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「スシロー」買収で複数社が協議。ファンドの金儲け、内紛や乗っ取りでずっと経営混乱の異常さ

2016-10-03 12:35:29 | 食べ物・食の安全

スシロー買収で複数社が協議

2016 年 9 月 30 日 18:19 JST THE WALL STREET JOURNAL

 【香港】スシローグローバルホールディングスの買収を巡り、アジアで展開する未公開株(PE)投資会社MBKパートナーズなどの買い手候補が協議に入っている。取引額は約15億ドル(約1500億円)に達する可能性がある。複数の関係者が明らかにした。

 関係者らによると、MBKのほか少なくとももう1社が、スシローを英PE投資会社ペルミラから買い取る方向で話し合いを続けている。買収額が15億ドルとなれば、スシローのEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)のおよそ10倍に相当する。関係者の1人は、ペルミラがスシローを第三者へ直接売却することを望んでいるものの、好ましい金額を引き出せなければ新規株式公開(IPO)の実施も引き続き検討していると話した。

 スシローグローバルホールディングスは回転寿司チェーン「あきんどスシロー」の持ち株会社。


家族が和気あいあいとする場所「スシロー」ですが、現在英国企業なんですね。

そして、買収話で協議中というのは上の記事です(最新)。

下の記事は今までの「スシロー」買収の歴史。

始まりは兄弟喧嘩。その後いろんな投資会社の餌食になっています。

消費者としては食品の品質やサービスが悪化しなければ、あまり関係のないことかもしれません。

けれども、投資会社によって売買が頻繁に行われているという事は、中国が入ってくる可能性もあるわけです。

中国企業になんかなったら食の安全が危ぶまれます。

「スシロー」の買収には注視する必要がありますね。

創業者の兄弟は今どんな気持ちなのでしょう。

「たらい回しにされる」スシロー、ファンドの金儲け、内紛や乗っ取りでずっと経営混乱の異常さ

 ロイターが4月22日、「英プライベート・エクイティファンドのペルミラが、あきんどスシローのIPO(新規上場)の準備を開始し、引き受け会社(幹事証券会社)の選定に入った」と報じた。

  プライベート・エクイティファンドとは、投資家から集めた資金を元に株式の過半数を取得することによって経営に参画。その後、会社を健全な状態に建て直し、IPOによって利益を得ることを目的にしたファンドのことである。

  ペルミラは2012年9月に、スシローを国内再生ファンドのユニゾン・キャピタルから10億ドル(当時の為替レートで約786億円)で買収した。

 「当時の企業価値は約800億円だったが、現在は企業規模の拡大とともに約1500億円に上昇しているという。12年当時、スシローの店舗数は335だったが、現在は400を超える」(ロイター記事より)

 スシローは上場企業でないため、財務諸表の開示はない。ホームページによると、15年9月期の売上高は1350億円で、12年9月期の1113億円から21%増加している。

  機は熟したといえ、ペルミラはIPOによって投資した資金の回収に乗り出したのである。

 

乗っ取り撃退のために上場廃止

 スシローは内紛、乗っ取り、転売の歴史だった。清水義雄氏と清水豊氏の兄弟が1975年に大阪市阿倍野区でカウンターだけの立ち食い寿司屋「鯛すし」を創業したのがルーツである。

 スシローの前身となる株式会社すし太郎は84年の設立。事業は順調で2000年に商号を株式会社あきんどスシローに変更。03年9月に東京証券取引所第2部に上場した。

  その後、清水兄弟の間で喧嘩が勃発。07年3月、牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーが突然、発行済み株式の27.2%を保有する筆頭株主として登場した。ゼンショーが取得した株式は、実は弟の豊氏とその家族が保有していたものだった。

 それから5カ月後、兄の義雄氏は敵対的買収を撃退するホワイトナイト(白馬の騎士)を見つけた。投資ファンドのユニゾン・キャピタルである。ユニゾンが編み出したゼンショー撃退作戦はMBO(経営陣による自社買収)によるスシロー株式の非公開化だった。

 筆頭株主のゼンショーはTOBに申し込まず、TOB後に行われた株式交換時にTOB価格と同額で持ち株を売り、スシローの経営から撤退した。スシローは、助っ人ユニゾンの手を借りて、天敵ゼンショーを追い払ったのである。

