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<台湾情報18-49>台湾の現実的な有権者

2018-11-27 13:40:13 | 台湾 中台・国際関係

【WSJ社説】台湾の現実的な有権者

 

 

 台湾の有権者らの大きな長所は、現実的であるということだ。

これは、中国による侵略の脅威に直面する島としては、有用な資質である。この現実主義は、24日の

統一地方選挙でも発揮された。今回の選挙と住民投票では、蔡英文総統に厳しい判断が示され、

原子力発電の廃止は否決された。


 蔡氏が率いる与党・民主進歩党(民進党)は、幾つかの重要な首長ポストと、多くの地方議会議席を失った。

蔡氏は、民進党主席を辞任し、2020年初めに予定される総統選挙に向け苦しい戦いを強いられることになった。


 有権者らは、主として民進党がさらなる経済的繁栄を実現できなかったことに不満を持っていたようだ。

2015〜16年の経済の落ち込みの後、域内総生産(GDP)の伸びが加速したにもかかわらず、

インフレ調整後の賃金はほぼ横ばいだった。退職した公務員、軍人らの中には、民進党が行った必然的な

年金改革への不満から野党・国民党(KMT)を支持した者もいた。この改革によって、特権を持っていた

これらのグループへの高額な手当が削減されたからである。


 蔡氏は2016年に総統に就任した。前任者だった国民党の馬英九氏が中国政府に近づき過ぎたという理由で

有権者から拒否され、対中国でより強硬な姿勢で臨むことを約束した蔡氏が選ばれた。

これは実際のところ、「一つの中国」を目指す1992年の合意に従うという馬氏の言葉上の譲歩を

放棄することを意味した。中国政府は蔡氏がもたらした変化に理不尽な反応を示した。

これを受けて、有権者はこうした頭痛の種を抱えたくないとの判断を下したのかもしれない。

これは、有権者が住民投票で五輪選手団を「チャイニーズ・タイペイ」ではなく、「台湾」の代表として

出場させることに反対した理由の一つでもある。「台湾」での出場は中国政府を一層挑発することに

なるからだ。


 エネルギー政策については、台湾の有権者は石炭火力発電の禁止に賛成したが、過半数となる59%は

原子力発電の廃止に反対した。太陽光や風力発電では現代の経済を動かせないことを台湾の有権者は

環境保護活動家よりもよく分かっていた。


 これは全て通常の政治であり、一党(国民党)支配が解消されてから20年もたたない地域で

成し遂げられた功績である。注目が対中政策に向かうことは避けられないものの、中国のパワーに

あらがう上でより大きな課題となるのは、引き続き、中国語圏の力強い民主主義として台湾が示す

モデルである。