天水は、西安から列車で4時間あまり。広大な中国の観光地の中では、西安からなら気軽に行きやすい場所に思えるけど、案外中途半端。4時間では寝台を取ってもゆっくり寝ることもできず、西安から日帰りで往復8時間半かけて行くほどでもなし、ましてや現地で一泊するほどでもなし。(個人の感想です)
なんかの帰りに立ち寄るのがちょうど良い。
話は麦積山石窟を参観した後の続き。
午前10時過ぎ。今日は西安に帰って夜のレッスンには参加したい。もう一箇所寄ってからでも、レッスンまで時間に余裕がある。
「仙人崖」というとこが良さそう。麦積山のゲートを出る手前に「仙人崖」と書かれたマイクロバスが停まっている。乗ってみよう。
人数が足らずになかなか出発せず、30分くらい待ってやっと「仙人崖」に向かう。
ここで乗り合わせた30代後半くらいの女性。話しているうちに仲良くなって、仙人崖はずっと一緒に回った。
階段が多い
良さげなものが見えてきた
おお
いいねえ
思いのほか広かった。ここらで引き返さないと、夜のレッスンに間に合わない。
「これも何かの縁だから、ご飯おごってあげたいけど、時間ないの?」
「早めに列車乗って帰りたいの。ごめんね。」
彼女は帰りのバス代だけおごってくれた。いい出会いだったのに、連絡先を聞かなかった。あたしの元には2人で撮った写真しか残っていない。後悔。
バスは天水駅に到着。笑顔で別れ、彼女はホテルに、あたしは駅へ。
西安行きの切符を購入し、駅前で腹ごしらえ。
☆長距離バスで帰ればよかった
荷物検査を済ませ改札を通り、待合室で列車を待つ。
ここからが地獄だった。
だらだら書くけど、簡単に言えば、取った列車が、恐ろしいほど遅延したのだ。
何処で停まっているのか、2時間くらい待ってもその列車は来る気配なし。他の西安行きの列車がいくつも到着するけど、切符が違うので当然乗ることもできずに、無情に去っていくだけ。「何人もの男があたしの上を通り過ぎていった」気分になる。
☆時に中国の列車はサンタを待つようなもの
取った列車を諦めて、他の西安行きを取り直す?
でも改札通っちゃって、交換できるかわからない……。切符売り場でまた並びなおすのも……。
「ここまで待ったのだから」は「ここまで賭けたのだから」というギャンブル心理と通ずるものがあって、引き下がるのは悔しい。だけどいつ来るかわからない列車を待つのはつらい。ここは英断を下すべき。
一か八か待合室を出て、切符売り場で並び直した。すごい行列。
横の列に並ぶお兄ちゃんの切符がちらりと見えた。あたしと同じ境遇っぽい。話しかけて聞いてみると、やっぱり同じ列車を取っていて、新しく切符をを取り直すところだった。
40分くらい並んだか、一度改札は通ったものの、その切符で列車の変更ができた。
もともと取っていたのより4時間遅い列車。
☆他の人の席に座ってはいけません
列車に乗り込むと、3人掛け真ん中のあたしの席にまた誰か座っていて、今度は窓側の席が空いている。ならばあたしが窓側行くよ。
ようやく席に落ち着いて、ほっと一息。こんな時間になって、レッスンどころか、部屋のシャワーの時間にも間に合わない。下手すると西安駅からのバスもなくなる。こんなことなら天水でもう一泊して、あの彼女とゆっくりご飯食べればよかった。
どうしようもないことを悔やんでいると、背もたれの向こう側に座る若い兄ちゃんが声をかけてきた。(このやり取りは、後で考えてもよくわからない)
「席を替わってくれないか?彼女と一緒に座りたいんだけど、僕の席におじさんが勝手に座って、動かないんだ」
「いいけど、あたしも本当はこっちの席なの」あたしがそう言うと、あたしの元々の席に座っていたおっちゃんは、すっと離れていった。なんだ、このおっちゃんも「席なし」か。
あたしは席を替わることなく、新たに若めのおっちゃんがやってきて、隣に座った。
どういう流れでこうなったかわからないけど、肝心なことははっきりしていた。ひとり、他人の席に座るやっかいなおっちゃんがいたのだ。
☆客室乗務員に花束を
やがて女性ばかりの客室乗務員が3人やってきた。まず、若い乗務員がおっちゃんに言い寄る。