  スシローをめぐるユニゾンとゼンショーの攻防戦には、双方の陣営に大手法律事務所のM&A専門弁護士が加わった。「オールスターでやるような案件ではないだろう」と法曹界をあきれさせるほど激しい争奪戦になった。

 

ホワイトナイトとして破格なリターンを得たユニゾン

  ユニゾンはスシローに加藤智治氏を専務執行役員として送り込んだ。同氏はドイツ証券やマッキンゼーアンドカンパニーを経てユニゾン入りしたコンサルタントで、メディア戦略に長けていた。PR会社を積極的に活用し、牛丼の低価格戦争と対比させるように「回転ずし戦争」の実態をテレビや雑誌に売り込んだ。

 その露出効果は絶大で、11年にはカッパ・クリエイトホールディングスが展開する「かっぱ寿司」を抜き去り、スシローは回転ずし業界の首位に立った。12年9月期には売上高1113億円を達成。一店舗当たりの売上高は年間3億3000万円で、同業の1.3~2倍という高い水準を誇った。

   ユニゾンが掲げた「日本一、売上高1000億円」という目標は達成された。加藤氏が成功の立役者だった。当然のことだが、その後ユニゾンは資金の回収に入った。イグジット(ファンドが株を売却して投資を回収する出口)戦略としては3つ考えられた。再上場するか、事業会社に売却するか、新たなファンドに売却するかである。最終的にユニゾンはリターンが最も大きいファンドへの転売を選択した。

 12年9月、ユニゾンが保有している全株式(81%)をペルミラに譲り渡し、スシローは英国企業となった。譲渡価格は約10億ドル(当時の為替レートで約786億円)で、単純に計算して541億円の売却益が出たことになる。ユニゾンはホワイトナイトとして破格の報酬を得た。

 

ペルミラが社長に送り込んだ元日本航空副社長

  大枚をはたいてスシローを買ったペルミラは、スシローの再上場の際に、高値での売却を狙っているのはいうまでもない。そこで「2020年に売上高2000億円」の成長路線を選択した。

  そのために、元日本航空副社長の水留浩一氏をスカウトした。水留氏は15年2月、スシローの社長に就任した。

  水留氏は東京大学理学部卒業後、電通に勤務し、アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)を経て、欧州を代表するコンサル会社のローランド・ベルガー日本法人に入社した。ローランド・ベルガーは企業・事業再生を専門とするグループで、数多くの再生案件を手がけた実績を持つ。

  09年に官製ファンドの企業再生支援機構(現・地域経済活性化支援機構)の常務に就き、10年には会社更生法で再生中の日本航空の副社長に就任して経営再建に尽力した。その後、アパレル企業ワールドの専務執行役員などを経て、15年にスシローに招かれた。

  水留氏は、外部から招聘された再生のプロである。しかも、新しいタイプの仕事請負人だ。業績が落ち込んだ企業に招かれてV字再生を果たす辣腕家を、一般にプロ経営者というが、水留氏はこの範疇に当てはまらない。

 前経営陣はスシローを日本一に押し上げ、業績は拡大中だった。うまくいっている会社を引き受けて、さらに成長させることは企業再生よりはるかに難しい。プロ経営者たちが最も得意とする抜本的改革が行えないからだ。


ペルミラ日本法人トップは元大蔵省キャリア

 ペルミラは15年7月、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の元幹部の藤井良太郎氏を日本代表として迎えた。日本企業へのアドバイザリー業務や投資経験が豊富な藤井氏を起用し、日本での業務を拡大する狙いだ。

 藤井氏は97年に東大法学部を卒業し、大蔵省(現財務省)に入省した。しかし、藤井氏が入省したときには、「省の中の省」といわれた輝かしい大蔵省の姿はもうなかった。接待疑惑で上司が逮捕され、自分の机も捜査の対象となった。組織を守るための想定問答集づくりに追われた。

  99年から2年間、米スタンフォード大のMBA(経営学修士)コースに留学した。シリコンバレーはドットコムブームに沸き、日本経済の病み具合が、かなり深刻なことを痛感した。

  MBA取得後も、解体された大蔵省には戻らなかった。01年、ゴールドマン・サックス証券に移り、三井住友フィナンシャルグループへの1500億円の投資案件などに携わった。その後、本社勤務も経験。ヘンリー・ポールソンCEO(のち米財務長官)からも慰留されたが06年5月、KKR日本法人に移った。KKRではディレクターなどを務めた。

 ペルミラは1985年の設立。運用総額は250億ユーロ(約3兆円)に上る。食の川上から川下にいたるフードチェーンを重要な投資のテーマとしてきた。そして今、外食産業に狙いを定めている。

 藤井氏の任務は、スシローを再上場させて多額のリターンを得ることである。次に買収する外食企業を選定する仕事も重要だ。

  米マクドナルドが手放そうとしている日本マクドナルドホールディングスの株式の取得をペルミラが検討しているとの観測が、ファストフード業界を駆けめぐっている。

 「安くてまずい」かっぱ寿司、経営危機的状況でも格段に美味しくなっていた!

