【コラム】またも韓国をもてあそぶ北朝鮮
2018/01/21 05:09 朝鮮日報
「North Korea plays the South, again」――。先ごろ、米ニューヨーク・タイムズ(アジア版)の1面に掲載されたコラムの
見出しは、最近の南北関係について、正鵠(せいこく)を射ている。「北が韓国をまたもだましている」「北が韓国をもてあそんで
いる」とも翻訳可能なこのコラムの筆者はニコラス・エバーシュタット氏。アメリカンエンタープライズ公共政策研究所(AEI)の
上級研究員だ。ハーバード大で博士号まで取得した秀才で、長期にわたり北朝鮮をウォッチしていることで知られる。
ワシントン勤務当時に会った同氏は北朝鮮が「偽装平和作戦」を展開するたびに韓国がだまされることが理解できない様子だった。
長身で眼鏡姿の同氏が南北関係について語りながら、首を振る姿が印象に残っている。
エバーシュタット氏はコラムで、現在韓半島(朝鮮半島)で起きている状況を「ウィン・ウィン」のゲームだとはとらえていない。
北朝鮮が勝利者で、韓国が負けるゲームだとみている。そして、「こっち(北朝鮮)が『ジャンプ』と言ったら、そっち(韓国)は
『どれだけ高く跳べばいいのか』と尋ねろ」といった調子のゲームが始まったと形容した。
彼の分析通り、北朝鮮の30代の指導者が新年のあいさつで「冬季五輪」と「平和」に言及すると、韓国政府は待ってましたと
ばかりに北朝鮮の全ての要求を受け入れた。今月9日、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後初の高官級協議の合意文書は
「北朝鮮の新年のあいさつをコピーした」と言われるほど、金正恩(キム・ジョンウン)の言葉そっくりだった。
平昌五輪の選手団に関する会談が開かれもしないうちに「芸術団」派遣をめぐる会談が開かれるという世にもまれな出来事まで
起きた。その後、17日に行われた実務者協議では、韓国の側から北朝鮮の馬息嶺スキー場の共同利用を提案した。既に昨年の段階で
北朝鮮にそうした構想を伝えていたという。馬息嶺スキー場とはどんなところなのか。金正恩がリフトに乗る姿を北朝鮮メディアが
報じるほど彼の愛着が強い場所だ。北の歓心を買おうという意図でなければ、大会開催地以外での共同練習を提案した理由は
理解し難い。
文在寅大統領は、検察による捜査を受ける可能性が高まった前大統領による抗議声明には「憤りを禁じ得ない」と怒った。
しかし、北朝鮮が文大統領に対し、核問題で「間抜けな詭弁(きべん)」を弄(ろう)したと責め立てても、全く反応を示さなかった。
「これほどまでに無礼で愚昧(ぐまい)なのか」と北朝鮮に暴言を吐かれても、文大統領とその側近は沈黙した。
こういうことは挙げればきりがない。「南北関係がひと月足らずで上下関係と化した」という嘆きが聞かれる。
北朝鮮が次から次へとニュースを量産する間、本当に重要な非核化論議は音もなく消え去りつつある。会談場所に現れた
北朝鮮側は機会があるたびに「6・15精神(2000年の南北首脳会談の精神)を取り戻そう」と言う。
「核」には触れず、「民族同士」という文言が盛り込まれ、自分たちに有利な第1回南北首脳会談での合意を強調したものだ。
韓国側代表団は退屈そうに天気の話をするばかりだった。北朝鮮も同意した韓半島非核化共同宣言、9・19共同声明
(05年の6カ国協議における共同宣言)、07年の2・13合意の精神に立ち返ろうという言葉を切り出せないのが現実だ。
金正恩が今月1日、核と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を放棄しないために南北対話を提案した段階では、北朝鮮は文在寅政権が
ここまで積極的に乗ってくるとは想像もしなかったはずだ。韓国に「ジャンプしろ」と言ってみて、1メートルも跳んでくれれば
御の字と思っていたら、韓国側は必死に2メートルも3メートルも跳ぼうとするものだから不思議に思ったはずだ。
金正恩は過去数カ月、米国のB1B爆撃機編隊や空母が接近するたびに地下施設や地方に潜伏したとされる。
