秋の夕暮れには 赤トンボがよく似合う
一匹の赤トンボが 羽を休めている
夕焼けが 透明な羽も 赤く染めている
秋色の深まりとともに 過去が微笑み
遠い遠い 昔に連れて いってくれる
・・・・・
兄と妹は 時間と夕飯を 忘れて
赤トンボを 追いかけ 野原を駆けた
駆けても 駆けても 追いつけない
妹が転び すりむいた白い脛から
真っ赤な血が 滲み出て 流れた
妹は 涙をじっと 抑えて声は出さない
兄は 脛を草で抑えて また二人で駆ける
赤トンボは 空中で止まっているのに
いつまでも 追いつけない
遠くで お母さんの声が聞こえた
「 夕飯は カレーライスよ 」
・・・・・
赤トンボは 前ぶれもなく 飛び立ち
夕暮れの 紅葉の中に 紛れて
夕焼け空の中に 吸い込まれた
赤トンボが 去った 野原には
白いすすきが 夕日を浴びて
淋しそうに 揺れていた
・・・・・
笠原 道夫
一匹の赤トンボが 羽を休めている
夕焼けが 透明な羽も 赤く染めている
秋色の深まりとともに 過去が微笑み
遠い遠い 昔に連れて いってくれる
・・・・・
兄と妹は 時間と夕飯を 忘れて
赤トンボを 追いかけ 野原を駆けた
駆けても 駆けても 追いつけない
妹が転び すりむいた白い脛から
真っ赤な血が 滲み出て 流れた
妹は 涙をじっと 抑えて声は出さない
兄は 脛を草で抑えて また二人で駆ける
赤トンボは 空中で止まっているのに
いつまでも 追いつけない
遠くで お母さんの声が聞こえた
「 夕飯は カレーライスよ 」
・・・・・
赤トンボは 前ぶれもなく 飛び立ち
夕暮れの 紅葉の中に 紛れて
夕焼け空の中に 吸い込まれた
赤トンボが 去った 野原には
白いすすきが 夕日を浴びて
淋しそうに 揺れていた
・・・・・
笠原 道夫