孤高・残雪からの帰還 ≪5≫

2006年5月02日 入山4日目。

入山後、2日間テント内の寝袋に包まり眠り、久しぶりに布団で寝ることが出来たものの・・、
夜中に、雷光と落雷の大音響で目が覚めるが再び眠りに引き込まれる。
夜が明けて、5時過ぎに起床する。
窓から外を眺めると、一面ガスに覆われて、雨も降り続いている。
冬季小屋で朝食を済ませ、外に出てみると視界は僅か2~3mほどか・・。
西穂山荘
飛騨地方は12時過ぎまで雨、、後晴れの予報が出ている。
小屋の中まで風音が、、ヒュ~と聞こえてくる。
部屋を空けるために、ザックの整理をして階下に下ろす。
上高地側に下るか、新穂高温泉側に戻るか・・出発を躊躇いながら、、自問を続ける。
西穂山荘・冬季小屋
雨の中、、8時前に一人が下山を開始した。

私は、冬季小屋で壁に貼られた地図を眺めたり・・、
壁に掛かっている「西穂山荘・山小屋物語」を眺めつつメモを取る・・。
・昭和16年創設。
・昭和42年8月、高校生の落雷遭難事故発生、日本最悪の雷惨事となる(11名死亡,13名重軽傷)。
・平成2年晩秋失火により全焼。
・平成4年再建、現在に至る。
私が、この西穂山荘に始めて宿泊したのは13年前・・、
平成5年、、残雪期の同じ頃でした。その時は畳の香りがしたことを覚えている。

降り止まぬ雨の中、、9時前に2人組が下山を開始した。
宿泊者の一人は連泊の申し込みを済ませる。
窓から外の気配を気にしながらも、何度か外に出て空を仰ぐがガスは依然として晴れない。
飛騨側ロープウェイの運転開始までには時間があり、もちろん上高地側からも登ってくる人影もない。

天気予報では昼ごろまで雨が残るとのことであったが、空がいくぶん明るくなってきた。
しかし、ガスで視界が閉ざされトレース跡がない上高地側へ下山するリスクの大きさを思うと、
昨日登ってきたばかりのトレース跡が確りした飛騨側に下山するのが最も安全だと考え・・、
上高地側へ下る決断をせずに、雨の合間をぬって、、10時過ぎ、西穂山荘を出発する。
ガスの中、、昨日、登って来た路を引き返す。トレース跡を踏み外さないよう一歩ずつ足を運ぶ。
千石尾根
千石尾根の下りでは、僅か1人とすれ違っただけで・・、
ロープウェイ「雪の回廊」近くに来ると人の声が聞こえ始める。
幸いなことに、強い雨に降られることもなく・・無事に、春山とは名ばかりの冬山から戻ってくることができたようだ。
ロープウェイの中から稜線を眺めても、、ガスに包まれ何一つ見えなかった。

山から下りて最初の楽しみは何と云っても、、温泉に限ります。
以前より、何度か ホテル穂高 の前を通り「外来入浴」の文字を目にしていたので・・、
小雨降るロープウェイ新穂高温泉口の目の前に建つホテルに入る。
新穂高温泉
ロビーに入ると、、山から下りてきたばかりの姿では、何となく気が引けたりして・・。
それでも、汗を流し、露天風呂に浸かっていると・・、
あぁ~~奥飛騨に 雨がふる~~
・・なんて鼻歌は出ませんでしたが・・(奥飛騨慕情)。

風呂上りに売店で牛乳を買い求めた後で「次の平湯温泉行きのバスは何時でしょうか・・?」
と尋ねると・・「後10数分後にバスが出ますが・・?」
えぇ!?!? 急いで牛乳を飲まなければ・・・。
急ぎ足で、小雨降る坂道をバスターミナルに向かっていると、
「次の平湯温泉行きは先頭に停車しているバスにお乗りください・・」
「乗車券をお買い求め上、バスに乗車願います・・」と、スピーカーの声が聞こえてきて・・、
バスが発車する~~。
小走りに坂道を下り、券買窓口に向かって「平湯温泉まで、、一枚下さい・・」
「後2~3分ありますから、大丈夫ですよ・・」
あぁ~~「スピーカーから良い声が聞こえてきたので慌てて来たのに??」
「あはぁ~~良い声ですか・・ありがとう!!」
なんて、、冗談が言えるくらいに緊張の糸がほぐれていたようです。。

3~4割くらいの乗車率でバスは定刻の発車する。
平湯温泉では、20分ほどの待ち時間で上高地行きのバスに乗り換える。
岐阜県側はガスに包まれたまま、安房トンネル抜けると・・、
信州側では、青空が見えて、一山超えれば随分と天気が違うことに今更ながら驚く。
河童橋より稜線を望む
14時過ぎに、青空が顔を出す上高地・河童橋に戻ってきて・・自動販売機のコーヒーを飲む。
河童橋から望む穂高には、ガスが懸かるものの直ぐに流れ去り、雪を被った稜線が見え隠れしている。

山屋:「すみません、、シヤッターを押して頂けますか?」
観光客:「はい、、良いですよ。。カシャ~。。」
山屋:「ありがとうございます!!」
今回は、バッテリーが切れる前にカメラに納まることが出来た。。

あぁ~~もう直ぐ15時「お立ち台」の時間だ!!
上高地・ライブカメラに映し出された、、怪しげな山屋 2006年05月02日 15時ジャスト。

一晩留守にしたテントに戻ってくると・・、
フライシートの隙間から昨晩の雨が入ったようで・・スニーカーがびしょ濡れになっていた。
明神岳
夕暮れが近づくと、穂高山系の稜線には雲が流れ・・日没の競演が繰り広げられる。
明神岳
夕食の準備をしながらも稜線から目が離せない。
穂高稜線
なおも、夕食を食べながら・・稜線を撮り続ける。
穂高稜線
この時、穂高の山々に魅了されている山屋の身にとんでもないことが起こっていた。
穂高稜線
テントに戻ってしばらくしてから、携帯電話でブログサイトに接続すると・・。
「北アルプスの雪崩で5人が巻き込まれたって・・浮草じゃ~ないよね??」
えぇ!?!? 私が雪崩に巻き込まれて遭難したって・・??
おぃ・おぃ・・!!
「私しゃ、、上高地・梓川の畔で、ぴんぴんしていますヨ~~。」
・・・と、記事を書こうとしたが、、新規記事が書けなくて 孤高の残雪に舞う(仮称) にコメントを書き残す。
穂高稜線
残照の競演が終わりを告げ・・・、
夜になると星が散りばめられた満天の空を仰いでいました。

明日は、春を探しに出かけてきます。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )