隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

たくさんのサプライズ~スピッツ『夜を駆ける』~

2006年06月11日 23時35分39秒 | スピッツ

■それぞれに違う「スピッツ」を楽しむ

 1989年に新宿ロフトで聴いて以来、好きな曲は数限りなくある。どれはいちばん?と聞かれても困るし、気分によって、聴きたい曲が必ずあるっていうのもすごいでしょ。ワンフレーズだけでその曲の重さが胸の中に住みついて消えないものもあるし、それがメロディーだったし、たった一つの単語だったり。
 別に歌詞の深読みには興味はないんだけど、でもスピッツの曲は単純でないから、いろいろ考えられたり、感じたりできるのが楽しい。
 それで、今夜はアルバム『三日月ロック』から「夜を駆ける」。これ、好きだ~!っていう人、多いですよね。

●珍しく「浮かぶ情景」
 草野マサムネ(作詞・作曲者としては「草野正宗」を名乗っているけれど、ここでは「マサムネ」で統一します)の作る楽曲としては珍しく、頭の中に情景が浮かんできませんか? この人の書く詞って、別に難解な語彙を使っているわけではないし、すごく平易な単語の積み重ねなんだけど、ストレートじゃないから、素直に「な~るほど、そういうことね」と単純に納得できることが案外少ない。
 甘いラブソング風の「チェリー」だって、サビで「悪魔のフリして」歌を切り裂いたりしちゃう? え、なんで? これって「怖い歌?」とか。そんな歌ばかりのような気もする。自称「天邪鬼」だし、甘い方向に一直線も、奈落の底にまっさかさまも、どっちもキライなんでしょうね。デビューの頃、「明るく生きるより、ふわ~っと元気に死んでいく」がいい、なんて言ってたし。
 でも、この「夜を駆ける」は、私の勘違いかもしれないけど、勝手に情景が浮かんできて、もうそれができあがっている。破れた金網を乗り越えてコンクリートの上を走っていく若い二人の様子や、誰もいない夜の広場で遊ぶようすや、密やかなラブシーンが、説明口調もシーンの解説っぽい言葉もないのに、ちゃんと心に流れていくのが心地いいなあ。

●せつなさを引っ張っていくバンドサウンド
 シンプルに夜の闇に響くような、始まりのキーボードの美しさ、「夜を駆ける」というタイトルにふさわしく、ドラムスはマーチ風なビートを刻む。そのマーチが微妙に歪んでいて、通り一遍のマーチでないところに、この曲のもつ切なさや、「誰もいない市街地で遊ぶ」二人のおかれた状況を表しているようにも思えて、いつも「深いな~」なんて感じてしまう。
 スピッツは「草野マサムネの声と歌詞とメロディー」とか言われるけど、このバンドサウンドでなければ、草野の書く曲はここまで心に響いてはこないんだろうな、といつも思う。「夜を駆ける」は、私的には「崎ちゃん、グッジョブ!」(笑)なんです。

