■眠気をふきとばす爆走?
『がんばれ!!タブチくん!!』からのいしいひさいちファン。浦沢直樹の『MONSTER』や『20世紀少年』も大好きだし、西岸良平の作品もいつも気になるけど、そういう流れとはなぜか全く別のところに、いしいひさいちはいるのだ。
『がんばれ!!タブチくん』は今でもたまに読んでは、ニヤッと笑える要素をたくさん残してくれている。ひょっとして女性より男性ファンが多いかも。野球好きには、たぶんツボにはまる笑いとアイロニーと、そこにちょっと悲哀も加味されて、あの太ったタブチ君にいろいろな人を重ね合わせたりする。タブチくんはもちろんタイガース~ライオンズでスター選手だった、あの田淵幸一選手がモデルなんだけど、あんなにコケにされながら(だって、あの太った体が徹底的に揶揄され、ミットじゃなくあの体でボールをキャッチしてる、なんて描かれてる)、一度も作者に抗議しなかった。あれって、田淵選手の大陸的な大らかさゆえなんだろうけど、もちろんそれだけではなく、あの手加減しないタブチ叩きの中に、タブチくんへの、じゃなく田淵選手へのいしいひさいちの紛れもない愛があったからなんだ。それを田淵選手もちゃんと受けとめていたのだと思う。
タブチくん以外にも、皮肉屋で冷淡でいつもしかめっ面の広岡監督、アメリカでキャンプしているタブチくんのところにアルバイトだと物売りにくる安田投手(彼はやたらとくだらない魔球を思いついてはキャッチャーの大屋を困らせたりする)などなど、実在の選手がそれぞれ個性的に描かれ、私の中では今でも愛すべきキャラクターだ。
そして、『朝日新聞』の朝刊で連載中の「ののちゃん」(そういえば、広岡監督は医者のヒロオカ先生として、タブチ君は体育の教師として登場している)のおかあさん。この人の暴走っぷりというか、ん?と思わせる言動に、私は毎朝唖然とさせられている。ここ数日のおかあさんの暴走ぶりは結構笑える、というか、「アホか!」とあきれながらはまってしまう。ポチの行動を小一時間見張っているおかあさん(それを近所のあばさんが観察しているのもおかしい)、ののちゃんの教科書を見ながらおばあちゃんと居眠りしちゃって、玄関のベルで、まるで授業中の居眠りを見つかって慌てる様子もおかしい。ああ、こんなふうに書いても、このおかしさはきっと伝わらないだろう…。
「となりの山田くん」からマンネリを感じたこともあったけど、今では山田くん・ののちゃん兄妹より、母親である松子さんのキャラが光っている感じがするんだけれど、どうだろうか。こんなおばさんが母親だったらちょっと迷惑だし、かったるい気もするけど、毎朝、紙面で会うぶんにはちょうどいい刺激。明日もどんな脱線をしてくれるんだろう。
ちなみに、実は私は、松子さんよりタブチくんより、あの「ポチ」が好きだ。今のペットブームの対極にいる孤高の駄犬。でもあのシニカルな意地の悪そうな目つきと、完璧なマイペース、「人間なんか決して信じないぞ」というポリシー(イヌにポリシーはありますか?)が、イヌのインテリジェンスを感じさせちゃう。たまに姿が見えなくなって数日して帰ってきたりする放浪犬なんだけれど、その真相が暴かれた回は圧巻だった。いまだにあれ以上の心地よい驚きは、「ののちゃん」史上、経験していない。あの駄犬は山田家では「ポチ」だけれど、実は別宅があって、そこでは「ジョン」という、なんとも不似合いな洒落た名前で呼ばれている、というのだ。いやいや、まいった。マンガをあなどってはいけない、と自分に言い聞かせたのです、あのとき。
『がんばれ!!タブチくん!!』からのいしいひさいちファン。浦沢直樹の『MONSTER』や『20世紀少年』も大好きだし、西岸良平の作品もいつも気になるけど、そういう流れとはなぜか全く別のところに、いしいひさいちはいるのだ。
『がんばれ!!タブチくん』は今でもたまに読んでは、ニヤッと笑える要素をたくさん残してくれている。ひょっとして女性より男性ファンが多いかも。野球好きには、たぶんツボにはまる笑いとアイロニーと、そこにちょっと悲哀も加味されて、あの太ったタブチ君にいろいろな人を重ね合わせたりする。タブチくんはもちろんタイガース~ライオンズでスター選手だった、あの田淵幸一選手がモデルなんだけど、あんなにコケにされながら(だって、あの太った体が徹底的に揶揄され、ミットじゃなくあの体でボールをキャッチしてる、なんて描かれてる)、一度も作者に抗議しなかった。あれって、田淵選手の大陸的な大らかさゆえなんだろうけど、もちろんそれだけではなく、あの手加減しないタブチ叩きの中に、タブチくんへの、じゃなく田淵選手へのいしいひさいちの紛れもない愛があったからなんだ。それを田淵選手もちゃんと受けとめていたのだと思う。
タブチくん以外にも、皮肉屋で冷淡でいつもしかめっ面の広岡監督、アメリカでキャンプしているタブチくんのところにアルバイトだと物売りにくる安田投手(彼はやたらとくだらない魔球を思いついてはキャッチャーの大屋を困らせたりする)などなど、実在の選手がそれぞれ個性的に描かれ、私の中では今でも愛すべきキャラクターだ。
そして、『朝日新聞』の朝刊で連載中の「ののちゃん」(そういえば、広岡監督は医者のヒロオカ先生として、タブチ君は体育の教師として登場している)のおかあさん。この人の暴走っぷりというか、ん?と思わせる言動に、私は毎朝唖然とさせられている。ここ数日のおかあさんの暴走ぶりは結構笑える、というか、「アホか!」とあきれながらはまってしまう。ポチの行動を小一時間見張っているおかあさん(それを近所のあばさんが観察しているのもおかしい)、ののちゃんの教科書を見ながらおばあちゃんと居眠りしちゃって、玄関のベルで、まるで授業中の居眠りを見つかって慌てる様子もおかしい。ああ、こんなふうに書いても、このおかしさはきっと伝わらないだろう…。
「となりの山田くん」からマンネリを感じたこともあったけど、今では山田くん・ののちゃん兄妹より、母親である松子さんのキャラが光っている感じがするんだけれど、どうだろうか。こんなおばさんが母親だったらちょっと迷惑だし、かったるい気もするけど、毎朝、紙面で会うぶんにはちょうどいい刺激。明日もどんな脱線をしてくれるんだろう。
ちなみに、実は私は、松子さんよりタブチくんより、あの「ポチ」が好きだ。今のペットブームの対極にいる孤高の駄犬。でもあのシニカルな意地の悪そうな目つきと、完璧なマイペース、「人間なんか決して信じないぞ」というポリシー(イヌにポリシーはありますか?)が、イヌのインテリジェンスを感じさせちゃう。たまに姿が見えなくなって数日して帰ってきたりする放浪犬なんだけれど、その真相が暴かれた回は圧巻だった。いまだにあれ以上の心地よい驚きは、「ののちゃん」史上、経験していない。あの駄犬は山田家では「ポチ」だけれど、実は別宅があって、そこでは「ジョン」という、なんとも不似合いな洒落た名前で呼ばれている、というのだ。いやいや、まいった。マンガをあなどってはいけない、と自分に言い聞かせたのです、あのとき。