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中国のウイグル弾圧、欧米企業も無縁で済まず。 欧米の大手衣料品メーカーなどが中国政府のイスラム教徒同化策に巻き込まれている

2019-05-18 10:01:27 | 民族・人種問題・宗教・人権問題(差別・迫害)

 中国のウイグル弾圧、欧米企業も無縁で済まず。

欧米の大手衣料品メーカーなどが中国政府のイスラム教徒同化策に巻き込まれている

2019 年 5 月 17 日 14:35 JST    WSJ   By Eva Dou and Chao Deng


 【アクス(中国)】欧米の大手衣料品メーカーや食品会社が、中国政府のイスラム教徒同化策に

巻き込まれている。


 アディダス、へネス・アンド・マウリッツ(H&M)、クラフト・ハインツ、コカ・コーラ、

ギャップといった企業が、新疆ウイグル自治区を通る同国の長く不透明なサプライチェーンの最後に

位置しているのだ。地元住民や国営メディアなどによると、同自治区では住民が強制的に訓練プログラム

に送り込まれているが、その一環で地域の工場で働くケースが珍しくない。


 複数の公式文書からすると、ウイグル人や他のイスラム教徒を対象とした同プログラムには政治的な

教化という重要な要素がある。プログラムの課程は職業訓練のほか、標準中国語、共産党の重要性や

国家団結、法律や過激思想対策(あまりに保守的な服装や頻繁すぎるお祈りを避けること)を網羅

している。軍隊さながらの訓練が含まれることもある。

 

  労働者も工場の幹部も、そうしたプログラムに抵抗すれば過激派シンパと疑われ、拘束されかねない。

 一部の企業はそうした強制的な訓練プログラムについて、差別のない職場環境を義務付けた

サプライヤー規定に反するとしている。

 

 

 ただプログラムの一環としての工場での労働は、企業側には気づかれないことが多い。中国政府は

新疆での暴力や過激な宗教思想への対策の一環として、国内企業に同地での雇用創出を指示しており、

それが欧米企業の関知しない下請け契約を通じて行われることも少なくないからだ。

  地元当局者らは取材に対し、訓練プログラムが強制ではなく、貧しい住民の職探しを支援するための

施策だと述べた。新疆の政府は文書を通じ、同自治区に強制労働はなく、そうした話は「うわさや中傷」

だとしている。

中国とカザフスタンの国境に近いアクスの町並み


 綿製品を手掛ける華孚時尚(ホアフー・ファッション)がアクスに持つ大きな綿糸工場は、政府と

協力して1カ月の職業訓練を実施している。中国とカザフスタンの国境に近いこの都市は、有刺鉄線や

警察による検問所、監視カメラで埋め尽くされている。住民の4人に3人はウイグル人だ。

 

 華孚の訓練は2017年12月に600人でスタートした。ネットに掲載された発表文の写真には、

迷彩服を着て直立不動の姿勢を取る女性労働者が写っている。地元政府は通達で、同社の工場を

「大規模な職業訓練施設」の一部だとしている。


 住民と話すのは難しい。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が最近行った現地取材

は当局者に干渉された。華孚の工場近くでスビナ・ゴジャムさん(20)らに話を聞いた時には、

当局者数人が近くをうろついていた。ゴジャムさんは訓練プログラムを経て同工場で働くようになった

という。「以前は過激な思想を抱いていたが、全てなくなった」と語った。

 ゴジャムさんはその後、当局者に連れられて隣接する飲食店の部屋に入った。戻ってくると、

「それ(訓練センターにいたこと)は秘密だと言われた。それについて話すことも許されない」と述べた。

 

 同社のことを良く知る関係者2人によると、華孚が新疆で生産する糸は中国の他地域のほかに

バングラデシュやカンボジアの工場に運ばれ、H&Mの店舗で売られるTシャツになる。そうした糸は

アディダスやエスプリ・ホールディングスのサプライチェーンにも登場する。ただ、両社は華孚から

直接の購入はしていないという。

新疆ウイグル自治区アクスを歩く中国軍兵士 PHOTO: CHAO DENG/THE WALL STREET JOURNAL

 

 アディダスは質問に対し、調査が終わるまで華孚からの糸購入を見合わせるようサプライヤーに

助言したと述べた。同社はサプライヤーが新疆政府の機関を通じて人を雇うことを16年に禁止している。

強制労働や差別への懸念が理由だ。エスプリは華孚を調査中だと説明。H&Mは新疆でサプライヤーとの

新たな関係を築く計画はないとしている。

 ギャップの広報担当者は、サプライヤー2社が新疆の複数の工場で生産された糸を使っていると

明かし、そのうえで、現在はサプライヤーの工場を「好ましい」と「好ましくない」に分類していると

述べた。

 