●ちりばめられた「切ない言葉」
 どの曲でもそうだけど、草野の書く曲には必ず、小さなサプライズが隠されていて、新曲を聴くときには、それを見つけるのが(というか、出会うのが)楽しみだったりする。そういう人は多いでしょ? 例をあげたら、もうキリがないんだけど、例えば「夜を駆ける」の次の曲「水色の街」では、「頸の匂い」にやられた私です。「頸かよ!」ってのけぞりましたもん。
 そのサプライズがどこに潜んでいるか、というのは人それぞれ違うと思うし、また違うところがスピッツの楽曲の深さだと思うんだけど。だから、この「夜を駆ける」が好きという人だって、きっとみんなそれぞれのサプライズがあるんだろうね。
 私の場合、この曲はサプライズ多すぎ。えっ、えっ、えーっ!!って、最初聴いたときは泣きました。歌詞はあんまり書いてはまずいし、さら~っとかくと、こんな感じになります。
 「強がり」に「研がない」という形容をしちゃうセンスのよさ。そうか、「強がりを研ぐ」って言われると、すごくイメージがわく。
 そしてこの二人は「糸で結ばれている」んだけど、その糸は「よくある赤いやつじゃない」んだよなあ。この言い回しも好き。ビックリしたです、「よくある赤いやつじゃない」というところで。運命の赤い糸、っていうと、なんかラブソングやメロドラマの定番な感じだけど、それをあえて否定しつつ、でも「細い糸」ではつながっている。すごく好きだし今は一緒にいたいけれど、でもそれでも「永遠ってホントにあるの?」と心のどこかで思ったり、あるいは今は何でも乗り越えていけるつもりだけど、でもひょっとしたらどうにもならないことってあるんじゃない? そんなふうにマイナスの面をちらつかせるからよけいに、二人の今がせつなく伝わってくる。せつなさ「倍増」です。
 「目と目があうたびに笑う」うれしさ、壁に書いた落書きの時計が「止まった」ことで訪れる「永遠」、それらは負の要素があるゆえのステキさだろう(私は、落書きの時計が最初は「動いていたんだ」というところで、すでに感動しましたけど)。
 そして、圧巻、「甘くて苦いベロの先」です。これはもう解説無用。「さりげなく「もう一度」ときれいな声で歌う草野マサムネに「あんたはエロくてズルイミュージシャン」だよね」と言いたいですもん(笑)。
 「でたらめに描いた バラ色の想像図」もね、二人の未来の陰りを予感させて寂しい。でも、特に不幸な恋人ってわけでもないんでしょうね。恋愛ってそういうものだし。今が幸せであればあるほど、先になにがあるかって心に不安が芽生えたりする。そういう普通な二人を描いているような気もします。
 最後に「今は撃たないで」。ああ、これだけで、この歌は100万ドルの価値です、私には。せつなすぎますよね。

●押し付けない上質のメッセージ?
 この曲に限らないけれど、草野の書く詞には、これでもかこれでもか、と聴く者にたたみかけてくる粘っこさがない。だからこっちは勝手に思い描いて、それぞれのスピッツの世界を想像できる(ネットの書き込みで、「『うめぼし 食べた~い』の『うめぼし』は乳首」と書いてあって、驚きましたから。へー、そういう解釈もありなの?って)。
 それから、説明口調の歌詞がないんだよな。でも、ちゃんと伝わってくるイメージの中に色も匂いも喜びも悲しみもあって、そういうところに「並みのアーティストじゃないなあ」と感じてしまうのだ。何度も聴いていくと、新しい発見があったり、違う感じ方ができたり…、そういうところもおもしろい。
 私にとって「夜を駆ける」は、そんな魅力がつまった作品です。

 は~、だめだなあ。言いたいことの半分も表せませんでした。好きなものを誰かに伝えるのは難しい。文章力の欠如だな。
 でも、もし「夜を駆ける」を聴いたことがない方がいらしたら、だまされたと思って(なんだよ)、一度アルバム『三日月ロック』をレンタルしてみてください。なにかアンテナにひっかかるかもしれませんから。


 


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4 コメント

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2006-06-12 08:49:49
よく伝わってきましたよ。

面白く読ませていただきました。



かけらさんの記事を念頭において

「スピッツ」聞くと、新たな発見もできそうです。



自分は、ノスタルジックなものを感じてたんですけど。

甘い疼きみたいなものを(笑)
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恥ずかしいけど。 (かけら)
2006-06-12 20:44:58
読んでくださってありがとうございます。

もう、あくまで勝手なお話で(笑)。

でも、そういうのが許されるバンドのような気がしています、ホントに勝手なファンだ…。

笑っちゃってください。



さあ、今夜はサッカーですね。

がんばれ!

返信する
またまた来ちゃいましたっ (あまいて)
2006-06-12 22:16:10
「夜を駆ける」好きです。

あの、イントロの悲しげな感じが、絶望感みたいなんを思わせるんですが、歌詞は二人で遊んでるんですよね~☆

よくわかんない歌だったんですが(スピ曲は大体そんな感じですが)かけらさんの文章で、あーなるほどっ!勝手に納得しちゃいましたぁ



明日は一日リピートです
返信する
今日は (かけら)
2006-06-13 20:16:12
リピートでしたか(笑)?

来てくださって、ありがとうございます。

勝手なことばかり書きましたが、ステキな曲なんで,許してください。



ホ~ント、訳のわからん歌詞、多いですよね。

そこが好き?
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