ぼくたちの家族
原作 早見和真
脚本・監督 石井裕也
出演 妻夫木聡/池松壮亮/原田美枝子/長塚京三/
黒川芽衣/ユースケ・サンタマリア/鶴見辰吾/
板谷由夏/市川実日子
http://bokutachi-kazoku.com/
正月休みに観たDVD。
家族ってね、心地いいけれど、ときどき重い。
いつも心配していると疲れるし、子どもが大人同士になればなったで、面倒なことや微妙な問題も出てきたりする。
私の場合、自分の生まれたときの家族は、それぞれのパーツの関係はどうにか成立したけれど、「家族」というカタマリとしてはどうにもならなかった。
そのぶん、自分たちが作った家族にはそれなりの思い入れがあるともいえるけれど。
それでも、なかなか「家族、万歳!」ってわけにはいかなかったり(笑)。
この家族がおかれた現実は、当人たちにとっては冷静に考えれば悲惨だし大変だし・・・。似たような経験がなきにしもあらずだけれど、そういうときはある意味、夢中で息もつかずに通り抜けてしまっていたりする。時間の流れが異常だったと、あとで気づいたり。
だから、スクリーンの中に動く彼らを見ていると、なんだかうらやましいくらいに輝いて迫ってくる。
脱サラして起業した父親は借金まみれで、実は妻の現状を一人で受け止めきれない。
そのなかで、かつてひきこもりで母親を悩ませ、今は妻に頭が上がらない長男は、とりあえず母親の命をあきらめずにどうにかやってみようと行動を起こす。
クールな大学生の次男はそんな兄に最初は引っ張られるままに、彼なりの行動力を発揮していく。
困難な状況にあっても、自分ではどうしようもないこともあるものだ。見ているしかない・・・とか。
それに比べたら、とりあえず「できる悪あがき」があることの幸せを、垣間見させてもらったような気がする。
家族礼賛の映画ではないように思う。
家族は日常が成り立っているときはバラバラに動いている、そんなもんだ。「家族っていいもんだ」なんて思って生きている人がいたら、ちょっと付き合えないかもしれない。
何かあったとき、ほんの短い時でも並走できる存在であれば、家族は十分OKなんだな、と。
そういう幸せな(というと語弊があるかもしれないけれど)家族のある時を切り取りして、ごくごくふつうに見せてもらえた、私にも幸せな時間だった。
役者がみんないい。
原田美枝子の母親の温かさは、病に倒れても十分に生き残っている。
長塚京三の父親は、頼れそうで、実は男の弱い部分を体現して現実的だ。
息子たち二人は、正反対だからこそ、こういうときに力を発揮する。ふつうだけどかわいい息子たちを二人の役者が魅力的に見せてくれる。
「ぼくの・・・」ではなく「ぼくたちの家族」
三人の、いえ、母親も交えたそれぞれにとっての「家族」。
そういうことだ。それぞれに異なる形で、きっと思い描く家族があるのだろう。
そうそう、彼らに感情移入していた私が思いがけずに涙してしまったシーン。
鶴見辰吾扮する医者に弟が巡り会うところ。
ここはこの作品のテーマではないけれど、こみあげてしまった。
こういう人に出会えるから、人は暗闇でもそこそこ生きていけるのかもしれない。
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