「そこは、あなたの席じゃないのよ」
するとおっちゃんが大声で反論する。悲しい事に、なまりの強い特におっちゃんの言葉を、あたしは聞き取れない。
なんとなくだけど、このおっちゃんは一つ前の列車に乗っていて、なんらかの理由で途中ホームに降りたところ、その列車はおっちゃんを置いて発車してしまい、乗り遅れた原因をおっちゃんは「発車ベルなどの喚起がなかった」として、仕方がないから次に来たこの列車に乗った、ってところかな。わかんないけど。
おっちゃんはガーガー言い返し、若い乗務員は感情的に怒り、周りの乗客は苦笑い。二人の言い争いが頂点に達したところで、ベテラン風のおばちゃん乗務員が優しい口調で「おじさん、言いたいことはわかったわ。だけどね……」と間に入った。良くできた構図だ。
☆列車内でタバコを吸ってはいけません
乗務員たちが去った後も、背もたれの後ろ側ではおっちゃんが、同じボックスの乗客たちに大声で減らず口を叩いている。
しばらくすると、タバコのにおいが漂ってきた。いやだなあ。
またしばらくすると、先ほどの若い女性乗務員が通りかかった。神経を張らしていたのだろう、そのボックスでタバコの吸殻をすかさず見つけた。
「誰!誰がタバコが吸ったの!」
みんな知らんぷり。あたしも見てはいないけど、犯人は間違いなくあのおっちゃんだ。
乗務員は吸殻を振りかざし、車輌の全乗客に向けて声をあげた。それは強い口調だった。
「乗客の皆さんに警告します!車内は完全禁煙です!喫煙を見つけた場合、容赦なく罰金を請求します!」
妊娠中の猫のような目つき。かわいそうな乗務員のお姉ちゃん。
そのあとは特に何事もなく、向かい側に座るおっちゃん同士の世間話を聞いていたりした。
「俺は広東の方から来て、帰るところだよ。あの辺は悪い黒人が多くてね、少女に手を出すんだ。でも警察は手に負えない。黒人は見分けが付かなくて、犯人が特定できないんだもの。」
デリケートな問題……。
通路側のお姉さんはお菓子をくれた。聞けば彼女も同じ境遇。取っていたあの列車が遅れ、しばらく待っていたけど我慢できなくなり、でも彼女は改札に並んで切符を交換するということをせず、スマホで切符を新たに購入したとのこと。
列車は10時半くらいだったかな。西安に到着。無事バスにも乗れ、11時過ぎに帰宅。
あたしの最後のひとり旅が終わった。
なんかの帰りに立ち寄るのがちょうど良い。
話は麦積山石窟を参観した後の続き。
午前10時過ぎ。今日は西安に帰って夜のレッスンには参加したい。もう一箇所寄ってからでも、レッスンまで時間に余裕がある。
「仙人崖」というとこが良さそう。麦積山のゲートを出る手前に「仙人崖」と書かれたマイクロバスが停まっている。乗ってみよう。
人数が足らずになかなか出発せず、30分くらい待ってやっと「仙人崖」に向かう。
ここで乗り合わせた30代後半くらいの女性。話しているうちに仲良くなって、仙人崖はずっと一緒に回った。
階段が多い
良さげなものが見えてきた
おお
いいねえ
思いのほか広かった。ここらで引き返さないと、夜のレッスンに間に合わない。
「これも何かの縁だから、ご飯おごってあげたいけど、時間ないの?」
「早めに列車乗って帰りたいの。ごめんね。」
彼女は帰りのバス代だけおごってくれた。いい出会いだったのに、連絡先を聞かなかった。あたしの元には2人で撮った写真しか残っていない。後悔。
バスは天水駅に到着。笑顔で別れ、彼女はホテルに、あたしは駅へ。
西安行きの切符を購入し、駅前で腹ごしらえ。
☆長距離バスで帰ればよかった
荷物検査を済ませ改札を通り、待合室で列車を待つ。
ここからが地獄だった。
だらだら書くけど、簡単に言えば、取った列車が、恐ろしいほど遅延したのだ。
何処で停まっているのか、2時間くらい待ってもその列車は来る気配なし。他の西安行きの列車がいくつも到着するけど、切符が違うので当然乗ることもできずに、無情に去っていくだけ。「何人もの男があたしの上を通り過ぎていった」気分になる。
☆時に中国の列車はサンタを待つようなもの
取った列車を諦めて、他の西安行きを取り直す?