 一方で華孚は、労働者全員が自らの意思でそこにおり、同社の労働管理システムは「国際慣例と

規制を完全に順守している」と主張。社内訓練プログラムは民族や宗教に関係なく、全ての新入社員に

義務付けられていると説明している。


 中国の習近平国家主席は数年前に新疆の本格的な抑圧を命じた。当局がイスラム武装派による犯行

だとする爆弾事件などが相次いでいたためだ。政府の戦略の中心にあったのが雇用促進であり、

習氏は14年に地元当局者に対し、「仕事のある者は安定する」と述べている。

 

 大手衣料品メーカーは新疆への生産移転に際し、5年間の税控除や電力・土地および職業訓練に

対する補助金を提供されてきた。

 米アパレル・履物協会(AAFA)の幹部ネイト・ハーマン氏は、同協会がウイグル人の置かれた

状況や新疆のサプライチェーンの不透明性について議論してきたと述べた。


 新疆南部のホタンおよびカシュガルの当局は2017年、「田舎の余剰労働者」10万人を職業訓練に

送り込む3年計画を発表した。

 アクス当局の文書によると、同地の当局者は過去2年に4000人を超える住民を招集し、工場労働の

ニーズに合った「集中的で非公開の軍隊式管理」の下、脱急進思想や布製造のコースを施した。

多くは工場に向かったと書かれている。


 WSJは取材中、アクス周辺の村の掲示板に極貧生活を送る住民のリストが掲載されているのを

目にした。そこにはフルネームと国民ID番号、貧しい原因(「土地がない」「スキル不足」

「やる気がない」)が書かれていた。2つの村で見た数十人の名前すべてには、解決策として

「労働に送られた」と一様に書かれていた。

 訓練プログラムに関連した文書は、WSJが地元当局者に質問した後に政府サイトから削除された。

 新疆ウイグル自治区アクスの市街地 PHOTO: CHAO DENG/THE WALL STREET JOURNAL


  カルバンクライン、トミー・ヒルフィガー、ナイキ、パタゴニアを顧客に持つという世界最大の

シャツ製造請負会社、香港の溢達集団(エスケルグループ)は、綿花の一大産地である新疆に3つの

製糸工場を設けた。車克焘・最高経営責任者(CEO)は、当局者が2017年に新疆南部出身の

ウイグル人の紹介を始めたと述べた。

  同社は過去2年に34人を受け入れたが、採用の決定や訓練は政府からは独立して行っており、

「採用は強制されていない」という。

 新疆の綿花畑(2018年3月) PHOTO: DU BINGXUN/ZUMA PRESS

 

 カルバンクラインとトミー・ヒルフィガーを傘下に持つPVHは、素材サプライヤーの精査を強化する

計画だとした。ナイキは新疆産の綿を使用しているかどうかをサプライヤーに聞いていると述べた。

パタゴニアはコメントを控えた。


 政府の発表によると、新疆ジンリユアン・ガーメントは政府当局から紹介された村民の就業前に、

「脱過激思想」を含む訓練プログラムを実施した。

 

 同社は欧州を拠点とするコフラ・ホールディング傘下の小売りチェーン、C&A向けにジャケットを

生産した。新疆のテレビでは7月、ミニーマウスの描かれたピンク色の子供用パーカを同社工場の

労働者が縫っている場面が流れた。

 ディズニーの広報担当者は、同社には新疆の衣料品工場との関係は存在せず、アクスの同工場による

パーカ製造の許可もしていないと述べた。それらが偽造品かどうかは明らかにしなかった。

C&Aの広報担当者は、監査で問題が見つからなかったため同工場から昨年ジャケットを買ったと述べた。

ジンリユアンはコメント要請に応じなかった。


 7月に政府系の現地経済誌に掲載された記事によると、国有企業の中糧屯河(COFCO)の幹部らは

政府の貧困緩和策に貢献するため、アクスのある村を訪ねて工場の労働者を採用した。

同社は中国最大のトマト加工会社で新疆は最大の生産拠点だ。クラフト・ハインツやキャンベル・

スープにトマトペースト、コカ・コーラに砂糖を供給している。

中糧屯河(COFCO)がアクスに持つ工場 PHOTO: CHAO DENG/THE WALL STREET JOURNAL



 記事では、働きたがらない村民がいることにマネジャーらが言及していた。

 中糧屯河は文書で、記事に書かれた出来事は「断じて起きなかった」と述べた。同社の労働者は

自らの意思でそこにいるという。


 クラフト・ハインツは、新疆産トマトは調達全体の5%を占めており、米国で売られているものは

ないとした。キャンベルは自社トマトペーストのうち中国産は2%未満で、オーストラリアと

マレーシアで販売していると述べた。コカ・コーラは、サプライヤーが「責任ある職場と人権に関する

当社の厳しい規定」に従うことを義務付け、第三者機関を使って順守状況を監視していると語った。



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