックとコンストレイントを同じものとして捉えてはいけない。
ボトルネックはコンストレイントの一部である。
コンストレイントこそがクリティカルチェーンである。
ここで行われているのは、ただのガントチャートの管理であってCCPMではないのではないか。
コンストレイントの5ステップを活用しなければいけない。
という言葉を私なりに読み解こうとしていく中で、今後の弊社でのCCPMのやり方に対して色々な考えが出てきつつあります。
そこで、そのコンストレイントに関してです。物理的制約・方針制約・市場制約のうち、市場制約を我々の公共建設工事という仕事に置き換えることがどうしてもできません。我々の業界(あるいはもっと小さく、一つ一つの工事の方が良いかも)では、何がこれに当てはまるのでしょうか?
今更ながらの質問かもしれませんが。
(中略)
「Re.制約条件」
U様
言葉足らずでした。
大きな意味での市場制約は理解できます。Uさんの仰るとおりだと思います。
実は、私は今後弊社でCCPMを更に深めていくために、CCPMの運用の中でいわゆる「継続的改善の5ステップ」
1.制約条件をみつける
2.制約条件を徹底活用する
3.制約条件以外を制約条件に従わせる
4.制約条件を強化する
5.惰性に注意して1から繰り返す
を皆に身につけていかせたいと思っているのです。(私自身も)
そうしようとする時に、皆にそれを伝える為には、もっと平易な言葉で、身の回りで実感できるように話さなければなりません。個々の工事現場の実例として教えていかなければ、多分私以外の人に納得はしてもらえません。
そこで物理的制約と方針制約は、簡単に実例として挙げられるのですが、市場制約を個々の工事現場に当てはめると、と考えた時に、他の者を納得させられるような答えが見つからなかったので、ご教授を仰いだわけです。
常々、私は「継続的改善の文化」を礒部組に根付かせたいと思ってきました。そのことの実現なしには、今現在あがっている成果も、いずれは元の木阿弥になってしまう可能性があるからです。 その為には、皆が(表面的には)身体で覚えつつある、そして1週間に1度は必ず行う、CCPM工程を舞台とするのが、最も近道なのかな、と考えました。
それに何より、多分ゴールドラットの言うように、現在の私達のCCPMは詳細なガントチャートの努力成果、という側面が殆どなので、本質を理解するためには、まだまだ試行錯誤が必要なのだ、と思っています。
そして、その本質を皆が気付かないまま皮膚感覚で覚えこます、という作業をしていきたいと考えています。 その為には、私自身がまず本質を理解しなければならないので、そんなに簡単なことではないのですが。
(後略)
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「な~んだ、わかってたんじゃないかソコまでは」と苦笑いひとつ。
「で、継続的改善の文化は根づいたのか?」といわずもがなの自問をする。
それに対する自答は、近ごろほとんど常套句となった感がある言葉だ。
「ぐるぐる循環するのもアリじゃないか」
そして、
「答えになってない!」と別のわたしが斜め45度頭上から非難するのは知らん顔して、
「まわるまわるよ時代はまわる、やっぱりCCPMはおもしろい」とうそぶいてみる。
(とうでも思わなきゃ無能な自分と付き合ってはイケマセン、てのもありますがネ ^^;)
さて、誰も期待してないうちに始まった「技術者室の模様替えで発掘されたもの」シリーズ、誰からの反応もないので(ネタもないケド)これにて打ち止め。
どうでもいいけど前回前々回はコチラです ^^;
→『翻訳と土着』
→『CCPMをやると・・・』
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