F2後継機、来年度に開発着手=防衛省概算要求5.3兆円台
2019年08月21日18時18分 時事通信
2030年代半ばに退役が始まる航空自衛隊F2戦闘機の後継のステルス機について、防衛省は
20年度に開発に着手する調整に入った。開発費は8月末の概算要求では金額を示さない「事項要求」
にとどめ、年末の予算編成時に算出する。一方、20年度の防衛省の概算要求は過去最大の
5兆3000億円台となる見通し。複数の政府関係者が21日、明らかにした。
F2は米国のF16戦闘機をベースに日米で共同開発した。00年以降に配備され、35年ごろから
順次退役する。
F2後継機について、昨年末の中期防衛力整備計画(19~23年度)には「国際協力を視野に、
わが国主導の開発に早期に着手する」と明記された。これを受け、防衛省は開発に向けて検討を本格化
させたが、設計方針は依然定まっておらず、開発費の計上は21年度以降とみられていた。
しかし、F2の退役時期と、15年程度と見込まれる後継機の開発期間を考慮すれば、速やかに開発に
着手すべきだとの声が自民党などで強まっていた。
F2後継戦闘機、「事項要求」で開発費計上へ
政府は、航空自衛隊のF2戦闘機の後継機開発費を2020年度予算案に計上する方向で最終調整に
入った。日本主導の開発を目指し、開発費は現時点で総額1兆5000億円以上と見積もられている。
F2の退役が始まる30年代半ばの導入を目指す。
90機、30年代に導入
複数の政府関係者が明らかにした。
政府内では、海洋進出を強める中国への抑止力を念頭に、後継機は国産初のステルス戦闘機とし、
高い空戦能力の実現を目指す案が有力だ。長距離巡航ミサイルを搭載し、高水準の対艦能力を併せて
備えさせる案もある。F2と同様の約90機の配備を想定している。
開発費は概算要求では金額を示さない「事項要求」とする見通しで、年末の予算編成までに機体の
概念をまとめ、金額を算定する。
政府は、コスト高となることや、米軍と情報共有できるシステムが必要なことなどから純国産は
難しいとみて、外国の技術も導入する方向だ。
昨年12月決定の中期防衛力整備計画(中期防)ではF2後継機について、「国際協力を視野に、
我が国主導の開発に早期に着手する」と明記していた。ただ、共同開発となる場合でも将来、日本が
自由に改修できるよう、機体やシステムの主要部分はあくまでも国産とすることを目指す。
共同開発を巡っては、米空軍のF22戦闘機を基にF35の電子機器を搭載する米ロッキード・
マーチン社の案などが出ていた。ただ、1機200億円を超え、システムの設計図も「完全に開示される
保証はない」(防衛省幹部)ことなどから、日本政府内では否定論が多くなった。一方、英政府は、
次世代戦闘機「テンペスト」の開発を目指している。F2後継機と開発時期が重なるため、日英国防
当局間で共同開発の可能性について意見交換している。
後継機配備が始まる30年代半ば以降の空自戦闘機の体制について、政府は、対空・対艦・対地攻撃
など多様な任務を遂行できる最新鋭ステルス戦闘機「F35」(ロッキード・マーチン社)147機、
空対空能力が高いF15(米ボーイング社)の近代化機約100機と後継機という陣容にする構想だ。
[解説]日本が開発主導 防衛産業を維持
航空自衛隊のF2戦闘機後継機について、政府が日本主導の開発を目指すのは、国内の防衛産業
基盤を維持・強化する狙いがある。
日本の戦闘機開発は、古くは旧日本海軍の零式艦上戦闘機(零戦)が当時世界最高水準と言われたが、
戦後に一時途絶え、米国製への依存を強めた。それでも、日本政府と航空機産業は、1977年に
自衛隊初の国産支援戦闘機「F1」を導入するなど、日米共同開発も含めて技術やノウハウを蓄積して
きた。
F2開発に関わった日本の技術者も高齢化が進み、「若手への技術伝承は待ったなし」
(自民党国防族議員)だ。開発技術を維持し、後世に伝えることは、日本の将来の安全保障にとっても
大きな意義がある。