東医宝鑑 内景篇(内科)四
二五、小便(九)
一五、小便の赤・白濁
小便の赤・白濁は、肥った人は湿痰が多く二陳湯に白朮・青朮・升麻・柴胡を加えて
使い、または星半蛤粉丸を使い、痩せた人は主に陰火が多く四物湯に知母・黄柏を加え
たもの、または珍珠粉丸・樗柏丸を使う。
思慮労心に辰砂妙香散・金連丸を使い、房労傷腎には草薢分清飲・小兎絲子元を使い、
脾精をしずめられず漏濁になったものは蒼朮難名丹・四炒固真丹・蠟苓元を使い、胃気
下陥には補中益気湯を使う。便濁には加減珍珠粉丸を兼ねる。
治法は当然湿をかわかし、火を降ろす作用をする、二陳湯に二朮(蒼・白)升麻・柴胡・
白芍薬を加えて使う。
白濁にには四君子湯に五苓散を合わせて煎じて服し、また秘精元・固本元・半苓丸・
導赤湯みな良い。赤濁には加味清心飲・精神連子飲が良い。赤白濁には芡実元に妙応丸・
辰砂妙香散・水火分清飲・桑螵蛸散を使う。赤白濁に小腹が痛むときは東垣煮当帰丸が良い。
星半蛤粉丸 湿熱・白熱を治す。
処方 蛤粉二両、南星と半夏の薑製・蒼朮・青黛各一両を作末し、薑汁煮神麵
で糊をつくって梧子大に丸め空腹時に薑湯で五〇~七〇丸呑み下す。
樗柏丸 湿熱痰で小便が濁る症を治す。
処方 黄柏(降火)三両、樗根白皮(渋腸)一両、青黛・乾樗各三銭、滑石・蛤粉
・神麹各五銭、を作末し神麹糊で梧子大に丸め、空腹時に白湯で五〇~
七〇丸呑み下す。
金連丸 思慮傷心で小便が赤く濁るときに使う。
処方 石連肉・白茯苓・竜骨・天門冬・麦門冬・柏子仁・当帰・酸棗仁・紫石
英・遠志・乳香・竜歯各一両を作末し、蜜で梧子大にまるめ朱砂で衣を
し、空腹時に温酒、または棗湯で七〇丸呑み下す。
草薢分清飲 小便の白濁を治す。
処方 石菖蒲・鳥薬・益智仁・草薢・白茯苓各一銭、甘草五分、塩ひとにぎり
を入れ水で煎じて服用する。
蒼朮難名丹 脾精は不禁、小便が濁って漏れ止まらず手足に力がなく、腰背が痛みと
きに蒼朮等の剤を使って脾精を収める。
処方 蒼朮製四両、茴香炒・川連子肉各七銭半、川鳥炮・破故紙炒・白茯苓・
竜骨各一両、を末にし、酒麵糊で梧子大に丸め朱砂で衣をして作丸し、
空腹時に米飯で五〇~七〇丸を呑みく下す。
四炒固真丹 元臓が長く痛み遺精白濁した症と、五淋七疝婦人の崩帯等の症を治す。
処方 蒼朮一片を切って四分し、一つを茴香・青塩各一両と同じく炒って、も
う一つ川椒破故紙各一両と同じく炒り、また一つは酒醋で炒るが、朮が
黄色になるまでにして朮だけを取って末にして薬酒醋で糊梧子大に丸め、
空腹時に三〇~五〇丸呑み下す。男子は酒で女子は醋で飲む。
蠟苓元 腎の邪湿で精気が丈夫でなく、小便が白濁し淋瀝止まらない症と、婦人
(一名威喜元) の白淫・白帯を治す。
処方 雪白茯苓四両を切って、猪苓二銭半と煎じて二十余回煮立てたら、猪苓
は捨て茯苓だけ取り出して作末し、黄蠟四両を熔化して弾子大に丸め、
空腹時にかんで、棗湯で徐々に送り込む。
加減珍珠粉丸 赤・白濁と白淫を治す。
処方 黄柏半生半炒・蛤粉各三両、滑石二両、樗根白皮一両、青黛・乾薑炒褐
色各五銭、を作末し炒神麵糊で梧子大に丸め、空腹時温湯で七〇丸また
は一〇〇丸呑み下す。
黄柏は陰火を降ろし、湿熱を除し、蛤粉は穂腎、滑石は利窮し、樗根白
皮は湿熱をかわし、青黛は鬱を解かして火を降ろし、乾薑は肺気を収め
下降させ、陰血を治す塩を少し黒くなるまで炒って使う。