でも改札通っちゃって、交換できるかわからない……。切符売り場でまた並びなおすのも……。
「ここまで待ったのだから」は「ここまで賭けたのだから」というギャンブル心理と通ずるものがあって、引き下がるのは悔しい。だけどいつ来るかわからない列車を待つのはつらい。ここは英断を下すべき。
一か八か待合室を出て、切符売り場で並び直した。すごい行列。
横の列に並ぶお兄ちゃんの切符がちらりと見えた。あたしと同じ境遇っぽい。話しかけて聞いてみると、やっぱり同じ列車を取っていて、新しく切符をを取り直すところだった。
40分くらい並んだか、一度改札は通ったものの、その切符で列車の変更ができた。
もともと取っていたのより4時間遅い列車。
☆他の人の席に座ってはいけません
列車に乗り込むと、3人掛け真ん中のあたしの席にまた誰か座っていて、今度は窓側の席が空いている。ならばあたしが窓側行くよ。
ようやく席に落ち着いて、ほっと一息。こんな時間になって、レッスンどころか、部屋のシャワーの時間にも間に合わない。下手すると西安駅からのバスもなくなる。こんなことなら天水でもう一泊して、あの彼女とゆっくりご飯食べればよかった。
どうしようもないことを悔やんでいると、背もたれの向こう側に座る若い兄ちゃんが声をかけてきた。(このやり取りは、後で考えてもよくわからない)
「席を替わってくれないか?彼女と一緒に座りたいんだけど、僕の席におじさんが勝手に座って、動かないんだ」
「いいけど、あたしも本当はこっちの席なの」あたしがそう言うと、あたしの元々の席に座っていたおっちゃんは、すっと離れていった。なんだ、このおっちゃんも「席なし」か。
あたしは席を替わることなく、新たに若めのおっちゃんがやってきて、隣に座った。
どういう流れでこうなったかわからないけど、肝心なことははっきりしていた。ひとり、他人の席に座るやっかいなおっちゃんがいたのだ。
☆客室乗務員に花束を
やがて女性ばかりの客室乗務員が3人やってきた。まず、若い乗務員がおっちゃんに言い寄る。
「そこは、あなたの席じゃないのよ」
するとおっちゃんが大声で反論する。悲しい事に、なまりの強い特におっちゃんの言葉を、あたしは聞き取れない。
なんとなくだけど、このおっちゃんは一つ前の列車に乗っていて、なんらかの理由で途中ホームに降りたところ、その列車はおっちゃんを置いて発車してしまい、乗り遅れた原因をおっちゃんは「発車ベルなどの喚起がなかった」として、仕方がないから次に来たこの列車に乗った、ってところかな。わかんないけど。
おっちゃんはガーガー言い返し、若い乗務員は感情的に怒り、周りの乗客は苦笑い。二人の言い争いが頂点に達したところで、ベテラン風のおばちゃん乗務員が優しい口調で「おじさん、言いたいことはわかったわ。だけどね……」と間に入った。良くできた構図だ。
☆列車内でタバコを吸ってはいけません
乗務員たちが去った後も、背もたれの後ろ側ではおっちゃんが、同じボックスの乗客たちに大声で減らず口を叩いている。
しばらくすると、タバコのにおいが漂ってきた。いやだなあ。
またしばらくすると、先ほどの若い女性乗務員が通りかかった。神経を張らしていたのだろう、そのボックスでタバコの吸殻をすかさず見つけた。
「誰!誰がタバコが吸ったの!」
みんな知らんぷり。あたしも見てはいないけど、犯人は間違いなくあのおっちゃんだ。
乗務員は吸殻を振りかざし、車輌の全乗客に向けて声をあげた。それは強い口調だった。
「乗客の皆さんに警告します!車内は完全禁煙です!喫煙を見つけた場合、容赦なく罰金を請求します!」
妊娠中の猫のような目つき。かわいそうな乗務員のお姉ちゃん。
そのあとは特に何事もなく、向かい側に座るおっちゃん同士の世間話を聞いていたりした。
「俺は広東の方から来て、帰るところだよ。あの辺は悪い黒人が多くてね、少女に手を出すんだ。でも警察は手に負えない。黒人は見分けが付かなくて、犯人が特定できないんだもの。」
デリケートな問題……。
通路側のお姉さんはお菓子をくれた。聞けば彼女も同じ境遇。取っていたあの列車が遅れ、しばらく待っていたけど我慢できなくなり、でも彼女は改札に並んで切符を交換するということをせず、スマホで切符を新たに購入したとのこと。
列車は10時半くらいだったかな。西安に到着。無事バスにも乗れ、11時過ぎに帰宅。
あたしの最後のひとり旅が終わった。