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『スキップ』 北村薫

2021年03月31日 22時54分00秒 | ■読書
「北村薫」の長篇SF作品『スキップ』を読みました。


「北村薫」の作品は2年半前に読んだアンソロジー作品眠れなくなる 夢十夜に収録されている『指』以来ですね… 久しぶりです。

-----story-------------
まどろみから覚めたとき、17歳の〈わたし〉は、25年の時空をかるがる飛んで42歳の〈わたし〉に着地した。

昭和40年代の初め。
わたし「一ノ瀬真理子」は17歳、千葉の海近くの女子高二年。
それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた……目覚めたのは「桜木真理子」42歳。
夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。
わたしは一体どうなってしまったのか。
独りぼっちだ――でも、わたしは進む。
心が体を歩ませる。
顔をあげ、《わたし》を生きていく。
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1995年(平成7年)8月に「新潮社」より書き下ろしで出版され、第114回直木賞候補となった作品… 時に翻弄される人を描いた「時と人」三部作の第1作目にあたる作品です。


「一ノ瀬真理子」は高校2年の17歳… 雨で運動会が途中で中止になってしまった、、、

翌日にある文化祭では毎年男子校の生徒がやってきてフォークダンスを踊る事になっており、「真理子」は去年踊る事が出来なかったので今年は踊りたいと思っていた… だが、雨が止んだとしても地面が駄目になってしまっているだろう。

「また来年がある」と、諦めるしかなかった… 家に帰り、レコードを聴きながらうたた寝をする、、、

そして目を覚ますと、見知らぬ部屋に居た… 服も全く違うモノになっていた。

玄関の方から音が聞こえてきたので恐る恐る向かうと、自分と同じぐらいの少女「美也子」が家に入ってきた… 状況が呑み込めない「真理子」「美也子」と話していく内に、自分がつい先程まで居た時から25年も経っている事、「美也子」が自分の実子である事、そして夫「桜木」が居る事を知る事になる、、、

実家はもう既になくなっており、その上両親も亡くなっていたのだ… 時代の変化に翻弄されつつも、このままだと亡くなった両親に顔向けが出来ないと自分を「ロビンソン・クルーソー」に例え、役回りは出来る限り果たそうと決意する。

そんな最中、家にある電話がかかってくる… 相手は桜木真理子が受け持つクラスの生徒で、暴走族に入ってパンチパーマをかけてしまったと言うのだ、、、

突然の事に戸惑った「真理子」「美也子」の力を借り、生徒の連絡先を調べるべく自分の職場である学校に行く… そこで他の先生から新高3の国語の実力テストの話を聞き、この時代で生きていくためにも「桜木真理子」となって、その実力テストを作ることを決意する。


きっかけにはSF的な仕掛けが取り入れられていますが、内容はSFというよりは、一人の少女が大人の女性として成長する物語… 25年の歳月を飛び越えて、成長せざるを得ない状況に追い込まれながらも前向きに生きようとするヒューマンドラマでしたね、、、

17歳から42歳って、人生の中で本当に重要な25年間がぶっ飛んでしまっているわけで… それを素直に受け止めることなんでできないし、悲観しかできない状況ですが、それを乗り越えようとする「真理子」に感情移入しながら、寄り添いながら読めて、とても愉しめました。

面白かったので… 「時と人」三部作の『ターン』『リセット』も読んでみたいですね。



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