赤字の元凶は「無駄多い」経営かっぱのマークでおなじみの「かっぱ寿司」の業績不振が鮮明となっています。


「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイト(以下、かっぱ寿司)の2017年3月期第1四半期の連結決算は、売上高が前年同期比7.0%減の190億円、営業利益が2億円の赤字(前年同期は5億9600万円の黒字)、最終損益は1億円の赤字(同4億8300万円の黒字)と減収減益でした。

 

 直近5年の通期の連結業績は深刻な状況です。12年の売上高が926億円、13年が941億円、14年が933億円、15年(13カ月)が876億円、16年が803億円となっています。売上高が大きく落ち込んでいる状況です。最終損益は13~15年で3期連続の赤字となっています。

 

 同社は不採算店舗の閉鎖を行うなど、立て直しを進めていましたが、14年12月に居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドに買収されました。コロワイドの指導のもと、かっぱ寿司の再建を加速させていましたが、業績回復の糸口は見えていない状況です。

 

 かっぱ寿司は1皿100円を中心とした低価格の寿司を提供する回転寿司店として成長してきました。しかし、あきんどスシローが展開する「スシロー」や、くらコーポレーションが展開する「無添くら寿司」などとの競合により経営は悪化していきました。

 

 かっぱ寿司の業績不振の最大の理由は、寿司の味において問題があることです。消費者の間に「安かろう悪かろう」というイメージが定着してしまいました。その点は同社も認識しているようで、「他社と比較すると商品品質レベルにおいて劣っている」と自省を込めて述べています。自社工場での加工品を店内加工に切り替えるなど対策を講じていますが、消費者には十分に認知されていないのが現状のようです。

 

 競合店は、安い上においしい寿司を提供しています。このことは、食材にかけている費用からもわかります。データを多く公表しているくら寿司とかっぱ寿司の直近5年のデータを比較してみます。有価証券報告書記載の数値で比べてみると、くら寿司の売上高に対する仕入の割合は40%を超えているのに対して、かっぱ寿司は35%程度にとどまります。

 くら寿司に比べてかっぱ寿司は食材に費用をかけていないことになります。一方で、原価率は両者ともに45%程度です。厳密に言うことはできませんが、仕入の割合と原価率に乖離がある場合、廃棄の問題や不適切な値入れ(仕入原価に一定の利幅を加えて売値を決定すること)があることを意味します。

 


実は格段においしくなっていた

 

くら寿司の仕入は安定しています。仕入の割合はおおむね42%で推移しています。片や、かっぱ寿司は28.8~47.2%の間で、年によって大きく上下しています。つまり、仕入が安定していません。不安定な仕入は、食材の鮮度の維持において大きな問題があるといえます。また、廃棄ロスや販売機会ロスの問題もあります。

 

 かっぱ寿司は、新鮮でおいしい食材を提供していく必要があります。そのために、仕入に費用をかけたいところです。仕入の費用を捻出するためには、仕入の安定化と適切な値入れが欠かせません。

 

 

 かっぱ寿司は高い鮮度を維持した寿司の提供と廃棄ロスの抑制のために、注文を受けてから寿司をつくって届けるフルオーダータイプの店舗を拡大させていくとしています。そのためには、少なくない資金投資が必要となります。コロワイドの後押しにより、積極的な出店や改装を進めていくものと思われます。方向性は間違っていないでしょう。

 

 筆者の個人的な感想になりますが、久しぶりにかっぱ寿司の寿司を食べてみたのですが、以前と比べて格段においしくなっているように感じました。ただ、世間一般のイメージは、いまだに「安かろう悪かろう」です。一度貼られたレッテルは、簡単に剥がすことはできません。

 業績をV字回復させるためには、おいしくなった寿司を消費者に粘り強くアピールしていく必要があるでしょう。