東医宝鑑 内景篇(内科)四
二五、小便(四)
七、関格症
邪が六腑にあると陽脈が和せず、陽脈の不和は気が留し、気が留すると陽脈がおこる。
邪が五臓にあると陰脈が和せず、陰脈の不和は血が留り、血が留ると陰脈がおこる症
である。陰気が大盛すると陽気は立ち上がれないので格する症。陽気が大盛すると
また陰気が立ち上げれないのを関といい、陰陽が共におき、その作用をなさぬと関格
となるが、この関格という症は寿命を完うしないで死ぬ症状である。
関は小便不通、格は吐き逆する。関は熱がなく、格は冷える症状。格は息を吐き
出せない症、格は息を吸い込めない症である。
関格には芒硝湯・大承気湯を使う。
中虚者は補中益気湯に檳榔を加えて昇降させ、痰格には枳縮二陳湯を使う。
芒硝湯 関格不通を治す。
処方 芒硝二両半、滑石三両、冬葵子炒三合に滑石・葵子の粗末五銭半が半分ぐら
い煮つまると芒硝一銭を入れて、もう一度煎じて空腹時に服用する。
枳縮二陳 関格の上下不通を治し、これは痰が中焦をふせぐ症だが、こんくすりを飲んで
痰を出させる。
処方 枳実一銭、川芎八分、縮砂・白茯苓・貝母・陳皮・蘇子・爪萋仁・厚朴・便香附子
各七分、木香・沈香各五分、甘草三分を木香・沈香を除いて剉作して一貼にし、
薑三片を入れて水で煎じて竹瀝と沈香・木香各五分を濃くひいて入れて飲む。
八、関格で吐瀉する場合
関格には必ず吐いて、つまったものを出すのが、緊要ことである。
痰があると二陳湯で吐かせ、中気が弱いときには補中益湯に末香・檳榔を加えて昇降させる。
関格は急症で、生死は時間の問題であるから、下焦を治療したら治ることもあるので大承気湯を使う。
九、洗熨法
陰陽熨法とも、冷熱熨法ともいう。腑転と二便不通を治すが、先に湿布して小腹を何回も摩擦し、
次に熱い湿布で摩擦し、また冷たい湿布で摩擦すると便が通ずる。
腑転で小便の不通になったときは、生薑・葱白・紫蘇葉各ひとにぎり煎じて室内で全身を温め、
洗って小腹・外腎・肛門などのところは何回も温め洗ったあと、赤茯苓・赤芍薬・白芍薬各五銭、
蜀葵子二銭半を煮た水に蘇合香元三丸と青塩末半銭を空腹時温服する。
一〇、掩臍法
転腑症は難病で、手当が遅れると生命を奪われる。甘遂末を水でこして臍の下にぬり、
甘草節煎じたものを飲んで臍の下まで降ろすようにすると、脬はおのずところがって小便が出る。
小便の癃閉不通のときには胎臍膏、通関膏、通関散を使う。
通関散 小便不通を治す。
処方 白礬生・白塩各二銭半、をまぜて臍の上に圏をつくり、上に薬を入れたあと、
冷水を薬の上に落とすと、すぐ治る。