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ムン大統領就任1年の韓国経済【朝鮮日報社説】最低賃金引き上げを肯定、文大統領の驚くべき認識。/ 韓国経済はなぜこの有り様なのか

2018-06-01 15:25:42 | 韓国経済

【社説】最低賃金引き上げを肯定、文大統領の驚くべき認識

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は31日に開催された国家財政戦略会議で「最低賃金引き上げの前向きな効果は90%」と発言した。

「所得主導成長論は失敗した」との指摘に対して文大統領は「結論を下すのは時期尚早」とした上で「(広報という面で)

政府の説明が不十分と思う」と述べた。文大統領の発言は要するに「最低賃金の引き上げは成功したが、政府がその効果を

しっかりと説明できていないため、マイナスの評価が下されている」という趣旨だ。

これは「最低賃金引き上げのペースを調整すべき」と主張する企画財政部(省に相当、以下同じ)と経済副首相を事実上叱責

(しっせき)したことになる。最低賃金引き上げによる雇用減少を巡る論争で「マイナスの影響はない」と主張した

大統領府スタッフらを事実上擁護したのだ。


 しかし文大統領のこのような認識は客観的事実と乖離(かいり)している。最低賃金が一気に引き上げられた影響で

低賃金労働者の雇用が減り、これが所得分配の悪化につながったことを示すデータや資料はいくらでもあり、また専門家の

分析でもすでに結論が出ている。今年に入ってコンビニなどのアルバイトや飲食店従業員など最低賃金の影響を大きく受ける

低賃金労働者の数も大幅に減少した。卸売り・小売り・外食・宿泊などの分野における雇用は1-4月だけで16万人が減少し、

パートタイムや日雇いに至っては何と64万人が仕事を失った。


 大統領府では文大統領の前で最低賃金を巡る論戦が交わされたが、その会議の翌日に経済協力開発機構(OECD)は

「韓国における急激な最低賃金の引き上げは雇用に悪影響を及ぼしかねない」と警告した。

「最低賃金引き上げの恩恵を受けたのは大手企業の従業員だけ」とする雇用労働部のデータも公表されている。

つまりあらゆる統計やデータが最低賃金引き上げの逆説を裏付けているのだ。これはデータを引き合いに出すまでもなく、

雇用の現場では商店主や零細企業経営者らが「人件費負担の影響で従業員を減らすしかない」と嘆く声がいくらでも聞こえる。

ところがこのような現状を前に文大統領は「90%は肯定的」と述べた。大統領の認識は一体何が根拠になっているのか非常に

気になるところだ。

 

 最低賃金の問題だけではない。文大統領は「マクロ指標を見れば韓国経済は全体的に好転している」と述べ、経済状況の回復に

自信を示した。

これに対して韓国開発研究院(KDI)は韓国経済が事実上の下降局面に入ったことを認める報告書を公表した。経済成長率について

言えば今年上半期の2.9%から下半期は2.8%、来年は2.7%へと下がり続けるとの見通しも示されている。

世界経済全体の成長率は今年3.8%、来年は3.9%と予想されているが、その中で韓国だけが逆の方向に向かっているのだ。


 この日統計庁が公表したデータによると、製造業の生産全体は増加に転じたが、消費と投資が同時に減少したことで再び懸念が

広がり始めた。製造業の稼働率が低下し、半導体を除く主力産業は全体的に輸出も減少している。このように景気悪化の兆候を示す

データは次々と公表されている。普通の政府であれば景気後退に備え今から対応に当たっているはずだが、文大統領は

「経済は好調」と語っている。文大統領とKDIの職員は違う国で生活しているのだろうか。


 文大統領は自ら語るように反対する意見や批判は受け入れず、時には全く逆の方向に進もうとするが、自分の内閣から出る

苦言についても同じように受け入れないのだろうか。文大統領は最下層労働者の所得補填(ほてん)を目的に、今後も高齢者の

雇用対策や基礎年金の引き上げなどを検討しているという。また巨額の税金を注いで就労事業などの対策にばかり力を

入れるということだ。これではこの政府の政策は本当に税金の投入とポピュリズムだけになってしまう。


 今や現政権による所得主導政策の実験は誰も手がつけられない一種のドグマ、宗教教義の領域に至ってしまった。

経済副首相が最低賃金引き上げペースの調整に言及すると、政界出身の雇用委員会副委員長は「副首相は神の領域にいるのか」と

批判した。所得主導成長と最低賃金引き上げについての批判や意見は一切許さないのだ。

もちろん全ての問題が所得主導成長論が原因ではない。しかし経済政策全体の考え方の基本が所得主導成長論にあるとすれば、

これは最初のボタンが掛け違えられているのは間違いない。問題の根本原因から顔をそらし、国民の税金ばかり投入するようでは

経済が好転することなどあり得ない。


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韓経:【コラム】韓国経済はなぜこの有り様なのか

2018年05月10日13時13分    韓国経済新聞/中央日報

  「革新成長」1年だ。「所得主導成長」という政策基調に首をかしげていたのでまだ幸いだと考えた。だが正体不明の所得主導成長と

革新成長が調和するだろうか。大統領就任1年の経済過失は落第点だ。

  革新は規制廃止から始まる。新政権が発足すればだれでも革新を叫び、規制撤廃を方法論として持ち出すものだ。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領だけでない。金大中(キム・デジュン)の「規制ギロチン」から盧武鉉(ノ・ムヒョン)の

