南シナ海、供与巡視船で共同訓練…中国をけん制
2017年05月13日 15時02分 読売オンライン
政府が6月、フィリピン、ベトナムに供与した巡視船艇を使用した初の共同訓練を、海上保安庁と両国の海上保安機関
との間で実施する方針であることが明らかになった。
政府は南シナ海で中国と領有権を争う東南アジア各国の海上警備を支援するため、巡視船を順次供与しており、共同
訓練には各国海保機関の運用強化を通じて中国をけん制する狙いがある。
このうちフィリピンとの訓練では、日本が供与した40メートル級の新造巡視船を使用。海保から派遣するヘリ搭載型巡
視船とともに、同国近海で海賊対策などを想定した訓練を行う。ベトナムとの訓練では、中古の供与船1隻を使用する。
従来の共同訓練では、フィリピンやベトナムが所有する20メートル前後の小型船が使われてきたが、これらの船は外洋
で長時間の巡視活動が難しかった。大型の巡視船の使用で、「外洋での本格的な取り締まりを想定した訓練が今後可
能になる」(海保幹部)という。
南シナ海では、一方的な領有権を主張する中国が、海警局公船や武装漁船を使って漁業権益などを拡大させている。
沿岸国では、フィリピン沿岸警備隊が1998年、ベトナム海上警察が2013年に、それぞれ海軍から分離する形で設立
されたが、歴史が浅く技術の蓄積が少ないうえ、巡視船の数も不足し、大型化・武装化する中国側の船に対抗できない
のが現状だ。
日本政府は、13年にフィリピンに新造の40メートル級巡視船10隻の供与を表明。その後もフィリピンに90メートル級
新造船2隻、マレーシアに90メートル級中古船2隻、ベトナムに新造船6隻の供与を表明した。90メートル級の大型巡
視船は、防弾のために装甲を分厚く強化しており、中国の武装漁船などにも対応可能だ。フィリピンには16年8月以
降、3隻を引き渡し済みで、領有権を巡って比中両国が対立するスカボロー礁の警備任務に就いている。