2017年 イギリス・アメリカ映画
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
監督 スティーヴン・フリアーズ
脚本 リー・ホール
原作 シャラバニ・バス
(『Victoria & Abdul』)
出演 ジュディ・デンチ(ヴィクトリア女王)
アリ・ファザル(アブドゥル・カリム)
映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』予告編
1887年、在位60年を超える英国の女王ヴィクトリアは、孤独な老女だ。
夫や寵臣を亡くし、何十年も外に心を閉ざしているように見える。長きにわたる在位期間には公の場で権力をふるってきたであろうが、画面に映る女王は、ただのわがままな老女。それでも絶大な影響力はこちらを圧倒する。
子どもたちとも従僕や政治家たちとも心から打ち解けぬままに、諦めの視線はどこか悲しい。
起床のときもお付きの女性たちに体を委ね、無表情で移動し、晩さん会では食欲は旺盛だが途中で寝入ったりする。
そんななかで、女王の在位の記念式典で記念硬貨を贈呈すべく選ばれてインドからやってきたのが、「ハンサムな」アブドゥル・カリムとモハメド。
長くインドを支配する女王をはじめ英国に反発するモハメドに対して、アブドゥルは純粋な思いで英国での暮らしを楽しんでいるように見える。そこに女王は惹かれたのだろうか。自分にも、自分を取り巻く者たちにも見当たらない、自由で純朴な思い。
彼は女王の知らないことを語り、イスラムの教えやウンドゥー語を教え、女王は話し相手としても、また「わがムンシ」としても、アブドゥルの存在を認め、言葉のやりとりを楽しむ。「ムンシ」は教師という意味だ。
さまざまな困難や紆余曲折を繰り返し、周囲を困惑させ、騒動を引き起こし、女王の気持ちも左右に揺れながら、それでも二人の時間は女王が亡くなるまで続く。
彼女の孤独に寄り添い、豊かな言葉とよけいな修飾のない表現で彼女を支える。
純粋に史実ではないかもしれないけれど、最近、彼の残された日記と女王のウンドゥー語の書き込みが発見されて、こんな交流が女王の晩年にあったことが明らかになったという。映画の導入で、「The true story ... mostly」のような一文が。
孤独な老女の人生の終わりに、心を揺らし湧き立たせる、若き「友人」との時間があったのなら、それはなんとすばらしいことか。
ラストシーン。インドの広場にあるヴィクトリア女王の像を訪れて語りかけるアブドゥルの姿と、死の床で不安を抱える女王にアブドゥルがささやいた詩(一滴のしずくよ 安じて身を任せれば 海に行きつく/我を捨てれば 大いなる海で 安らぎを得よう)が心に残る。
死の床に就いた女王との最後の時間に交わされた言葉。「Good bye, my queen」「Take care, my sweet son」・・・。
宮廷の人々のインド人の青年へ嫌悪、下層階級であることを理由に排除しようとする騒動。
それをすべて受け止めて、「差別主義者!」と一蹴する老いた女王の凛々しさは、今の時代にこそ輝く。
(威厳に満ちた女王の姿、ヒステリックな老女の佇まい、アブドゥルの語る未知の世界に目を輝かせる生徒としての表情。デンチはどれもチャーミングだ)
(アブドゥルとともに英国を訪れ、そこでの暮らしを受け入れられなかったモハメドは、アブドゥルを貶めようとする女王の側近から、アブドゥルのことを詳しく語れば年金付きで帰国させてもいい、と言われる。
それに対して、痛烈に英国を非難し、仲間を売らずに信念を貫いて、結局、病に倒れた彼は寂しく異国で亡くなる。
女王との貴重な日々を経験したアブドゥルに対して、モハメドの人生はあまりにも悲しいけれど、その一貫した姿勢は気高い。)
昨夜の横浜アリーナでのTHE YELLOW MONKEYのライブのセットリスト。
マニアックな懐かしい曲が並んでいて、胸が熱くなる。
https://lyfe8.com/tym20yari117/
あの曲で始まって、あの曲で終わるなんて・・・。そして、あの曲をやったなんて。
賢く、冷静に、でも熱く心を燃やして、私も先の道を見始めたい。
そして喧噪の果てに、かの国はどのようにリスタートするんだろう。
言葉は悪いけれど、興味津々だ・・・。
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