深まるアフリカの食糧危機、折り重なる悪条件
インフレ高進や外貨不足で状況は悪化
2017 年 5 月 4 日 10:41 JST THE WALL STREET JOURNAL
経済情勢と悪天候、それに紛争という三重苦により、アフリカの飢餓が記録的な水準に悪化している。過去30年で収
穫量が最悪となるなか、アフリカ大陸を構成する54カ国の半数の国で主食の価格が高騰している。
最も深刻な打撃を受けているのは南スーダンやソマリア、ナイジェリア北部など内戦に苦しむ地域だ。しかし、比較的
安定した場所でも、インフレの高進や外貨不足によって状況は悪化している。
この半年では、アフリカ中央部と南部でのコモディティー価格の下落によって各国通貨の対米ドル相場が30%以上も
下落。これがインフレ悪化と購買力の低下をもたらしている。
「トウモロコシの値段は(3月に)再び2倍に跳ね上がった」。銅資源が豊富なザンビアの首都ルサカでタクシー運転手
をしているサラ・ムウェーネさん(38)の言葉だ。ルサカでは3月に、緊急食糧供給に数千人が殺到する騒ぎがあり、8人
が死亡した。「子ども達に一日一食しか与えることができない。こんなことは今までなかった」とムウェーネさんは語る。
穀物価格の推移(1キログラム当たり)
青:ナイジェリア、紫:ザンビア、黄:ウガンダ、緑:マラウイ
ザンビア各地ではフードバンクとなった教会などでトウモロコシの配給が行われているが、徹夜で並ぶ人も多く、供給
が需要に追いついていない。ルサカでは最近、教会が無料の食事を提供していた競技場に暴徒化した群衆が押し入
り、調理油やトウモロコシ粉、塩など、目に入るものすべてを奪い取るという事件もあった。
同国政府は国際通貨基金(IMF)に16億ドルの緊急支援を求めている。ドラ・シリヤ農業相は、食料不足と価格上昇
は政府にとって大きな試練だが、2017年収穫分からの供給が始まる向こう数カ月以内には状況も安定化すると期待し
ている。
一方、歴史的な干ばつと食品価格の高騰に見舞われたウガンダでは、数千人が地方から首都カンパラに出て物乞い
する状況に追い込まれている。政府当局者らによれば、通常であれば十分な食糧生産量を持つ同国だが、昨年12月
に穀物在庫が底をついたという。
カンパラの主要穀物市場では 売る物が置かれていない場所が目立つ。ウガンダは自国通貨の下落で輸入穀物の価
格も上昇しており、輸入業者が在庫補充をしていないためだ。
自国通貨の下落と外貨不足を受け、一部の国は食糧輸入を減らし、在庫の補充も見合わせている。サハラ以南の食
糧輸入は大部分がドル建てで行われている。それが貿易赤字を拡大させ、食糧価格の高騰を招いている。
食糧不足の状況を監視する機関「飢餓早期警報システムネットワーク(FEWS)」によると、アフリカ東部と南部の多く
の国では過去30年で最悪の収穫状況も手伝い、食糧価格は過去5年間の平均を約50%上回る水準になっている。こ
れまで飢餓とは無縁だった数百万人にも危機が忍び寄っているという。
国連はアフリカの食糧危機に対応するには7月までに44億ドルが必要だとしている。しかし、4月初めまでに調達でき
たのはわずか9億8400万ドルだ。シリアやイエメン、イラクでの国情悪化が各支援団体の予算を圧迫しており、救援活
動の縮小を余儀なくさせている。
支援団体の関係者らは、ドナルド・トランプ米大統領が提案している国際支援金の100億ドル削減も、資金不足に追
い打ちをかけるリスクがあると話している。