
「塗り替えられて消えた歴史を蘇らせる。1945年8月から7年半の間,日本は独立国家ではなかった。GHQの干渉は今に至るまで日本の政治に影を落としている。本書は,関係者の手記やインタビュー,遺贈文書を検証しなおし,証言の少ない占領期の出来事に新たな角度から光を当てる。公職追放という“政治的な死”を避けるために,有力者らは球団を創設し,アメリカ通をブレーンにし,秘密結社に入った。追放を免れた側では,首相の座をめぐって政治史が修正され,現在まで続く「保守本流」の系譜が巧妙に形作られていく。戦後史と日米関係の捉えなおしを迫る,俊英による力作。」
とあります。
日本が米国による占領から独立を回復してすでに70年が経ちました。
現在の政権は久々の“保守本流”宏池会出身者が担っていますが,かつて宏池会のトップを務めた宮澤喜一は,敗戦直後に占領軍側と直接交渉する立場にあって,そのことを回想したインタビューで「占領というのは非常に屈辱だ」と述懐しています。
最高権力をGHQが持っていたこの時代には,記録に残らなかった数々のエピソードが埋もれています。
その最高権力行使の象徴的な例が「公職追放」でした。
そこでは政治や行政にかかわる人々が理不尽ともいえる目に遭っていたことが読み取れます。
また本書では,著者が収集した史料や占領期についての証言をもとに,広島カープの創設者である谷川昇,元首相の三木武夫,フリーメイソンの天皇入会工作にかかわった関係者,田中角栄伝説を生み出した作家の戸川猪佐武について,新たな角度から光を当てています。
そして、「占領期におけるもっとも重要な事件」である「山崎首班事件」を改めて検討することで,すでに神話化した田中角栄をめぐる伝説の重要な部分が形成されていくプロセスの詳細や,三木武夫が敗戦直後から首相候補と目されるようになっていた事情も明らかにしています。
なかなかユニークな現代史ではあります。
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