「規制総量制」を経て李明博(イ・ミョンバク)の「電信柱引き抜き」と朴槿恵(パク・クネ)の「爪の下のとげ」まで、

表現が絶妙だっただけだ。「規制はわれわれが打ちのめす敵、がんの塊」という表現まであるからだ。

  だが緩和すると拳を握るたびにむしろ爆発的に増えたのが規制だ。金大中政権初期の1998年に1万185件だった規制件数は

朴槿恵政権当時の2015年には1万4688件に増えた。十分に幾何級数的だ。

文大統領が中国の小さな食堂で朝食代を払い韓国の規制の現実を確認したというように、社会主義国である中国より多いのが

韓国の規制だ。

  世の中は光の速度で変わるのに規制が足を引っ張るためできることがない。世界のスタートアップ上位100社が韓国の規制を

受けたならば57社は最初から事業ができなかったという。マッキンゼーの報告書だ。革新どころかそぶりすらできないという話だ。

  革新成長15大主要対策が発表されたのは昨年9月だ。大統領が年末までに対策をまとめ今年初めから実行に入るとしていたが、

後続措置は聞くことができなかった。1月の規制革新討論会で規制改革にこれまで試みられたことがなかった果敢な方式、

それこそ革命的なアプローチが必要だと強調したのも大統領だ。そして再び後続措置はない。

  政府がその間静かにしていたなら幸いだ。企業の足を引っ張る政策は休む暇もなくあふれ出た。親労組政策に反大企業政策、

反市場政策が相次いだ。それも超高強度な政策だ。

  賃金体系改編のない非正規職の強制正規職化はもちろんだ。急激な最低賃金引き上げに対策のない52時間労働制も施行が続き

企業は気が抜けている。硬直化した労働市場はそのままにして雇用を作るという政府だ。少数の大企業労組だけ調子に乗り

企業は先を争って海外に飛び出す。韓国国内に工場を作るという企業はない。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雇用状況板に

何が記されているのか気になるところだ。

  企業は息もつけない状況だ。投資環境は厳しくしながら雇用を創出していないと、いらついている。

法人税引き上げをあれほど反対したのに引き上げ率が少しでも低くなったという話は聞くことができなかった。

第4次産業革命を先導的に育成しようという規制サンドボックス政策も大企業は最初から除外されている。その程度なら幸いだ。

企業バッシングに総動員令だ。刑務所は近く積弊にパワハラ清算の対象とレッテルを貼られて久しい。いくつかの企業は最初から

廃業を心に決めたようだ。だから企業は顔色をうかがうばかりだ。

  「為替相場は主権」という当然の主張を無視した学者が経済政策ラインを掌握するので為替相場急落に翼はない。

輸出ができる訳はない。中国が無差別的THAAD報復に出ようが米国が自由貿易協定(FTA)再改定を切り出そうが、

ただ平壌(ピョンヤン)ばかり見つめる韓国政府だ。企業だけが死ぬ思いだ。

  不動産市場は押さえ込むばかりなのでいつでも跳ね上がれるばねの態勢だ。移動通信やフランチャイズ市場には原価公開を叫び、

企業秘密であろうがなかろうが半導体工程まですべて見せろというとんでもない政府だ。

  官僚だけが得意になっている。権限とポストさえ増やせるならば灰汁も飲み干すという官僚たちだ。規制を重ねて積んでいく。

なかった規制はもちろん、なくした規制まで再び引っ張り出す。次の政権に行ったらどうしようとするのか。

  製造業は真冬だ。昨年だけでも良かったという景気だ。輸出増加率からマイナスだ。工場稼動率は2007年の金融危機以降で最低、

製造業の在庫率は1997年の通貨危機以降で最高水準だ。労働寄り政策の後遺症で物価は高楼のように上がる。

二極化を解消するといいながら低所得層をさらに厳しい状況に追いやる政府だ。

  経済がなぜこの有り様なのかと問うな。政府が所得主導成長という虚像に酔い市場に逆らう方法がない。

国民は残った4年もそのように行くのかと怖くなるばかりだ。