kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

レ・ミゼラブル

2020年07月05日 | ★★★☆☆
映画館:サロンシネマ

「レ・ミゼラブル」といっても、ヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイが歌うあれではなく、ガチガリのフランス警察映画。

パリ郊外の犯罪多発地帯モンフェルメイユ地区に配属された警官ステファン。治安維持の犯罪防止班BACに配属された彼が先輩警官2人と街中のパトロールに出る2日間が描かれる。

街中では「市長」とあだ名される黒人ボス、ムスリムに影響力をもつ実力者、警察と裏でつながっている一味たちがそれぞれの権益を守りながら、ヒリヒリした関係を保っていた。そこでロマの巡回サーカス団にトラブルが発生し、街中が一触即発状態になり、さらに街の悪ガキの悪ふざけが事態を悪化させていく。

パブでスパイク・リーの名前が引き合いに出されるように「ドゥ・ザ・ライトシング」をはじめとし、「トレーニングディ」「ニュー・ジャック・シティ」「クロッカーズ」「スズメバチ」など映画の雰囲気は数々の街の揉め事映画に近く、さらにムスリムとの関係がキリキリしているのが今風。

過去のそういった映画以上に感じるのは、今、そこにある緊張感。
街の対立は基本怒鳴り合いだけで、ほとんど銃は出ないし、暴力すらほぼ起きない。麻薬ともほぼ無縁。それだけに、日々の鬱憤が暴発したときの反動の大きさを予感させて、嫌な空気感をどんどん醸し出していく。

さらに見た目派手な揉め事より、関わる人物たちの生き様と街の様子を細かく描くことでいつ事態が暴発するか分からない不穏感を高めていく。
低所得者層向けアパート群での生活風景が生々しい。

主人公のステファンは、最初、街の雰囲気と暴走スレスレのBACの行動に戸惑うあたり頼りないのだが、徐々に自分なりの正義を打ち出していく。

トラブルも収束の兆しを見せそうになるが、それだけで事件が終わると今度は映画館の観客側が暴動を起こすので、映画的にはそれなりに大事件が待ち構えている。

劇中、根っからの悪人は登場せず、それぞれが良かれと思ったり、何気なく起こした行動が悲劇を誘発するあたり、まさにタイトルどおりだし、そこに現実社会が透けて見える。

今、世界中でさまざまな「格差」が問題となっているが、それを産み出す背景も強く感じさせる映画。







題名:レ・ミゼラブル
原題:LES MISERABLES
監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ


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