東医宝鑑 内景篇(内科)四
二五、小便(三)
四、弱い老人の用便不通症
老人の小便不通は、大体、短気気虚から来るもので、四物湯に黄芪の煎じた
水を加え、空腹時に磁腎丸を呑み下す。
五、小便不通を下す場合
実熱で癃閉したときは八正散を使い、大便が出ると小便は自然に通ずる。
実熱で小便がつまったら導水丸・三花神祐丸を使う。
六、転脬症
転脬症は臍下が急に痛み、小便が不通になる。無理に小便をがまんするとか、
小便がしたいのに疾走するとか、または飽食して小便をがまんするとか、
または食後に馬に乗るとか、または小便をがまんして入房すると水気が
上逆して気が脬を逼迫すると、屈して伸張できない症などから起こるもので、
脬が落ちると即死する。この症状は婦人に多い。
転脬は二石散に木通・車前子を等分にして煎じて服し、陰陽熨法を使うと良い。
転脬に蒲黄散・滑石散・葱白湯を使う。老人が転脬で危篤なときは六味地黄丸
に沢瀉を倍にして使い、妊婦の転脬には蔘朮飲を使う。
二石散 転脬になってから八~九日になっても小便の出ないときに使う。
処方 滑石・寒水石・葵子各一銭に水一〇杯を半分になるまで
煎じて空腹時に二回に分けて服用する。
蒲黄散 転脬で小便が出ないときに使う。
処方 蒲黄・滑石を各等分に作末し、毎二銭を卵で服用する。
滑石散 転脬で小便が出ないときに使う。
処方 寒水石二両、滑石・乱髪灰・車前子・木通各一両、葵子一合を
水一斗で煎じて五升になったら一升づつ一日三回食べる。
葱白湯 小腹が張って小便が不通になり、気が上衝して心臓を刺して悶絶
して死ぬ思いをする。これは驚憂と暴怒に依って気が膀胱をこえて
入っていって膀胱が閉り、脬系が真っ直ぐできないときにおきる。
処方 陳皮三両、葵子一両、葱白三茎を水五升で二升になるまで煎じて、
三回に分けて食べる。
蔘朮飲 妊婦が転脬に依って小便が不通になったときに使う。
処方 四物湯に人蔘・白朮・半夏・陳皮・甘草各一銭を加え、生薑三片、
大棗二枚を入れて水で煎じて空腹時に服用する。