■誰に何を言い残したい?
最終回。
たとえ再びブラックホールに巻き込まれずに回避できても、あの14人は10年前に戻る運命にあるのだから、もう会えなくなってしまうことだけは確か。
そして、奇跡は起こらず、一人一人、大切な人のそばから消えていった。
アッチはヤッチのすぐ後ろにいて、サーッと吹いた風とともに姿を消した。
母親の車の助手席から、「大好きだよ」の手紙を残して消えた娘。娘と孫との食事のテーブルから消えた老夫婦。兄とチェスをしていて、パソコンの画面に「兄貴、ありがとう。また会う日まで」の文字を残して消えた弟。ベンチにブーケを残して消えたカップル。
たった10日の奇跡だったけど、ヤッチは「会えてよかったよ」そうテツに言った。テツは「10年後の今のお前が好きになれてよかった」って。
人は誰も先のことがわからないから、大事なことを忘れたり、言わなかったりする。でも彼らは時が限られたものであることを知っていたから、ちゃんと気持ちを伝えられたし(キクボンは「今度会うときにはもっといい男になっているから」とアッチに言えたしね)、最後の手紙を置いてくることもできた。
でも実際は何もわからない。人生とはそういうもの。でも、知らないからおもしろいんだし、怖がらずに生きていけるのだろう。
でも時々考えてみるのは悪いことじゃない。明日私がこの世から消えるんだとしたら、誰に何を伝えよう、忘れずに何を話したらいいんだろう…と。私はどうするかな?
ヤッチは何かの気配を感じて、ふっと振り返った。元気に暮らしてはいるけど、そのときのヤッチの後ろ姿にはほんの少しだけ寂しさは漂っていた。
テツやアッチをはじめとする14人は、本当にどこか別のところで違う日常を送っているんだろうか。
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