「まさか米国が攻撃するはずはない」と考えつつも、緊張したはずだ。そんな金正恩は今、平壌の執務室で緊張を解き、
ソウルと平昌が描かれた地図の前で満足の笑みを浮かべているはずだ。
李河遠(イ・ハウォン)論説委員
【コラム】五輪熱気に冷や水を浴びせる南北合同チーム
2018/01/21 05:08 朝鮮日報
女子アイスホッケーの南北合同チームを結成する構想が伝えられ、インターネット上では文在寅(ムン・ジェイン)政権への
批判が相次いだ。「選手団はあまりにひどいことされている」「こんな合同チームが世の中のどこにあろうか」「こんな合同チーム
ならば観戦をボイコットしよう」といった声が相次いだ。合同チーム推進は人権侵害だとして、人権委員会に陳情書を出すファンも
登場。大統領府(青瓦台)の国民陳情窓口には、合同チームに反対する請願に6日間で1万人以上が賛同した。
国際オリンピック委員会(IOC)の柳承敏(ユ・スンミン)選手委員は「最低限選手の意思を先に訪ねるべきではないか」と疑念を
呈し、女子アイスホッケー韓国代表のセラ・マリー監督は「これほど差し迫った時期に合同チームの話が出て、とてもショックを
受けた」と話した。久しぶりに社会全体の意見が一致したのが今回の合同チーム問題ではなかろうか。老若男女を問わず、選手も
監督もファンも合同チームを望んでいない。
合同チームを結成するかどうかの最終結論は20日にIOCと韓国、北朝鮮との合意に委ねられる。しかし、今回の合同チームが
当初から逆風にさらされるのは当然だった。これまで政府は水面下で合同チーム結成を検討してきたが、当事者の選手たちは全く
知らされていなかった。政府からアイスホッケー協会に対し、「韓国選手の被害を最小化するにはどうしたらよいか」と打診が
あったのは先週末だという。昨年6月に合同チーム構想に言及し、世論の猛反対にさらされたにもかかわらず、7カ月動きを見せず、
今になってこんな検討を始めたのだろうか。
韓国のアイスホッケーチームは曲折の末に結成された。2018年の冬季五輪開催地が平昌に決まって以降も国際アイスホッケー
連盟(IIHF)は韓国の女子チームに開催国の自動出場権を与えようとしなかった。普段からアジアでも10点差以上で大敗する韓国を
出場させれば、種目そのものが笑い物になることを恐れたのだ。韓国側は協会職員が米国の大学選手のリストを手に
「KIM」「LEE」「PARK」という名の選手にとにかくメールを送り、「もしかして韓国系か。帰化して活躍するつもりはないか」と
勧誘するなどして、どぶ板戦術で選手をかき集めた。そうして帰化させた選手が現在の主力のパク・ウンジョン(キャロライン・
パク)、ランディー・ヒス・グリフィン、イム・ジンギョン(ダネル・イム)らだ。ゴールキーパーのハン・ドヒは12年も補欠だが、
五輪への周辺でスティックを握り続けている。彼らは最低限の生活費程度の訓練費を受け取り、夢を追いかけてきた。
女子アイスホッケーの選手たちは、スポーツ界で発言権もなく、軽視された存在だ。南北の平和と和解という名分に巻き込まれ、
選手たちの望みがつぶされてもよいというのか。韓国選手の犠牲を前提とする「非情の合同チーム」に国民が喝采を送るだろうか。
過去の南北合同チームが感動的だったのは、南北が力を合わせ、大きな相乗効果を上げたからだ。
韓国の玄静和(ヒョン・ジョンファ)と北朝鮮のイ・ブンヒが力を合わせ、中国を破り優勝した1991年の世界卓球選手権合同チーム、
互角の戦力の南北青少年がベスト8入りを果たしたサッカーのワールドユース選手権での合同チームがそうだった。
今回のアイスホッケーの合同チームは戦力からしてアンバランスである上、合同練習を行う時間もない。現在韓国の戦力が10点だと
すれば、合同チームは良くても7-8点というレベルだろう。「南北が力を合わせれば失敗する」という悪しき前例となるかもしれない。
平昌五輪は北朝鮮の参加決定で一定の成果を上げた。だが、ここでストップすべきだ。無理に推進する合同チームは人々の冷笑を
買うばかりだ。ようやく盛り上がりつつあった五輪の熱気に政府が率先して冷や水を浴びせているに等しい。
キム・ドンソク・スポーツ部長