海保、人工衛星で領海監視へ…海難救助にも活用
人工衛星により、周辺国の沿岸部も含めた広範囲で画像を撮影し、警戒警備や捜索、捜査などに活用する。今秋にも人工衛星を
運用している民間事業者と契約を結び、システム運用を開始する方針。
同庁は、民間で人工衛星による画像配信などを手がけている事業者との契約を想定し、今年度予算に衛星監視システムの関連
費用約2億4000万円を計上。来年度以降は数億円程度の費用を見込んでいる。
同庁の構想では、監視対象は日本列島の周辺から、中国、韓国、ロシアなどの沿岸部までの計220万平方キロ・メートル程度の
海域となる見込み。これらの海域について少なくとも1日に2回程度、画像を撮影し、全国の管区本部などに送信して警戒や捜索に
活用する。
このシステムの導入で、尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国公船の態勢を早期に把握し、警戒を強化できるほか、海難事故で
救助者の場所特定に役立てたり、原子力発電所など重要施設の周辺に不審船がいないかチェックしたりすることが可能になる。
現状でも、内閣官房の内閣衛星情報センターが他国の軍事施設などを監視する人工衛星を運用しており、撮影した画像を防衛省
など各省庁の求めに応じて提供している。ただ、中国公船による領海侵入が相次ぐ中で、同庁は同センターの衛星とは別に、
迅速に情報を入手できる衛星監視システムを独自に整備する必要があると判断したとみられる。
同庁ではこれまで、海上警備や捜索には巡視船艇や航空機の増強で対応してきたが、独自の衛星監視システムがあれば、
重点的に監視したい海域の画像を多く撮影でき、より精度の高い情報収集が可能となる。
中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入は、2012年には68隻だったが、16年には121隻に増加。海難救助でも、
同庁は昨年、1300隻以上の事故船舶から救助要請を受け、2000隻近い巡視船艇を出動させた。金塊密輸などの海上犯罪や、
北朝鮮のミサイルへの対応など、海保の業務は多岐にわたっている。
同庁は、噴火活動が続いている西之島(東京都小笠原村)について、航空機による定期的な観察を実施しており、こうした活動にも
利用できるという。
同庁担当者は「衛星で日本全体を常時、監視出来れば、情報収集能力は飛躍的に向上する。海上の態勢も合わせて強化しながら、
海の安全を守っていきたい」と話している。