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ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

蹄の管理ー蹄鉄が馬に及ぼす影響2

2019年08月14日 | 裸蹄管理

 蹄鉄が馬の身体的な面に及ぼす悪影響といえば、「蹄の構造・構成を変化させてしまう」点に尽きるのではないでしょうか。

 何回も恐縮ですが、野生馬の蹄底。

 

この形から読み取れるのは、蹄全体でバランスよく体重を受け止めていそう、ということ。かなり堅そうですね。

 で、家畜馬でよいとされている蹄底の形状がこちら。

野生馬の蹄と比較すると、蹄叉が大きく変化しています。これはおそらく、削蹄によって蹄底が平らになるので、それを補うために蹄叉が大きくなる。それで、蹄全体で体重を支える状況にできるようにしているんでしょう。

 ところが、蹄鉄を打つと、こんな蹄になってしまいます。

図にするとこんな感じ

となる。

 蹄叉が縮んで退化してしまう。これは、体重を支える部分が蹄壁に変更されたことを意味します。しかも、装蹄する際に、なぜか、必ず蹄叉を削り取っちゃうんですよ、装蹄師が。なぜでしょう?理由がよく分からない。

 蹄壁は元来、蹄内部の構造を保護するためのものであって、体重を支えるための構造体ではありません。それを、蹄鉄という強度がやたらある板を張り付けちゃうために、体重を支える重要な部分であるはずの蹄叉が役割をうまく果たせなくなり、蹄壁に体重を支えさせる状況になってしまうんです。これが馬に多発する足回り故障の原因です。

 蹄叉は、いわば天然のクロックスみたいなもので、絶妙なクッション構造でもって馬の脚にかかる負荷を軽減します。さらに、蹄叉は非常に滑りにくい。従って、馬が躓いた程度でバッタリ倒れるなんてことがないようにしてくれる。なのに、蹄鉄にかこつけて大事な構造体をおろそかにしてしまったから、骨折が増えてしまいました。蹄鉄は滑りますから。軽減しようとクランポンなんかくっつけるもんで、さらに蹄壁を傷める。また、蹄鉄から蹄壁へ、接地時の衝撃がダイレクトに伝わるようになってしまいました。すぐ故障したり体を傷めてしまうのは、そのせいです。色んなものを足して、結局裏目にしか出ない。意味がない。


蹄の管理ー蹄鉄が馬に及ぼす影響1

2019年08月14日 | 裸蹄管理

 蹄鉄の「道具としての不備」について書いてきましたが、馬にとっては実際どうなんでしょうか?

  馬は動物です。従って、香港の人達みたいにデモなどやってアピールなんてことはしませんし、できません。動物、特に家畜は、人間の行いに対して対応するだけです。人間が「怖い対象」となれば逃げるし、「可愛いわあ」などとやれば、増長する、のは野生動物。彼らは人間について、特に「親しみ」なんか感じていないからです。

 家畜になってくれている動物の大きな特徴は、「人間にある程度危害を加えられても、だから人間に仕返ししようとはしないで、やっぱりそばにいることを選択する」点じゃないかと思います。例えば、獣医療ですが、なんのかんのいっても、注射したり手術したり、無理やり薬を飲ませたり、それが「治療」と理解していない動物にとっては、一種危害を加えられてるのと同じです。でも、家畜動物は、割と「そんなもんか」で状況を受け入れてしまう傾向が大きい、ので、治療ができてしまう。これは、獣医側が「動物のためですから」とかなんとか言って、どんどんアグレッシブで金もかかる治療を飼主に押し付ける事態を招く要因になりかねない。例えば、ガンの治療だなんて、動物は知りませんよお、というのは重要なポイントで、人間なら理解力があるから心身に負担の重い治療をする動機づけができるけど、動物は別にそうではない、というのは、つくづく考えておかなければならない。

 で、馬ですが、本当に我慢強いなあと可哀そうになっちゃうんですよね。ハミ、あんなもん口の中に押し込まれた状態で運動できるかっつの。社会常識的にありえヘンでしょうが、というところからハミなし頭絡は始まっているんですけども。じゃあ、蹄鉄は?感覚のない場所に釘打ってるんだから、問題ないべ、というのは本当でしょうか?

 人間で似たようなものといえば、ネイルアートでしょうか。ネイルアートって、ずうっと付けっぱなしなんでしょうか?付けたことないので分からないんですが。ただ、付けていたらイライラするだろうなあ、とは思います。何をやっていても、眠ってる間も、いつ剥がれるか、いつどこかに引っかかるか、何にも考えずにいられる人はそんなに多くないのでは?馬は、自分が蹄鉄なんてものを付けられている、という自覚はないです。しかし、足元の「なんとなく違和感」はずうっとあるでしょう。その違和感が大きくなったり小さくなったりするんだろうけれど、まず、0にはならないのは異物の特徴です。そのかすかなイライラが高じて疝痛を起こしたりする。

 馬と付き合い始めた頃、なんでこう、この動物は簡単に病気するんだ?と思ったものですが、こうした違和感が原因なら筋が通る。いきなりバタバタ暴れたり、いわゆる「物見」をしたり、普通の動物では考えられない行動を簡単に起こしてしまうのは、そうした違和感に、つねにどこか苛立っているから、でしょう。

 馬の精神的なものに及ぼす悪影響について述べましたが、じゃあ、身体に対してはどうか?は次回。